家族で国家機密──うちの犬がしゃべった、その先で 改定版

武者小路参丸

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第10話 反省会?いいえ、“家族”の時間──ジョロパパ、スイーツを頼む

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「そりゃ、どこの親も子供は可愛いもんだろうけどもさ・・・。」

初めて他の家族との共同作戦を終え、無事怪我も無く帰宅した永井家一同。制圧後の親バカ同士のワチャワチャもあり、ミサオは肉体よりも精神的に疲労を感じていた。

「はたから見ると、俺もあんな感じなのかなぁ。・・・でも、俺は大げさじゃ無くて、てめぇんとこの子供は世界一だって思うし、ずっと抱っこしてモフモフしてたいんだよ。ただ、それを他の家族がやってんの見ると。・・・生温かい目になってしまうのは何故なんだろう?」

自らの行動を少し省みているミサオ。

「アタシは、アンタの親バカぶり毎日見てるから、特に気にならなかったけどね~!実際、ジョロ可愛いしね~!」

クミコは例の如く、ジョロの存在を全肯定する。

「マミも可愛いよ~!」

「もう~!ジョロはうれしい事ばっかり言ってくれるんだからっ!」

クミコはジョロを抱きしめ、1階の和室で畳の上をゴロゴロ転げ回っている。

「・・・まあ。結局俺も、これまでの生活と何か変える訳じゃねぇしな。・・・てか、2人だけで何やってんのよ?パピも混ぜろって!明日は又、お仕事系のお出かけの予定あんだから、俺も今は遊ばせろ~!」

夕食前の、家族の団らん。

Unknown制圧などという内容の作戦に従事してる人間達とは思えない、ほのぼのとした夕暮れの風景の永井家である。

ミサオの言っていた、(お仕事系のお出かけ)。

今回のUnknown制圧対応案件は他の家族との共同作戦だった事で、お互いの家族同士で集まり、今回の事案について確認する事が制圧現場で決まった。

事後ミーティング。・・・要は反省会である。お互いの家族が個々に対処したUnknownの情報共有、戦闘の際に別の家族がどの様に見ていたのか、気付いた点や改善点などをすり合わせておこうという前向きな内容である。

明けて翌日の朝。

ミサオはスマホに送られて来た集合時間と場所を確認し、家族3人で自家用軽自動車に乗り込み、指定場所に安全運転で向かう。

ミサオは内心、秘密基地みたいな所が用意されているかも知れないとワクワクする部分がありながらも、過去のドライバー経験から、頭の中でそれを否定する声が聞こえてくる。

(・・・これって、産業道路と環八が交差する所だよな?んな駅も近いとこで反省会なんて出来んのか?)

スマホで指示された場所を振り返って悩みながらも、家族を乗せたミサオの車は、ゆっくりと目的地に進む。

例の如く、横浜横須賀道路・首都高速道路と走り、県境の首都高大師インターで降りて、産業道路を左へ曲がり、大師橋を使って多摩川を超える、東京都大田区へと入る。

「やっぱそうだよな!ビルばっかだし、店ばっか!秘密基地も何もねぇよな、この街並み!」

愚痴るミサオの目に映る風景。

東京都大田区。京浜急行の大鳥居駅にほど近い、環状八号線と国道357号線、俗に言う産業道路が交差する場所。

その交差点の一角に位置する、1階にコンビニが入るビルの3階が指定された場所である。

「この辺って、有料パーキング絶対高いよ?見てみ?あそこなんか時間300円だと!この辺って下町みたいな感じだから、大型商業施設とか無いんだよな・・・。」

しみったれた事を言いながらも、ミサオは少しでも安そうな有料パーキングを探して車を走らせる。

「アンタ、こういう時お金使わないでどうすんのよ?前より高給取りになったんでしょ?アタシも働いて、ジョロも働いてて何が高いよ!ま、ジョロのお給料は貯金して、自分で好きな物買いなさいね~!」

相変わらずジョロに甘く、ミサオに厳しいクミコ。

(いやマミ!正論だけんどもさ?先は見据えた方が良いと思うよ?大体ジョロの欲しい物って何?おやつ山で買っても使い切れねぇべよ?なんでマミは、俺に対してツンデレ・・・いや、ツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレなんだべなぁ。)

