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第14話 交わる魂──未知との邂逅、その先で
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永井家は又ドアを開けて、階段へ。
確認をしながら地下3階の扉へとたどり着く。ミサオが地下2階の時と同じ動きを指示しようとする所をコジマルが左手で止める。
「ここは一体しかいない。・・・でも、これまでと違う。この感じ、僕も知らない。でも、行かなきゃ・・・。」
そう言うとコジマルが不用意にドアを開ける。
「おいジョロ、あぶ・・・マミ!右カバー!H-FORCE(エイチ・フォース)!動く・・・な・・・。」
中に進んだコジマルをフォローしようと仕方なく動いたミサオ。
コジマルの隣で銃を構えるミサオの前に見えた異形。
4本の足で立ち、その大きさは廊下の天井に迫る高さ。
黒い毛で覆われた身体。
頭とおぼしき場所には・・・。
顔半分が犬と思われる形。もう半分が・・・黒ずんだ人間の顔が、溶けかかったような姿をしていた。
「どうしたの?パピ?ジョロ?」
後ろを警戒してくれていたクミコの声。
「・・・いや、マミ。ありゃ、unknownなのか?俺の目の錯覚か?」
ミサオも目の前の敵と思われるものの姿を、理解しきれていない。
「どうしたの!しっかりし・・・何、あれ。」
振り返ってミサオを叱咤しようとしたクミコも、その姿を目にして呆然とする。
「こんなの初めてだよ。コイツの中の魂、ワンコの他に何かいる。」
コジマルがつぶやく。
「一つだけじゃないって事か。・・・あの顔みたいなやつ、あれ、人っぽいよな?マミ。」
「やっぱりそう見える?・・・でも、状況は変わらない!そのまま動かないで!話を聞いて!」
「グ・・・・グギ・・・。」
(違う!・・・ここは・・・この子・・・助け・・・。)
「おい!今の・・・。」
「あたしも聞こえた。・・・人間なの?」
unknownのうめきに重なり響いた微かな言葉。
ミサオとクミコにもそれはキャッチ出来た。
「コイツも囚われてる。・・・ワンコだけじゃなく、この魂、人だったんだね・・・。ひどい。」
コジマルの顔に珍しく、怒りが現れる。口元に犬歯が見える。
「ウ~ッ、バウッ!バウバウバウッ!」
「ジョロ!落ち着け!マミ、撃つぞ!」
(タタン。タンタンタン!)
ミサオとクミコから発射された対unknown用特殊弾。
(キ・・・キキン。カラカラ・・・。)
放った弾のいくつかは当たっている。が、その弾は致命傷になる事なく、床へと落ちて転がっている。
「パピ・・・コイツはぼ・・・グフッ!」
コジマルが話す途中にunknownのいきなりのアタック!
(グワッシャーーーン!バキッメキッ!)
廊下の右側の研究室と思われる場所にそのまま飛び込んでゆく異形とコジマル。
「ジョロ!パピ!カバー!」
一足早くそこに飛び込むクミコ。
「他、オールクリア!ジョロ!」
ミサオも一歩遅れてその場に侵入する。
「いった・・・強いな、お前。」
グシャグシャになった室内。
身体についた瓦礫を払いながら立ち上がるコジマル。
