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第9話 初の連携作戦──そして“友達”が出来た日
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永井家が初任務・初戦闘を終えてから3ヶ月が過ぎた。
ジョロ・ミサオ・クミコの3人は、今の現状を受け入れつつも、1日でも早い平穏な毎日を願って奮闘を続けている。
そしてこの日も又、永井家には出動の連絡が入る。
「・・・了解。unknown複数確認の為、今回は合同作戦。指示通り、横須賀の自衛隊林駐屯地にてヘリに乗機後、現場に急行します。」
ミサオは、国家害意生命体対策部隊、通称H-FORCE(エイチ・フォース)本部から要請を復唱し、スマホの通話を終える。
大分慣れてきた永井家の出動準備。
素早く永井家一同は覆面仕様の自家用軽自動車に乗り込み、指示通りに陸上自衛隊横須賀林駐屯地へと向かう。
クミコのスマホに映し出されている入り口の門衛に向けて、クミコの指示通りに、ミサオは迷いなく車を進ませ、入り口を警備する自衛隊員に、胸元を指差し示す。。今回の出動では自宅を出る際、既にジョロも獣人モードで、3人共に戦闘服での行動となっている。
ミサオの戦闘服の左襟に輝くのは、H-FORCE(エイチ・フォース)の隊員であることを示す部隊記章だった。
この記章は、陸上自衛隊をはじめとする防衛関連施設に入構する際、身分証明として使用される特殊な意匠を持っている。
普段はただの金属製エンブレムにしか見えないが、UV照射により“真の紋章”が浮かび上がる構造である。
中央には力強く刻まれた「H」の文字。その背後には、放射状に広がる光が描かれ、右下には微細な“星”が打たれている。それは、未だ救済されていない魂たちの象徴とされている。
さらに、通常の光では見えないが、特定の波長を当てることでだけ浮かび上がる隠された意匠。
それは、トイ・プードルを模した犬影のシルエット。ピンと立った尻尾・垂れた耳。そして優しそうな横顔。
この“犬影”こそ、かつてこの国で最初に獣人となり、家族と共に戦ったチームの姿を象徴として描いたもの。
H-FORCEは、その存在を原点として結成された経緯を持つ。
ミサオはそれを誇りと共に門衛に見せる。すると門衛はすぐに敬礼し、無言のままゲートを開いた。
「・・・行こうか、ジョロ。マミ。」
後部座席に座るジョロも、ふと胸元に手をやり、自身の記章をそっと撫でた。
クミコも助手席で毅然と前を向く。そのまま車は、スマホで指示されたヘリの発着場へと向かう。
(ヒュンヒュンヒュンヒュン。)
永井家の皆に見えている、前後に2つ付けられたヘリのプロペラは、すでに回転している。
ちなみに永井家は全員、ヘリコプター搭乗などこの日が初めてである。
ヘリのスライドドアも開け放たれている。
少し離れた所に車を停車させ、車のキーを差したまま、ミサオ・クミコ・ジョロの3人が、帽子を片手で抑え、姿勢を低くしてヘリに乗り込む。
3人の搭乗を確認したヘリ内の隊員がスライドドアをドアを閉める。
「このヘッドホンを着用して下さい!」
プロペラの大きな音の中、隊員からの指示に従う永井家の3人。
しかし獣人であるジョロの耳の位置が人間と違う為、見た目は随分と上の位置に浮いている。
場面が違えばギャグになってしまうが、さすがに笑う時ではないとミサオもクミコも無言を貫く。
皆の装着しているヘッドホンからは、マイクが伸びている。目の前の隊員の言葉が、マイクを通じてミサオ達の耳に飛び込んでくる。
「このまま神奈川県警のビル屋上に向かいます!そこから用意してある車両で、現場(げんじょう)であるみなとみらい地区に向かって下さい!」
「了解した!神奈川県警ビル到着後、車両にて現場(げんじょう)へ向かう!」
ミサオが説明を復唱する。
この場所から県警ビルまで直線距離で約40キロ。ヘリ使用で時間にして、15分弱で到着予定となっている。外は快晴の真っ昼間。ミサオには、特にイレギュラーも無さそうに感じられる。
ビル到着後、車で約5分の場所で待つ異常事態にミサオは気を引き締めている。