肩を落としながら、ミサオはなるべく指定場所に近いパーキングに車を駐車する。

結局、車を降りてから歩いて3分程で、目的地のビルに到着した、ミサオ・クミコ・ジョロ。

ちなみにこの時のジョロはワンコモード。しっかり着替えと特殊拳銃もリュックに入れて持参済み。

ミサオとクミコは、上着の内ポケットに警察手帳も携帯している。

指定されたビルのエレベーターに乗って降りたのは3階。他の階は違うだろうが、この階は一つの店だけの入居らしいとミサオは1階で確認している。

(ペットカフェ ルンルン)。

エレベーターを降りた正面にあるガラス扉にぶら下げられた、木材の板で出来た看板に書かれている文字。

(中は曇りガラスで見えなくなってんのか。・・・大体、ペットカフェってなんなん?動物と入ってオッケーって事?それとも保護犬カフェみたいに触れ合うスペース別にあるやつ?食品衛生法とか大丈夫か?・・・知らんけど。)

色々悩みながらもミサオは、クミコとクミコに抱っこされたジョロを伴い、肩掛けのリュックを持って店の扉を押して中に入り、声を掛ける。

「すいませ~ん。あの、2名でワンコと一緒なんですけども・・・。」

入ってすぐ左側がレジになっていて、右側はカウンター席。左側にテーブル席が幾つか並び、その奥にガラスで仕切られた広めのフリースペースがある。

正面は一面のガラス張りで、外が良く見えそうな作りであった。

店員らしき人を目で探すミサオ達に、左の方から女性らしき声が届く。

「やだ!ジョロママ!来てくれてありがとうございます!」

3人が声の方を見ると、昨日対面した猫系獣人マイヒメのママさんの姿。永井家の方に歩み寄ってくる。

「こちらこそお声がけ頂いて、本当にありがとうございます。」

クミコの言葉に合わせてミサオとも頭を下げる。


「あら?ジョロママ来たの?遠かったでしょ?」

又左の方から女性の声。

「あ!あ~くんママ!昨日はお疲れ様でした。・・・あ~くんも平気そうですね!ヒメママもあーくんママも、よくこちらに?」

ミサオとワンコモードのジョロを放置し、話が弾む各家のママさん達の会話が進んでゆく。

どうしたものかと、クミコから預かったジョロを抱いて困るミサオ。そこに、今度は男性の声がミサオに届く。

「あ!ジョロパパ、来ましたね!さ、こっち!こっち座って!コジマルくん!いや、ジョロくんも獣人モードでいいから、ほら、ウチの娘もあ~くんももう変身済みだから!」

ミサオに気付き、笑顔で誘う鈴木家のヒメパパ。

「え?あ、あの人目とか・・・て、ジョロ、モードチェンジ早っ!」

ヒメパパに答えようとするミサオの腕から飛び降り、獣人モードになってミサオのリュックから着替えを勝手に取り出すジョロ。

慌ててトレーナーにハーフパンツ・スニーカーにキャップをまとってサングラスを手にしたジョロが、昨日出会った獣人仲間に改めて挨拶する。

「ヒメちゃん!あ~くん!こんにちは!」

ジョロが店の一角に陣取るお子様席に歩き出す。

奥の席で獣人モードの先輩2人が笑顔で手をあげている。

結局、テーブルは男親・獣人お子様席・ママ席と自然に分かれていく。必然的にミサオはパパさんだけの席に座る事となった。

そこには昨日出会った、池田家のあ~くんパパも勿論居る。

「あの、昨日はお疲れ様でした。・・・で、結局この集まりは一体?事後ミーティングなんですよね?それに子供達はあの姿で大丈夫なんですか?外から見られたり、一般の他のお客さんとか・・・。」

頭を下げながらも、ミサオが心配を口にする。

「あぁ!ジョロパパまだ知らなかったんですか。大体共同作戦後は、制圧に参加したメンバーでの反省会・・・と称したお茶会が通例なんですよ。で、ヘタな場所では子供達の事もあるので、こういった獣人オッケーな場所で開催されるんですよ。」

ヒメパパが丁寧に説明する。

「いや獣人オッケーって、そんな簡単な・・・。」

ミサオはヒメパパの説明に困惑する。

「・・・しっかり予算、出てるみたいですよ?どこからか。こういう場所が日本各地にあるみたいで、本部に問い合わせれば、割引で使用出来るみたいですよ?私達は。で、従業員もただの民間人ではない様で、子供達のあの姿にも動揺はない。そんな感じみたいですね。一般のお客さんはドア開かないようになってるみたいですし、あのガラス張りのとこも、外から見えない加工施してありますよ。帰りに下から見たらわかりますから。」

