103 / 340
第18章
異世界のお姫様抱っこはほわほわです(5)
しおりを挟む
金髪の小姓はうんうん、と何度もフレドリックくんの言葉に頷いている。
オレもフレドリックくんの推察は間違っていないと思った。
「リニーくん、くれぐれも、ドリアには、変な誤解と期待はさせないように、細心のの注意を払って伝えてくれよな?」
「難しいですが、努力いたします」
うん。とっても難しいだろうが、がんばってもらわねばならないだろう。
大人が子どもに難問を丸投げするっていうのもどうかと思うけど、やる気満々で寝室から退出するリニー少年に、オレは心からのエールを送った。
しばらく寝台の中でおとなしく待っていると、ひと仕事を終えたリニー少年が戻ってくる。すっきりした、いい表情をしていた。
うまく話がまとまったのだろう。
というか、もっと時間がかかるものだと思っていたのだけど、戻りの速さにオレは内心で驚いていた。
また『宰相の息子』権限を使って、お父さんの仕事中にずかずかと割り込んでいったにちがいない。
「勇者様のご意向は、父にしっかりと伝えておきました」
リニー少年が頬を上気させながら、誇らしげに報告する。
その姿は年相応に見えて、なんだか微笑ましい。
お父さんのことをとっても信頼しているのだろう。悪いようには絶対にならない、と信じきっているよ。
オレはいまいち、宰相サンは信じてないけどね。
「近衛騎士たちの間では、殿下の集中力の限界を感じ取っていたようで、本日、勇者様に……励ましのお言葉……を賜りたいと願い出る予定だったそうです」
ナイスタイミング、というか、もしかして、お互いの利益が一致した……のか?
リニー少年の奇妙な『間』からは、言葉以上の行為を求められていそうな気もしないではないけど、ここはしれっと気づかないフリだろう。
とりあえず、オレは今晩、王太子に禁書庫の鍵を優しく返却し、「国葬終了までがんばってね!」って応援することとなった。
ドリア王太子には、リニー少年ではなく、彼の父親の宰相サンが、王太子が所在不明になっても問題ないタイミングを見計らって、用件を伝えてくれるそうだ。
リニー少年のお父さんは、余計なことをついでに企みそうで、イマイチ信じられないヒトだけど、ここは宰相サンに任すしかないよね。
オレの叱咤激励で、ドリア王太子をやる気にさせて、宰相サンと近衛騎士へ『貸し』を作るのも悪くはないだろう。
うん。コストが安くて、威力効果のある『恩』は、売れるときに高値で売っておくに限る。
魔王としてだが、三十六回、オレも一国の頂点に立ち、国を治め、民を導いてきた身だよ。
経験豊かな先輩として、後輩を指導教育するのもアリだろう。
オレもフレドリックくんの推察は間違っていないと思った。
「リニーくん、くれぐれも、ドリアには、変な誤解と期待はさせないように、細心のの注意を払って伝えてくれよな?」
「難しいですが、努力いたします」
うん。とっても難しいだろうが、がんばってもらわねばならないだろう。
大人が子どもに難問を丸投げするっていうのもどうかと思うけど、やる気満々で寝室から退出するリニー少年に、オレは心からのエールを送った。
しばらく寝台の中でおとなしく待っていると、ひと仕事を終えたリニー少年が戻ってくる。すっきりした、いい表情をしていた。
うまく話がまとまったのだろう。
というか、もっと時間がかかるものだと思っていたのだけど、戻りの速さにオレは内心で驚いていた。
また『宰相の息子』権限を使って、お父さんの仕事中にずかずかと割り込んでいったにちがいない。
「勇者様のご意向は、父にしっかりと伝えておきました」
リニー少年が頬を上気させながら、誇らしげに報告する。
その姿は年相応に見えて、なんだか微笑ましい。
お父さんのことをとっても信頼しているのだろう。悪いようには絶対にならない、と信じきっているよ。
オレはいまいち、宰相サンは信じてないけどね。
「近衛騎士たちの間では、殿下の集中力の限界を感じ取っていたようで、本日、勇者様に……励ましのお言葉……を賜りたいと願い出る予定だったそうです」
ナイスタイミング、というか、もしかして、お互いの利益が一致した……のか?
リニー少年の奇妙な『間』からは、言葉以上の行為を求められていそうな気もしないではないけど、ここはしれっと気づかないフリだろう。
とりあえず、オレは今晩、王太子に禁書庫の鍵を優しく返却し、「国葬終了までがんばってね!」って応援することとなった。
ドリア王太子には、リニー少年ではなく、彼の父親の宰相サンが、王太子が所在不明になっても問題ないタイミングを見計らって、用件を伝えてくれるそうだ。
リニー少年のお父さんは、余計なことをついでに企みそうで、イマイチ信じられないヒトだけど、ここは宰相サンに任すしかないよね。
オレの叱咤激励で、ドリア王太子をやる気にさせて、宰相サンと近衛騎士へ『貸し』を作るのも悪くはないだろう。
うん。コストが安くて、威力効果のある『恩』は、売れるときに高値で売っておくに限る。
魔王としてだが、三十六回、オレも一国の頂点に立ち、国を治め、民を導いてきた身だよ。
経験豊かな先輩として、後輩を指導教育するのもアリだろう。
11
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる