朱い道化と深窓の令嬢

皐月

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「暇ねぇ…」

私は独りごつ。手元にある本はここに来てからずっとある本で、もう何十回も読み直している。おかげで暗唱できるようになってしまった。新しい本も父も母も私を忌み嫌っているからあまり多くは手に入らない。要望を出したところで、無視されるときもある。
私を忌み嫌っているのは子爵夫妻に限らない。貴族連中はともかく、屋敷の使用人さえも蔑んだ目で私を見る。屋敷の中にも、社交界にも、私の味方はいない。差別しないのは平民ぐらいだろう。たまに抜け出して遊びに行っているのだが、気のいいひとばかりだ。

「昨日もいったもの…。さすがに二日連続で抜け出していったらバレちゃうかもだし…」

私の勝手で彼らが制裁を受けるのは望まない。だから抜け出すのにも細心の注意を払っている。例えばこの、目立ちすぎる髪と瞳の色を変えたりとか。

私がここに来たのは12年前、5歳の時。貴族は生まれた時から紋が体表に発現している者もいれば、生まれた当時は《紋なし》に見えても5歳までには体表に発現している者もいる。私も後者だと思われていたため、この化け物と呼ばれる容姿でも父も母も使用人も普通だった。でも、私が5歳の誕生日を迎えても発現しないせず《紋なし》だと知ると手の平を返すように忌み嫌うようになった。実の娘であるにもかかわらず、だ。血縁関係は当時信じられなかった子爵が何回も神殿に確認している。整合率は99.8%なので0.2%に当たっていなければ正しいだろう。
ちなみに私がここで生かされているのは、当時はまだ子爵夫人の腹の中にいたあったこともない妹ないしは弟のスペアおよび血統は純貴族であるため、紋の発現がないとは言い切れないからだろう。まあ純貴族で《紋なし》がいて、更に5歳以降に発現した、なんて先例はないのだが。

「病死でもなんでもいいから、さっさと殺してなかったことにすればいいのに。ねぇ」

ああ、退屈だわ。
ここから出れたりしないかしら。
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