「げほっ!マミ、口元覆え!ゴホッ、ホコリ苦しくなるぞ。何扱ってた部屋か分からん!・・・コイツ、ジョロに向かって何やってくれた?あ?」
「パピ!冷静に!」
「だってコイツよ~、ウチの息子にケガぁさせようとしたぜ?・・・俺ぁ、頭きた。・・・逝けよ。」
unknownに向かい、予備に持っていた特殊拳銃も握り、2丁の拳銃の全弾を撃つミサオ。
(タタンタタン!タン、タン!タタン!タン!・・・。キキン、コロコロコロコロ。)
「上等だコラ。ウチの息子なめくさって、俺がやってやんよ!」
「パピ、冷静に!拳銃効かない相手でしょ!素手で何出来んの!」
血が昇ったミサオを必死で引き止めるクミコ。
「パピ、まだケガしてないよ。ありがとう。・・・でもね、コイツは僕が相手しなきゃ。」
ミサオの前を塞ぐ形で立つコジマル。
「お前・・・。スマン。マミ、ごめん。弾補充、するわ。」
冷静さを取り戻し、2人に謝るミサオ。
unknownも又、コジマルに向かって歩み寄ろうとする。
「ジョロ、俺達は悔しいけど、アイツを倒せそうもない。だからお前に託す。・・・俺達は出来る事するから、頼む。・・・でも、無理なら、みんなで逃げような?」
「パピ、またバカ言ってる。逃げる気なんかないのに。・・・でも、アイツ倒さないと、中の子が、ね?・・・行くよ!ワオ~~~ッ!」
叫びながらunknownにタックルするコジマル。
「マミ!額、目、関節!弱そうなとこ狙おう!」
「了解!例のやつは?」
「タイミング見て、だな!マミ、一旦廊下へ出るぞ!」
unknownとコジマルの動きで室内は崩れてゆく。
「クギャ~~ス!」
(・・・お願い・・・この子・・・暗い・・・。)
unknownの叫びと共に聞こえた微かな声。
それ共に、胸の一点が赤く光る。
「マミ!」
「確認!・・・でも、あの場所でいいの?」
「多分・・・な。あの声の主が、無理して教えてくれたんだろ?間違ってたらこの状況が続くだけ。使うぞ、あれ。ジョロ!合図したら、練習したやつ!」
「う・・・ん。」
unknownの身体を抑えつけながらも返事をするコジマル。
「よし!マミ!全弾撃ち尽くせっ!」
「了解!カバー任せて!」
クミコがやはり2丁拳銃でunknown目掛けて弾を打ち込む。
「ジョロ、やるぞ!3!2!」
「1!耳!」
クミコの発砲に合わせて距離を開けたコジマルに、ミサオからの合図。
耳を抑え、口を開け、その場にしゃがんで目をつぶるコジマル。
「喰らえ!マミ、耳!」
ミサオがunknownに向けて何かを投げる。
(・・・カン、カンカン。・・・コロコロコロ。ドッガ~~~~ン!)
スタングレネード(閃光手榴弾)。
unknownの嫌がると思われる音も出るような仕様らしい。
「!・・・ヴォ~~ッ!ガ・・・グッ!」
まともに光と音を浴びて苦悶の仕草となるunknown。
「今だ!」
「ワオ~~~!」
ミサオの言葉でunknownに突っ込むコジマル。
引いた右手を思い切りunknownに突き込む!
「なんで!なんで、魂を、捕まえるんだよ!お前!」
交互に拳を突き込みながらも叫ぶコジマル。
「悲しい、だけ、だろ!誰も、笑顔に、なれない、じゃんか!バカ~~~~ッ!」
コジマルの連打。
(ピシ・・・・ピキッ。ピキピキッ。メキッ。ベキッドゴッ!)
