家族で異世界冒険譚(ターン)!第1部 〜永井家異世界右往左往〜再構成改定版

武者小路参丸

文字の大きさ
8 / 11

第8話 永井家!異世界デビュー?

しおりを挟む
「ほら、クミコマミがあそこにいるぞ!ジョロの今の姿見たら腰抜かすんじゃ・・・って、飛び降りたら危ない!ほら、走らない!ジョロ!」

「ん!マァ~ミィ~ッ!」

獣人化の影響もあってか、永井コジ丸・・・愛称ジョロはいきなりの二足歩行にも適応し、その上すばしっこくなっている。

ミサオが追い付く前に 既にクミコの懐に飛び込んでいた。

「あらあら。ジョロ、こっちに来たらおっきくなったのね? 
やっぱり自然って大事よねぇ・・・。異世界の空気ってやっぱり違うのかしら?」

(マミ・・・順応し過ぎだよ。まずジョロの姿見て驚くトコからだよね?受け入れスムーズ過ぎて逆に怖いよ俺・・・。)

思わず地面に膝をついたミサオだったが、やはりジョロの素っ裸はマズい。

「マミ!ジョロ!集合!えっと、このままだとジョロが色々大変だとパピは思います!マミ、今だけカーディガン、ジョロにかけて上げてくれる?なので!ここで一発、家族みんなの服を買いにいこうと思います!反対意見はあっても却下!ほら、パピにくっついて!行くよ?ファミリー、ポチッとな!」

スマホのアプリでマイアの町の中に素早く転移する。

「ちょっと2人とも待っててな!ジョロの着れそうな服だけ急いで買ってくる。んで、改めて町の外から入ってこような?手間だけど、人の出入りはチェックされてるから、顔見知りの俺でもペナルティ食らったりするんだよ。手間だけど我慢してな!マミとパピは改めて入ってから吟味するべ!んじゃ!」

ミサオは走って服屋へ飛び込む。

新品は仕立てしか無いので中古の服だが、逆に子供服はすぐ着れなくなるおかげか数は沢山ある。麻のシャツと半ズボンだけ手に入れてすぐに戻るミサオ。

「さ、ジョロこれ着て!って、まだ1人じゃ難しいか・・・はい、パピに捕まって!はい、足上げて・・・こっちも!んでボタン閉めて・・・紐結んで。後はシャツを・・・おし!オッケー!んじゃ町の外に出るよ!ポチッとな!」

永井家は人目に付かない町の外、城壁傍に転移し直す。

そして入り口の人の列の最後尾へと慣れた感じで溶け込・・・もうとしたが、ミサオもクミコも現代世界の服のまま。

目立っている。

ミサオはいい加減こちらの世界の服で活動しても良いはずなのだが、副業気分が抜けずにいた為に、服に気を使う余裕もミサオ自身がなかったせいで町の人々にも(おかしな格好の冒険者)として認知されていた。

特に騒がれもしていなかったから、特に気にもしていなかったのだ。

しかしクミコの服は目立つ。

普通のアイボリーのニットのカーディガンに、茶色のワンピースを着て、ローヒールの茶系のパンプスを履いているだけなのだが、ここいらでは絶対に見ない。いや、他の土地でもあり得ない違和感。

ミサオの作業着も大概だったが、霞んでしまっていた。

そんな中でも順番が回ってくる。

ミサオと門番達はすっかり顔なじみだ。

右の門番がアーニオ、左の門番がンーニオ。 
まさかの双子だった。

「よーミサオ、今日は連れがいるのか? いよいよパーティー組むのか?・・・でいうか、どこぞの貴族お姫様でも捕まえて来たのかよ!その割にはそっちのおチビさんは普通の・・・って、こっちはモフモフさんかよ!ここらじゃ珍しいなぁおい!ミサオ、こりゃどういうこたっ!」

「いや、アーニオ。今日は嫁さんと息子を連れてきた。 
世話になってるテリオスの町のみんなに、ちゃんと挨拶しようと思ってな!」

クミコも丁寧に一礼して挨拶する。

「はじめまして、ミサオの妻のクミコと申します。 
主人がいつもお世話になっております。 
これからも主人をよろしくお願いいたします」

門番たちは、まるで貴族に頭を下げられたかのように衝撃を受け、 アーニオは真っ赤な顔で硬直。

ンーニオは・・・。

「あ~その、こ、こちちりららこそ!」

と、訳の分からないことを口走りつつ頭を下げていた。

クミコのすぐ横で手をつないで立っていた モフモフの化身・ジョロも一生懸命に初めての挨拶を試みる。

「ナ~ガ~イ~ッ!ジョロ、じゃなくて、コジマルでぇっすっ!パピとマミはジョロって呼んでます! 
よろし、くおねがいし、し、しますっ!」

(初めてのご挨拶、良くやったな!パピは・・・パピは今猛烈に感動しているっ!)

クミコは満面の笑みを浮かべ、 
ミサオは感涙にむせんだ。

門をくぐり、改めて服屋に入った永井家親子は、取り敢えず夫婦2人の分の、こちらで違和感の無い服を手に入れる。仕立ての服を作る資金が無いわけではなかったが、それは次の機会という事で落ち着いた。

それよりも次のミサオの目的地。
挨拶すると入り口でも言った手前。

クミコとジョロに本当の仕事振りを示す為。

目指すのは冒険者ギルド。

建物の前に着き、3人でその姿を眺める。

「ここがパピの副業の仕事を請け負う場所であり、仕事の始まりと終わりに顔を出す場所のテリオス冒険者ギルドだ。二人には見せておきたくてさ。さ、中に入るぞ!」

ギルドのドアを開けると、 依頼書を眺めるベテラン冒険者達・新人講習を受けるルーキー冒険者で賑わっていた。

「お、ミサオさんチイッす! 
この前の格闘訓練、めちゃくちゃ為になりました! 
今度三段蹴り、教えてください!」

「お、ポールか!
確かにお前、攻撃センス抜群だけど、防御が甘いな。 
俺の裏拳と後ろ回し蹴りをしのげたら、三段蹴り教えてやるよ!」

軽口を叩くミサオ。

その横では・・・。

クミコが受付嬢や酒場のマスター、 気付いたらギルマスにまでご挨拶を済ませ、 すでに楽しそうに談笑していた。

さらにその隣では・・・。

「ナ~ガ~イ~ッ!ジョ、コジマルでいっす!」

コジ丸=ジョロが必死に自己紹介している。

その2人の姿に、ミサオはまたしても涙をそっとぬぐった。

家族そろって、異世界デビュー。

不安も少しは減った気がしたミサオである。

ギルドでの挨拶を終えた永井家。

ミサオ、クミコ、そしてジョロの3人は、 その足で町の不動産屋に向かった。

「不動産屋なんてこっちの世界にもあるのね・・・。で、なんでそんな所に行くの?」

「マミの疑問はわかる。一応理由は幾つも説明出来るんだけど・・・まずはどんなもんだか見に行ってみようや。俺も初めてなんだよ。」

ミサオ一人なら、宿屋暮らしでも十分だった。

だが、今は家族が一緒にいる。

妻と息子が安心できる環境が、どうしても必要だった。

これからは2人がこちらの世界にいる時間も増える前提で。

また、ミサオの構想の一つ、商人ギルドに登録する為には きちんとした住所が必要らしい。

宿屋暮らしは信用が薄いと聞いていた。

「お?あの家のマーク!ここが不動産屋か。流石に物件外に張り出したりはしてねぇよな。紙も高いしコピーもPCもスキャナーも無いからな。さて、御免下さ~い!」

ミサオは現代のノリで建物の中に先頭で入ってゆく。

中に入ると、人の良さそうな恰幅の良い初老の男性が居て、ミサオの要望をある程度聞くと三軒の物件を提示してきた。

一つ目は、町の外壁に近いそこそこの一軒家。

木造。

だが、ベッドが二つしか置けない位のいわゆる1DKの作り。

家族で暮らすには、明らかに手狭だった。

ちなみに日本の様な6畳や4畳半などの発想は勿論無い。

二つ目は、いわゆる豪邸。

家賃は、ミサオが頑張れば払えるレベル。

都内高級賃貸位だろうか?

ただ、部屋数が多すぎて、

管理も掃除も人を雇わねばならず、貴族でもない永井家には現実的ではなかった。

そして、三軒目。

一階が店舗兼倉庫として使える設計。

キッチンとダイニングも1階と2階にあり、

2階は寝室、応接室、個人スペースに使える程の広さがあった。

耐久性や防犯についても、 魔法や魔道具で対応出来るという。

(こりゃ、3番目一択だべ!あ!商売の話、マミ知らねぇんだ!)

肝心の話をやっとクミコにこの場で伝え、一悶着あったのだが
クミコとしっかり話し合った結果。

三軒目を賃貸・・・では無くローンで購入することに決めた。

「パピの話聞いてると、私はダラダラ借りて住むより、今回に限って言えば、買えるなら買って良いと思うけど?」

クミコの鶴の一声。

支払いは、 冒険者ギルドにある程度預けていた達成報酬から。

毎月決まった金額を届ける契約となる。

保証人制度とかは曖昧な所だが、ここでC級冒険者というのが生きた。

やはり信用度が違うのだ。

本来なら一括払いも出来たが、現代世界での生活費も考慮し、無理はしない。

ミサオは珍しく大人な判断を下した。

「話聞くだけの筈だったんだけど・・・良かったのか?マミ。」

「さて、どうなんでしょ?・・・私も混乱してるからよくわからない。」

イタズラっ子の様な顔でミサオに微笑むクミコ。

(・・・やっぱマミは最高の奥さんだな!今更だけど。)

こうして、怒涛の展開の中、単なる通いの冒険者だったミサオも、もう一歩踏み込んでこのイグナシアと呼ばれる世界に、生活基盤を増やす段取りをする形となった。

家族のための異世界の拠点。

ミサオ・クミコ・ジョロの3人は横並びで手を繋ぎながら購入予定の建物へとプラプラ歩く。そして・・・。

「・・・思ったよりも傷んでないな。」

「そうねぇ。パピの言ってたお店?これなら何やるにしても何とかなりそうだし。この右側の倉庫スペースもそこそこあるわよね?まず、角地っていうのも目立つわよね。」

「午後の時間で人通りもそこそこ。馬車を止める道幅もあるしな。これ掘り出しもんかも!マミの嗅覚半端ねぇな!」

「私、こういう時、冴えるのよねぇ・・・。」

「ま、男を見る目はあるのは知ってるよ?」

「・・・どの口が言ってるのかしらね?ジョロ、ここもう一つのおウチになるよ?どうする?」

「ん?おウチ?パプパプのオモチャある?」

「今はまだだけど、パプパプもちゃんとある様にするから大丈夫!ね、パピ?」

「お、おぅ!任しとけ!」

新たな拠点を前に、ミサオは改めて思う。

(毎日飢える事無く、腹一杯飯食えて。怪我も無く、病気もトラブルも無く・・・毎日みんなが笑顔で暮らせる。日本だろうと、ここテリオスだろうと、それが出来れば関係ねぇか。)

ここでミサオは本来の目的を思い出す。

次の目標は・・・。

「この勢いて、商人ギルドへの正式登録だ!」

ミサオは叫んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...