みなとみらいでも最後の開発地区の高層ビル建設予定地。
そこにunknownが3体同時に出現したとの報告である。
「今回、ウチみたいな家族チームとの、初の連携作戦だ!先輩達の邪魔にならんようにしないとな!」
ミサオがクミコとジョロに、マイク越しに言葉を伝える。
「そうね!でも、ジョロが1番強いわよ!ね?ジョロ!」
「とにかく頑張るよっ!」
2人共元気良く大声で返してくる。
「離陸します!」
ヘリの操縦士からの一言が耳に伝わる。
ヘリが少し前方を下げた姿勢で上昇を開始する。
海側を背中にして、ヘリは内陸部へと飛行してゆく。
程なくヘリは、目的地である神奈川県県警の屋上に着陸する。屋上にいた警察官の先導にて、地下駐車場の覆面パトカーの、助手席と後部座席に乗り込む永井家の3人。
赤色灯を回しながらすぐさま目的地まで車が向かう。
「ここって、ホントに近未来感あるよな?」
みなとみらいの街並みを見ながら、ミサオがつぶやく。
覆面パトカーの後部座席にクミコと獣人モードのジョロ。
助手席にはミサオという位置。
「これがお出かけなら楽しいんだけどね・・・。」
流れる景色の中でクミコが言う。
ドライブ気分に浸る間も無く、覆面パトカーは事案発生現場へと到着する。高層ビル建築中の場所。フェンスで中がうかがえない状態でも、中での怒声や、何かしらの金属音が聞こえる。
「近藤二尉ご苦労様!状況は?」
車から降りた永井家が、建築現場前を封鎖する警官や自衛隊員の中に見知った顔を見つけ、駆け寄り尋ねる。
「ミサオ二尉!・・・今は、鈴木家と池田家が中でunknownの制圧行動に出ている。ただunknownは3体。制圧までには・・・。」
「状況は確認した。中に入るよ?」
ミサオは早速3人で、警察官に封鎖されている入り口を通ろうとする。
「了解。コジマル二尉も侵入後、いきなり戦闘に移行する可能性が大です。クミコ二尉もお気を付けて!おい!道をあけろ!」
黄色いテープで封鎖された入り口に、空間が作られる。
「これより永井家、unknown制圧行動を開始する!」
入り口にて、皆に敬礼してから、永井家の3人は現場へと侵入を開始する。
中に入った直後。
「舐めるにゃ!」
「気を付けて!マイヒメ!」
「俺の娘に何すんだ!」
永井家の前方右側で、制圧行動に出ている家族の姿が目に飛び込んでくる。相対しているのは、バッファローの様な頭の2足歩行unknown。
「今、にゃって言ったよな?猫なのか?それでにゃって言うのか?」
初めての獣人家族の動きにミサオは一瞬釘付けとなっていた。
「パピ!じゃなかったミサオ二尉、発砲許可承認!早く!」
「お、わりぃ!クミコ二尉、発砲許可承認!コジマル二尉、相手は3匹居るからな!周り良く見てから動けよ!」
声をかけながらも、ミサオが今度は左側に目をやると・・・。
「我が断罪の爪、受けてみろ!」
「いけ!あーくん!カバーは任せろっ!」
「あーくん!そいつの羽何とかして!ママ、それじゃ当たらないから!」
2本足でスックと立っている獣人とその両親らしき別の獣人家族チーム。
確かにペットは犬や猫だけとは限らない。
「・・・こちらは、鳥さんですか?へ~。相手も・・・頭はワシ?鷹?空中戦は、ウチだとキツいかな・・・。コイツでUnknownは2体。さてもう一体は?」
少し離れた、直置きされた鉄骨の影から光る2つの目に、ミサオが気付く。
「いやがったぜ。・・・珍しく4足歩行タイプか?豹みたいな頭にツノか!マミ!気を付けろ、ヤツ多分足早そうな感じする!そこのUnknown!動くな!動くと撃つ!」
クミコに警戒を呼びかけたミサオの予想通り、瞬時に永井家の方に走り寄って、飛びかかろうとする豹型unknown。純白の毛に覆われた大きな体躯。おでこの辺りに太く鋭い一本角。迫る姿の前に立ったジョロが角を両手でつかみ、そのまま横倒しにUnknownを地面に叩きつける。
その叩き付けたunknownにまたがり、両手の拳を交互に打ち付けるジョロ。ミサオとクミコは油断無く拳銃を構えたまま、ジョロの攻撃を見守る。
「これで・・・終わりだ!」
(メキッ!)
角を叩き折った一撃。
これが最後の一撃となったらしく、豹頭のUnknownから、モヤが湧き上がって形を成してゆく。
「お。・・・この子は、チワワみたいに見えるな。Unknownの姿とかの関連性はねぇんだな?・・・お前さんも大変だったな。虹の橋のたもとでゆっくり休みな。またどっかで会えるといいな・・・。」
ミサオが優しく声を掛ける。
「もう苦しませる者は居ないわよ。安心して。」
「これまで出会った家族達を待つのか、新たな家族と出会う旅を選ぶのかは君次第だけど、今はゆっくり向こうで休みなよ!焦らずに、ゆっくりね!」
クミコとジョロも思いを伝える。
永井家の目の前に見える、透けた状態のチワワに似た犬の姿の魂。
(キャウ~ン!)
遠吠えをあげて魂は光の粒子となり、天へと昇りながら消えてゆく。
「・・・切ないような、嬉しいような。いや!まだ2体残って・・・。って、いつの間にか制圧終わってんじゃん!」
ミサオが周りを確認して声をあげる。
「さすがマイヒメ!お前は器量も技量も世界一だなおい!」
「お父さん、当たり前でしょ?ウチの子なんだから。ね?マイヒメ?」
「にゃっ!父さんも母さんもありがとにゃっ!」
猫系獣人の家族の方ももしっかりUnknownを制圧完了し、力の抜けた会話を交わしている。
「麗しき家族の絆だなおい!」
ミサオは猫耳獣人家族の会話に思わず突っ込む。
そしてその猫系獣人家族の逆側では。
「パパ、ママ。ケガはない?」
「何言ってんだ!お前こそ、引っかかれてたろアイツに。平気なのか?」
「そうよ?パパあそこで撃たないから・・・。」
「いや、空向けては、あーくんに当たりでもしたら危ないだろ?あーくん、ゴメンね?本当に平気かい?お前は大事な息子なんだからな!」
「心配性だな、二人共!」
こちらの鳥系獣人の家族も、先程の家族と会話の内容に大差が無い。
「・・・なんだろうなぁ。モヤモヤする。・・・結局、何?ここは親馬鹿の集まりか?緊張感失せるわぁ、この会話。」
ミサオが肩を落とす。自らを顧みずに。
2つの家族の様子を見て、自分を棚に上げてため息をつくミサオに、声が届く。
「・・・どうも!永井・・・さん御一家ですか?どうも、鈴木です。」
先程の猫ちゃん家族の父親が挨拶に来る。
「あ、どうもお疲れ様です!鈴木・・・二尉でいらっしゃいますか?自分は・・・。」
ミサオはスマホからの事前情報を思い出しながら挨拶を返す。
「いやいや、そんな堅っ苦しい文言、現場で誰も言ってませんよ?真面目ですね永井さんは。」
「へ?」
鈴木家のパパさんに意外な言葉を告げられて固まるミサオ。
「・・・こちらが新戦力の永井家の皆さんですか。息子さん、お強いですねぇ!あ、どうも池田です!この子がウチのあーくんで、こっちが妻のより子です。鈴木さん!相変わらずマイヒメちゃん可愛いですね!」
「それほどでも・・・あーくんも空では敵う者無しですもんね!いや、素晴らしい!」
永井家そっちのけで、両家の褒め合いが始まる。
「・・・えと、部隊の訓練の意味は?一所懸命に小難しい言い回し覚えたのに・・・。」
「今、制圧行動してたのよね?何?このほのぼの子供自慢の空気?」
凹むミサオのそばに来たクミコも戸惑ってしまう。