「はぁ、はあ、はあ。誰も、幸せに、なれないじゃんか、はぁ、はあ、はぁ・・・。」
肩で息をするコジマルの前に倒れたunknown。
「ジョロ・・・あ!」
クミコの言葉の直後、unknownの身体の上に、光が2つ現れる。
「・・・可愛いな、ティーカッププードルか?そっちは・・・やっはり人の魂ってか。」
2つの光が合わさって見せた姿。若い男性が、小さなワンコを抱いている。
「うん。・・・え?・・・そう、なんだ。いや、お兄さんのせいじゃないよ?僕は平気。君もお兄さんと会えて良かったね。うん、任せて。ウチの家族は世界一最強だから!・・・また、会おうね?お兄さんと君と、優しい仲間達の待つ場所へ。またね!」
光は粒子となり、天へと昇り、消えてゆく。
「お疲れさんジョロ。」
「・・・ホコリだらけね?ほら、マミに背中見せて。」
ミサオがねぎらい、クミコが背中のホコリをはたく。
「パピ?マミ?・・・僕、この家の子で良かった。」
笑顔で言うコジマル。
「どした?いきなり当たり前の事言って、まさか頭でも・・・マミ!」
「あんたね、せっかくのジョロの言葉台無しよ!今日帰ってもビール無し!」
「いやそれ唯一の楽しみじゃん?謝るよ。ジョロもマミもごめんて。家族で晩酌。これ無かったら、俺持たんて!」
やいのやいの言いながらも、無事制圧を完了した永井家。
時は少し進んだある日。
「で・・・私達は、何故ここにいるのでしょうか?完結に述べよ。」
無表情で言うクミコ。
「いや、俺も未だに良く分からんて!あん時、本部寄って状況報告したじゃんか?そしたら海外でも似た事案発生したらしいって、マミも聞いたよな?ほしたら、なんか応援だか何だかって話出て・・・今に至る。」
「タイガに会えるんでしょ?た~のしみ~!」
永井家夫婦の会話をよそに、1人ハイテンションのコジマル。
「・・・なんか、FBIだけじゃないっぽいぞ向こうじゃ。多分CIAとか。」
「CIA!ジャックなんちゃらシリーズとか!」
ミサオの言葉に盛り上がるクミコ。
「いや、そんなカッコ良いの、そんなに居ないと思うよ俺。地味~で、もっとドロドロした感じの・・・。」
「やめて!人の夢壊すの!ホントデリカシー無いんだから!ね、ジョロ?」
「いや、俺は現実をだな?・・・あ!そろそろ搭乗だ!忘れもん平気か?ジョロ、パスポート!」
「平気だよ。もう5度目だよそれ?・・・みんなも任務だから来てないけど、また会えるよね?」
「当たり前だろ?みんなある意味親戚みたいなもんだ。それぞれの場所で出来る事をする。時間が出来ればいつでも会える。」
「・・・いずれは、任務なんて無くなって、毎日お友達と遊べるわよ、きっと。」
ミサオとクミコが笑顔でコジマルに言う。
「そうだね、そうだよね!世界中に、友達居るんだよね?まだ会えてない友達。1日でも早く、遊びたい。」
「そうだな。・・・その為の、今日。・・・マミ、ジョロ。行こう。初の家族旅行だ。」
「これが本当のバカンスなら、最高なんだけどね?」
「飛行機初めてだもんね、民間のは。」
「ワイワイ言いなさんな、二人共。どうせ、どこに行っても変わらんよ。ウチの家族は。」
ミサオ。クミコ。コジマル。3人の家族は手をつないで、搭乗する飛行機へと歩いていった。
ーーーーーーーーーーーー
あとがき:
これまで読んでくださったすべての方へ──
本当に、ありがとうございました。
『家族で国家機密──うちの犬がしゃべった、その先で』は、最初は“しゃべる犬と家族”という驚きと温かさから始まりました。けれどこの物語は、ただの非日常では終わらず、「誰かを想い、誰かを救う」という、ごく当たり前で、だからこそ強く尊い感情を描く旅でもありました。