これまた知識皆無のミサオに優しく説明をするあ~くんパパ。

「・・・手厚い福利厚生の一環なんですかね?これ。」

ミサオは首をひねる。

「確か横須賀にもありましたよね?あーくんパパ。」

「あぁ、確か焼肉店じゃなかったかな?」

ヒメパパの言葉に答えるあ~くんパパ。

「焼肉屋!・・・個室だったりします?ジョロと入れるって事ですよね?」

2人のパパさんの会話に、ミサオも興味が湧いてくる。

「せっかくの機会なんで、後学の為にもお聞きしたいんですけど、皆さんの部隊への任官のキッカケって?」

少し気持ちを引き締め、ミサオが2人のパパさんにに尋ねる。

「あ、それですか?ウチはね、札幌の雪まつり!

マイヒメは猫だから寒いの嫌がったんですけど、家族旅行で行ってたんですよ。

そしたら目の前の雪像ぶち破ってunknown出てきたもんだから!いや、あん時は焦った焦った!・・・そしたらいきなりマイヒメがあの姿に変わって・・・。

unknownに飛び掛かって、やっつけちゃったんですよ!でもほら、状況的に、パニックだから慌ててその場から家族で逃げてしまいましてね・・・。

逃げてる途中で見つかって、警察官にパトカーに乗せられた時は、どうなる事かと。

まぁ、以前からこの様な事案はあったみたいなんでね。マイヒメの姿が元に戻った所で、警察署からホテルまで送って貰って。不安な中で一晩過ごしたら、次の日に司令が現れて。・・・今に至るって所ですかね。」

「・・・焦りますよね、最初。しかも旅行先は、キツそうですもんね。」

ミサオも自らの出来事を振り返り、鈴木家の見舞われたトラブルに同情する。

「ウチはその点、千葉のパパ~牧場でしたからね。そこまで民間人も居なかったし、トラブルの最中に警察来てくれたからある意味話早かったですよ?ただ・・・セキセイインコのあ~くんが、あの姿って・・・。あまりにも大きさ違うでしょ?

肩に乗るあの子がいきなり高校生ぐらいの美男子ですよ?

それで、お父さんとか言われても、最初は信じられませんよ実際。

・・・でもやっぱり、家族は通じ合ってると言うか、納得出来たんですよあの子の言葉。頭じゃなく、魂の奥底でって言うのか。」

「・・・それ、わかります。・・・家族なんですよね。みんな。」

あーくんパパの話に激しく同意するミサオ。

ミサオがふと獣人お子様席とママ席を見ると、どちらも楽しげに会話が進んでいる様子に見える。

「しかしこの空気・・・絶対反省会ではないですよね?俺達一応最前線の部隊員なんですよね?」

常識的な言葉をミサオは口にする。

「気にし過ぎると、疲れますよ?私達は特殊な環境に置かれてますから、余計にオンとオフの切り替え必要ですよ?ママ!適当にそちらも食事始めちゃってね?」

マイヒメパパがママさん席に声を掛ける。

「そうそう、こういう時はリラックス!お~い子供達!好きな物頼みなさいよ!あ~くんも、今日はお肉、好きなの食べなさい!」

あ~くんパパも、優しい笑顔で子供達に伝える。

「そう・・・ですよね。いつも要請来るの気にして、緊張してたら持たないですよね。・・・よし!じゃあ俺も、パパさん達とお話盛り上がりますか!すみませ~ん!とりあえず、キャラメルラテとビッグチョコレートパフェ!お願いしま~す!」

ミサオも気持ちを切り替えて、自らも楽しむ事にする。

「・・・ジョロパパ?その組み合わせって・・・。」

困惑顔のヒメパパ。

「甘党・・・なんですか?・・・その顔で?」

額にシワを寄せるあ~くんパパ。

「いいじゃないですか!舌がおこちゃまなんですよ!それにあ~くんパパ、顔は関係無いでしょ顔はっ!」

最初は戸惑ったミサオも、この関係に少しは慣れた気がした、昼であった。

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