「おい!君がコジマルくんかい?初めまして!私の名はアスカ。池田アスカ。一応セキセイインコからの獣人になる。宜しく。」
鳥系獣人の男の子(?)がジョロに声を掛けてくる。
「あ、初めまして!僕は永井コジマル!トイ・プーだよ!でも、僕の事はジョロって呼んで!あ~くんで良いよね?で、そっちの君は?」
そばに来た猫系獣人の女の子(?)に自分から声を掛けるジョロ。
「にゃっ!アタシは鈴木マイヒメ!元々はスコティッシュフィールドにゃ!あ~くんもアタシもジョロより先輩だから、何でも聞くにゃっ!」
「うん!わからない事教えてね!それじゃあねぇ、戦闘の時・・・。」
それぞれの家族の子供達は、早くも仲良くなりそうな気配。
「マミ?ジョロにお友達出来たのかな?猫ちゃんとセキセイインコくん。良かった良かった。・・・って、このカオスな状況何?」
「ん~~?まぁジョロが笑顔ならヨシ!」
ミサオの常識的な疑問を、クミコはまたもや、ジョロ絡み全肯定モードでぶっちぎる。
「ヨシじゃねぇって!ダメだこれ!ちょっと近藤二尉!近藤さ~ん!何とかしてよこれ!」
この日、永井家初の他家族との共同作戦は、無事完了となる。
ジョロに新しい友達が出来るというおまけつきで。
ジョロ・ミサオ・クミコの3人は、今の現状を受け入れつつも、1日でも早い平穏な毎日を願って奮闘を続けている。
そしてこの日も又、永井家には出動の連絡が入る。
「・・・了解。unknown複数確認の為、今回は合同作戦。指示通り、横須賀の自衛隊林駐屯地にてヘリに乗機後、現場に急行します。」
ミサオは、国家害意生命体対策部隊、通称H-FORCE(エイチ・フォース)本部から要請を復唱し、スマホの通話を終える。
大分慣れてきた永井家の出動準備。
素早く永井家一同は覆面仕様の自家用軽自動車に乗り込み、指示通りに陸上自衛隊横須賀林駐屯地へと向かう。
クミコのスマホに映し出されている入り口の門衛に向けて、クミコの指示通りに、ミサオは迷いなく車を進ませ、入り口を警備する自衛隊員に、胸元を指差し示す。。今回の出動では自宅を出る際、既にジョロも獣人モードで、3人共に戦闘服での行動となっている。
ミサオの戦闘服の左襟に輝くのは、H-FORCE(エイチ・フォース)の隊員であることを示す部隊記章だった。
この記章は、陸上自衛隊をはじめとする防衛関連施設に入構する際、身分証明として使用される特殊な意匠を持っている。
普段はただの金属製エンブレムにしか見えないが、UV照射により“真の紋章”が浮かび上がる構造である。
中央には力強く刻まれた「H」の文字。その背後には、放射状に広がる光が描かれ、右下には微細な“星”が打たれている。それは、未だ救済されていない魂たちの象徴とされている。
さらに、通常の光では見えないが、特定の波長を当てることでだけ浮かび上がる隠された意匠。
それは、トイ・プードルを模した犬影のシルエット。ピンと立った尻尾・垂れた耳。そして優しそうな横顔。
この“犬影”こそ、かつてこの国で最初に獣人となり、家族と共に戦ったチームの姿を象徴として描いたもの。
H-FORCEは、その存在を原点として結成された経緯を持つ。
ミサオはそれを誇りと共に門衛に見せる。すると門衛はすぐに敬礼し、無言のままゲートを開いた。
「・・・行こうか、ジョロ。マミ。」