unknown──未知なる敵。その脅威に、ただ武力で対抗するのではなく、魂の声に耳を傾け、救い、共に歩む選択肢を見出そうとした永井家の姿。
最後に描いたのは、“ワンコと人間、2つの魂が1つの異形に囚われた”という、かつてない存在との邂逅でした。
ジョロ──コジマルの叫びは、誰かを想う心がいかに純粋で、強く、優しいかを、静かに、でも確かに証明してくれたと信じています。
そして今、永井家は「世界へ」と向かいます。
それは決して終わりではなく、守る範囲が“家族の周り”から“まだ見ぬ友達”へ広がっていくという、新たな一歩でもあります。
この短編を通して、あなたが少しでもあたたかさを感じてくださったなら。
そして、どこかで「誰かの声」を想い出してくれたなら。
この物語を書いた意味が、そこにあります。
いつも感想、ハート、お気に入り、本当にありがとうございました。
永井家の物語を、心から愛してくださったあなたに──
ジョロと一緒に、心からの「ありがとう」を。
またどこかでお会いしましょう。
確認をしながら地下3階の扉へとたどり着く。ミサオが地下2階の時と同じ動きを指示しようとする所をコジマルが左手で止める。
「ここは一体しかいない。・・・でも、これまでと違う。この感じ、僕も知らない。でも、行かなきゃ・・・。」
そう言うとコジマルが不用意にドアを開ける。
「おいジョロ、あぶ・・・マミ!右カバー!H-FORCE(エイチ・フォース)!動く・・・な・・・。」
中に進んだコジマルをフォローしようと仕方なく動いたミサオ。
コジマルの隣で銃を構えるミサオの前に見えた異形。
4本の足で立ち、その大きさは廊下の天井に迫る高さ。
黒い毛で覆われた身体。
頭とおぼしき場所には・・・。
顔半分が犬と思われる形。もう半分が・・・黒ずんだ人間の顔が、溶けかかったような姿をしていた。
「どうしたの?パピ?ジョロ?」
後ろを警戒してくれていたクミコの声。
「・・・いや、マミ。ありゃ、unknownなのか?俺の目の錯覚か?」
ミサオも目の前の敵と思われるものの姿を、理解しきれていない。
「どうしたの!しっかりし・・・何、あれ。」
振り返ってミサオを叱咤しようとしたクミコも、その姿を目にして呆然とする。
「こんなの初めてだよ。コイツの中の魂、ワンコの他に何かいる。」
コジマルがつぶやく。
「一つだけじゃないって事か。・・・あの顔みたいなやつ、あれ、人っぽいよな?マミ。」
「やっぱりそう見える?・・・でも、状況は変わらない!そのまま動かないで!話を聞いて!」
「グ・・・・グギ・・・。」
(違う!・・・ここは・・・この子・・・助け・・・。)
「おい!今の・・・。」
「あたしも聞こえた。・・・人間なの?」
unknownのうめきに重なり響いた微かな言葉。
ミサオとクミコにもそれはキャッチ出来た。
「コイツも囚われてる。・・・ワンコだけじゃなく、この魂、人だったんだね・・・。ひどい。」
コジマルの顔に珍しく、怒りが現れる。口元に犬歯が見える。
「ウ~ッ、バウッ!バウバウバウッ!」
「ジョロ!落ち着け!マミ、撃つぞ!」
(タタン。タンタンタン!)
ミサオとクミコから発射された対unknown用特殊弾。
(キ・・・キキン。カラカラ・・・。)
放った弾のいくつかは当たっている。が、その弾は致命傷になる事なく、床へと落ちて転がっている。
「パピ・・・コイツはぼ・・・グフッ!」
コジマルが話す途中にunknownのいきなりのアタック!
(グワッシャーーーン!バキッメキッ!)
廊下の右側の研究室と思われる場所にそのまま飛び込んでゆく異形とコジマル。
「ジョロ!パピ!カバー!」
一足早くそこに飛び込むクミコ。
「他、オールクリア!ジョロ!」
ミサオも一歩遅れてその場に侵入する。
「いった・・・強いな、お前。」
グシャグシャになった室内。
身体についた瓦礫を払いながら立ち上がるコジマル。
「げほっ!マミ、口元覆え!ゴホッ、ホコリ苦しくなるぞ。何扱ってた部屋か分からん!・・・コイツ、ジョロに向かって何やってくれた?あ?」
「パピ!冷静に!」
「だってコイツよ~、ウチの息子にケガぁさせようとしたぜ?・・・俺ぁ、頭きた。・・・逝けよ。」
unknownに向かい、予備に持っていた特殊拳銃も握り、2丁の拳銃の全弾を撃つミサオ。
(タタンタタン!タン、タン!タタン!タン!・・・。キキン、コロコロコロコロ。)
「上等だコラ。ウチの息子なめくさって、俺がやってやんよ!」
「パピ、冷静に!拳銃効かない相手でしょ!素手で何出来んの!」
血が昇ったミサオを必死で引き止めるクミコ。
「パピ、まだケガしてないよ。ありがとう。・・・でもね、コイツは僕が相手しなきゃ。」
ミサオの前を塞ぐ形で立つコジマル。
「お前・・・。スマン。マミ、ごめん。弾補充、するわ。」
冷静さを取り戻し、2人に謝るミサオ。
unknownも又、コジマルに向かって歩み寄ろうとする。
「ジョロ、俺達は悔しいけど、アイツを倒せそうもない。だからお前に託す。・・・俺達は出来る事するから、頼む。・・・でも、無理なら、みんなで逃げような?」
「パピ、またバカ言ってる。逃げる気なんかないのに。・・・でも、アイツ倒さないと、中の子が、ね?・・・行くよ!ワオ~~~ッ!」
叫びながらunknownにタックルするコジマル。
「マミ!額、目、関節!弱そうなとこ狙おう!」
「了解!例のやつは?」
「タイミング見て、だな!マミ、一旦廊下へ出るぞ!」
unknownとコジマルの動きで室内は崩れてゆく。
「クギャ~~ス!」
(・・・お願い・・・この子・・・暗い・・・。)
unknownの叫びと共に聞こえた微かな声。
それ共に、胸の一点が赤く光る。
「マミ!」
「確認!・・・でも、あの場所でいいの?」
「多分・・・な。あの声の主が、無理して教えてくれたんだろ?間違ってたらこの状況が続くだけ。使うぞ、あれ。ジョロ!合図したら、練習したやつ!」
「う・・・ん。」
unknownの身体を抑えつけながらも返事をするコジマル。
「よし!マミ!全弾撃ち尽くせっ!」
「了解!カバー任せて!」
クミコがやはり2丁拳銃でunknown目掛けて弾を打ち込む。
「ジョロ、やるぞ!3!2!」
「1!耳!」
クミコの発砲に合わせて距離を開けたコジマルに、ミサオからの合図。
耳を抑え、口を開け、その場にしゃがんで目をつぶるコジマル。
「喰らえ!マミ、耳!」
ミサオがunknownに向けて何かを投げる。
(・・・カン、カンカン。・・・コロコロコロ。ドッガ~~~~ン!)
スタングレネード(閃光手榴弾)。
unknownの嫌がると思われる音も出るような仕様らしい。
「!・・・ヴォ~~ッ!ガ・・・グッ!」
まともに光と音を浴びて苦悶の仕草となるunknown。
「今だ!」
「ワオ~~~!」
ミサオの言葉でunknownに突っ込むコジマル。
引いた右手を思い切りunknownに突き込む!
「なんで!なんで、魂を、捕まえるんだよ!お前!」
交互に拳を突き込みながらも叫ぶコジマル。
「悲しい、だけ、だろ!誰も、笑顔に、なれない、じゃんか!バカ~~~~ッ!」
コジマルの連打。
(ピシ・・・・ピキッ。ピキピキッ。メキッ。ベキッドゴッ!)