後部座席に座るジョロも、ふと胸元に手をやり、自身の記章をそっと撫でた。
クミコも助手席で毅然と前を向く。そのまま車は、スマホで指示されたヘリの発着場へと向かう。
(ヒュンヒュンヒュンヒュン。)
永井家の皆に見えている、前後に2つ付けられたヘリのプロペラは、すでに回転している。
ちなみに永井家は全員、ヘリコプター搭乗などこの日が初めてである。
ヘリのスライドドアも開け放たれている。
少し離れた所に車を停車させ、車のキーを差したまま、ミサオ・クミコ・ジョロの3人が、帽子を片手で抑え、姿勢を低くしてヘリに乗り込む。
3人の搭乗を確認したヘリ内の隊員がスライドドアをドアを閉める。
「このヘッドホンを着用して下さい!」
プロペラの大きな音の中、隊員からの指示に従う永井家の3人。
しかし獣人であるジョロの耳の位置が人間と違う為、見た目は随分と上の位置に浮いている。
場面が違えばギャグになってしまうが、さすがに笑う時ではないとミサオもクミコも無言を貫く。
皆の装着しているヘッドホンからは、マイクが伸びている。目の前の隊員の言葉が、マイクを通じてミサオ達の耳に飛び込んでくる。
「このまま神奈川県警のビル屋上に向かいます!そこから用意してある車両で、現場(げんじょう)であるみなとみらい地区に向かって下さい!」
「了解した!神奈川県警ビル到着後、車両にて現場(げんじょう)へ向かう!」
ミサオが説明を復唱する。
この場所から県警ビルまで直線距離で約40キロ。ヘリ使用で時間にして、15分弱で到着予定となっている。外は快晴の真っ昼間。ミサオには、特にイレギュラーも無さそうに感じられる。
ビル到着後、車で約5分の場所で待つ異常事態にミサオは気を引き締めている。
みなとみらいでも最後の開発地区の高層ビル建設予定地。
そこにunknownが3体同時に出現したとの報告である。
「今回、ウチみたいな家族チームとの、初の連携作戦だ!先輩達の邪魔にならんようにしないとな!」
ミサオがクミコとジョロに、マイク越しに言葉を伝える。
「そうね!でも、ジョロが1番強いわよ!ね?ジョロ!」
「とにかく頑張るよっ!」
2人共元気良く大声で返してくる。
「離陸します!」
ヘリの操縦士からの一言が耳に伝わる。
ヘリが少し前方を下げた姿勢で上昇を開始する。
海側を背中にして、ヘリは内陸部へと飛行してゆく。
程なくヘリは、目的地である神奈川県県警の屋上に着陸する。屋上にいた警察官の先導にて、地下駐車場の覆面パトカーの、助手席と後部座席に乗り込む永井家の3人。
赤色灯を回しながらすぐさま目的地まで車が向かう。
「ここって、ホントに近未来感あるよな?」
みなとみらいの街並みを見ながら、ミサオがつぶやく。
覆面パトカーの後部座席にクミコと獣人モードのジョロ。
助手席にはミサオという位置。
「これがお出かけなら楽しいんだけどね・・・。」
流れる景色の中でクミコが言う。
ドライブ気分に浸る間も無く、覆面パトカーは事案発生現場へと到着する。高層ビル建築中の場所。フェンスで中がうかがえない状態でも、中での怒声や、何かしらの金属音が聞こえる。
「近藤二尉ご苦労様!状況は?」
車から降りた永井家が、建築現場前を封鎖する警官や自衛隊員の中に見知った顔を見つけ、駆け寄り尋ねる。
「ミサオ二尉!・・・今は、鈴木家と池田家が中でunknownの制圧行動に出ている。ただunknownは3体。制圧までには・・・。」
「状況は確認した。中に入るよ?」
ミサオは早速3人で、警察官に封鎖されている入り口を通ろうとする。
「了解。コジマル二尉も侵入後、いきなり戦闘に移行する可能性が大です。クミコ二尉もお気を付けて!おい!道をあけろ!」
黄色いテープで封鎖された入り口に、空間が作られる。
「これより永井家、unknown制圧行動を開始する!」
入り口にて、皆に敬礼してから、永井家の3人は現場へと侵入を開始する。
中に入った直後。
「舐めるにゃ!」
「気を付けて!マイヒメ!」
「俺の娘に何すんだ!」
永井家の前方右側で、制圧行動に出ている家族の姿が目に飛び込んでくる。相対しているのは、バッファローの様な頭の2足歩行unknown。
「今、にゃって言ったよな?猫なのか?それでにゃって言うのか?」
初めての獣人家族の動きにミサオは一瞬釘付けとなっていた。
「パピ!じゃなかったミサオ二尉、発砲許可承認!早く!」
「お、わりぃ!クミコ二尉、発砲許可承認!コジマル二尉、相手は3匹居るからな!周り良く見てから動けよ!」
声をかけながらも、ミサオが今度は左側に目をやると・・・。
「我が断罪の爪、受けてみろ!」
「いけ!あーくん!カバーは任せろっ!」
「あーくん!そいつの羽何とかして!ママ、それじゃ当たらないから!」
2本足でスックと立っている獣人とその両親らしき別の獣人家族チーム。
確かにペットは犬や猫だけとは限らない。
「・・・こちらは、鳥さんですか?へ~。相手も・・・頭はワシ?鷹?空中戦は、ウチだとキツいかな・・・。コイツでUnknownは2体。さてもう一体は?」
少し離れた、直置きされた鉄骨の影から光る2つの目に、ミサオが気付く。
「いやがったぜ。・・・珍しく4足歩行タイプか?豹みたいな頭にツノか!マミ!気を付けろ、ヤツ多分足早そうな感じする!そこのUnknown!動くな!動くと撃つ!」
クミコに警戒を呼びかけたミサオの予想通り、瞬時に永井家の方に走り寄って、飛びかかろうとする豹型unknown。純白の毛に覆われた大きな体躯。おでこの辺りに太く鋭い一本角。迫る姿の前に立ったジョロが角を両手でつかみ、そのまま横倒しにUnknownを地面に叩きつける。
その叩き付けたunknownにまたがり、両手の拳を交互に打ち付けるジョロ。ミサオとクミコは油断無く拳銃を構えたまま、ジョロの攻撃を見守る。
「これで・・・終わりだ!」
(メキッ!)
角を叩き折った一撃。
これが最後の一撃となったらしく、豹頭のUnknownから、モヤが湧き上がって形を成してゆく。
「お。・・・この子は、チワワみたいに見えるな。Unknownの姿とかの関連性はねぇんだな?・・・お前さんも大変だったな。虹の橋のたもとでゆっくり休みな。またどっかで会えるといいな・・・。」
ミサオが優しく声を掛ける。
「もう苦しませる者は居ないわよ。安心して。」
「これまで出会った家族達を待つのか、新たな家族と出会う旅を選ぶのかは君次第だけど、今はゆっくり向こうで休みなよ!焦らずに、ゆっくりね!」
クミコとジョロも思いを伝える。
永井家の目の前に見える、透けた状態のチワワに似た犬の姿の魂。
(キャウ~ン!)