「はぁ、はあ、はあ。誰も、幸せに、なれないじゃんか、はぁ、はあ、はぁ・・・。」
肩で息をするコジマルの前に倒れたunknown。
「ジョロ・・・あ!」
クミコの言葉の直後、unknownの身体の上に、光が2つ現れる。
「・・・可愛いな、ティーカッププードルか?そっちは・・・やっはり人の魂ってか。」
2つの光が合わさって見せた姿。若い男性が、小さなワンコを抱いている。
「うん。・・・え?・・・そう、なんだ。いや、お兄さんのせいじゃないよ?僕は平気。君もお兄さんと会えて良かったね。うん、任せて。ウチの家族は世界一最強だから!・・・また、会おうね?お兄さんと君と、優しい仲間達の待つ場所へ。またね!」
光は粒子となり、天へと昇り、消えてゆく。
「お疲れさんジョロ。」
「・・・ホコリだらけね?ほら、マミに背中見せて。」
ミサオがねぎらい、クミコが背中のホコリをはたく。
「パピ?マミ?・・・僕、この家の子で良かった。」
笑顔で言うコジマル。
「どした?いきなり当たり前の事言って、まさか頭でも・・・マミ!」
「あんたね、せっかくのジョロの言葉台無しよ!今日帰ってもビール無し!」
「いやそれ唯一の楽しみじゃん?謝るよ。ジョロもマミもごめんて。家族で晩酌。これ無かったら、俺持たんて!」
やいのやいの言いながらも、無事制圧を完了した永井家。
時は少し進んだある日。
「で・・・私達は、何故ここにいるのでしょうか?完結に述べよ。」
無表情で言うクミコ。
「いや、俺も未だに良く分からんて!あん時、本部寄って状況報告したじゃんか?そしたら海外でも似た事案発生したらしいって、マミも聞いたよな?ほしたら、なんか応援だか何だかって話出て・・・今に至る。」
「タイガに会えるんでしょ?た~のしみ~!」
永井家夫婦の会話をよそに、1人ハイテンションのコジマル。
「・・・なんか、FBIだけじゃないっぽいぞ向こうじゃ。多分CIAとか。」
「CIA!ジャックなんちゃらシリーズとか!」
ミサオの言葉に盛り上がるクミコ。
「いや、そんなカッコ良いの、そんなに居ないと思うよ俺。地味~で、もっとドロドロした感じの・・・。」
「やめて!人の夢壊すの!ホントデリカシー無いんだから!ね、ジョロ?」
「いや、俺は現実をだな?・・・あ!そろそろ搭乗だ!忘れもん平気か?ジョロ、パスポート!」
「平気だよ。もう5度目だよそれ?・・・みんなも任務だから来てないけど、また会えるよね?」
「当たり前だろ?みんなある意味親戚みたいなもんだ。それぞれの場所で出来る事をする。時間が出来ればいつでも会える。」
「・・・いずれは、任務なんて無くなって、毎日お友達と遊べるわよ、きっと。」
ミサオとクミコが笑顔でコジマルに言う。
「そうだね、そうだよね!世界中に、友達居るんだよね?まだ会えてない友達。1日でも早く、遊びたい。」
「そうだな。・・・その為の、今日。・・・マミ、ジョロ。行こう。初の家族旅行だ。」
「これが本当のバカンスなら、最高なんだけどね?」
「飛行機初めてだもんね、民間のは。」
「ワイワイ言いなさんな、二人共。どうせ、どこに行っても変わらんよ。ウチの家族は。」
ミサオ。クミコ。コジマル。3人の家族は手をつないで、搭乗する飛行機へと歩いていった。
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あとがき:
これまで読んでくださったすべての方へ──
本当に、ありがとうございました。
『家族で国家機密──うちの犬がしゃべった、その先で』は、最初は“しゃべる犬と家族”という驚きと温かさから始まりました。けれどこの物語は、ただの非日常では終わらず、「誰かを想い、誰かを救う」という、ごく当たり前で、だからこそ強く尊い感情を描く旅でもありました。
unknown──未知なる敵。その脅威に、ただ武力で対抗するのではなく、魂の声に耳を傾け、救い、共に歩む選択肢を見出そうとした永井家の姿。
最後に描いたのは、“ワンコと人間、2つの魂が1つの異形に囚われた”という、かつてない存在との邂逅でした。
ジョロ──コジマルの叫びは、誰かを想う心がいかに純粋で、強く、優しいかを、静かに、でも確かに証明してくれたと信じています。
そして今、永井家は「世界へ」と向かいます。
それは決して終わりではなく、守る範囲が“家族の周り”から“まだ見ぬ友達”へ広がっていくという、新たな一歩でもあります。
この短編を通して、あなたが少しでもあたたかさを感じてくださったなら。
そして、どこかで「誰かの声」を想い出してくれたなら。
この物語を書いた意味が、そこにあります。
いつも感想、ハート、お気に入り、本当にありがとうございました。
永井家の物語を、心から愛してくださったあなたに──
ジョロと一緒に、心からの「ありがとう」を。
またどこかでお会いしましょう。
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ー武者小路参丸ー