遠吠えをあげて魂は光の粒子となり、天へと昇りながら消えてゆく。
「・・・切ないような、嬉しいような。いや!まだ2体残って・・・。って、いつの間にか制圧終わってんじゃん!」
ミサオが周りを確認して声をあげる。
「さすがマイヒメ!お前は器量も技量も世界一だなおい!」
「お父さん、当たり前でしょ?ウチの子なんだから。ね?マイヒメ?」
「にゃっ!父さんも母さんもありがとにゃっ!」
猫系獣人の家族の方ももしっかりUnknownを制圧完了し、力の抜けた会話を交わしている。
「麗しき家族の絆だなおい!」
ミサオは猫耳獣人家族の会話に思わず突っ込む。
そしてその猫系獣人家族の逆側では。
「パパ、ママ。ケガはない?」
「何言ってんだ!お前こそ、引っかかれてたろアイツに。平気なのか?」
「そうよ?パパあそこで撃たないから・・・。」
「いや、空向けては、あーくんに当たりでもしたら危ないだろ?あーくん、ゴメンね?本当に平気かい?お前は大事な息子なんだからな!」
「心配性だな、二人共!」
こちらの鳥系獣人の家族も、先程の家族と会話の内容に大差が無い。
「・・・なんだろうなぁ。モヤモヤする。・・・結局、何?ここは親馬鹿の集まりか?緊張感失せるわぁ、この会話。」
ミサオが肩を落とす。自らを顧みずに。
2つの家族の様子を見て、自分を棚に上げてため息をつくミサオに、声が届く。
「・・・どうも!永井・・・さん御一家ですか?どうも、鈴木です。」
先程の猫ちゃん家族の父親が挨拶に来る。
「あ、どうもお疲れ様です!鈴木・・・二尉でいらっしゃいますか?自分は・・・。」
ミサオはスマホからの事前情報を思い出しながら挨拶を返す。
「いやいや、そんな堅っ苦しい文言、現場で誰も言ってませんよ?真面目ですね永井さんは。」
「へ?」
鈴木家のパパさんに意外な言葉を告げられて固まるミサオ。
「・・・こちらが新戦力の永井家の皆さんですか。息子さん、お強いですねぇ!あ、どうも池田です!この子がウチのあーくんで、こっちが妻のより子です。鈴木さん!相変わらずマイヒメちゃん可愛いですね!」
「それほどでも・・・あーくんも空では敵う者無しですもんね!いや、素晴らしい!」
永井家そっちのけで、両家の褒め合いが始まる。
「・・・えと、部隊の訓練の意味は?一所懸命に小難しい言い回し覚えたのに・・・。」
「今、制圧行動してたのよね?何?このほのぼの子供自慢の空気?」
凹むミサオのそばに来たクミコも戸惑ってしまう。
「おい!君がコジマルくんかい?初めまして!私の名はアスカ。池田アスカ。一応セキセイインコからの獣人になる。宜しく。」
鳥系獣人の男の子(?)がジョロに声を掛けてくる。
「あ、初めまして!僕は永井コジマル!トイ・プーだよ!でも、僕の事はジョロって呼んで!あ~くんで良いよね?で、そっちの君は?」
そばに来た猫系獣人の女の子(?)に自分から声を掛けるジョロ。
「にゃっ!アタシは鈴木マイヒメ!元々はスコティッシュフィールドにゃ!あ~くんもアタシもジョロより先輩だから、何でも聞くにゃっ!」
「うん!わからない事教えてね!それじゃあねぇ、戦闘の時・・・。」
それぞれの家族の子供達は、早くも仲良くなりそうな気配。
「マミ?ジョロにお友達出来たのかな?猫ちゃんとセキセイインコくん。良かった良かった。・・・って、このカオスな状況何?」
「ん~~?まぁジョロが笑顔ならヨシ!」
ミサオの常識的な疑問を、クミコはまたもや、ジョロ絡み全肯定モードでぶっちぎる。
「ヨシじゃねぇって!ダメだこれ!ちょっと近藤二尉!近藤さ~ん!何とかしてよこれ!」
この日、永井家初の他家族との共同作戦は、無事完了となる。
ジョロに新しい友達が出来るというおまけつきで。
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貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
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