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第49章
異世界の書類は間違いだらけです(8)
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(け、消される……? 家族まとめて?)
なんとも物騒な響きだ。
いや、一族郎党とか末代までとかならないのは、騎士団長サンなりの優しさなのかもしれない。
「それに、勇者様の大切なモノに手をだそうと考える不埒な輩には、わたくしが、ラグナークス家の総力をもってして、社会的に抹殺します。死よりも悲惨な目にあわせて、二度と太陽は拝めないようにいたしますので、ご安心ください」
(いやいやいやいやいや! ちょっと待て! リニーくん!)
そんな、「今日のお茶菓子は勇者様のお好きなケーキですよ」と言うのと変わらない顔で、そんな物騒なセリフを吐いちゃだめだ!
怖い。怖すぎるよ!
宰相家がやっぱり一番怖すぎるよ!
きみは純真無垢な慈愛の天使でいてくれ!
****
恐ろしげなやりとりはあったものの、フレドリックくんの宣言どおり、オレたちは夜中で仕事を切り上げると、さっさとそれぞれの部屋に戻った。
まあ、適度な休息を挟む方が、仕事の効率もあがるからね。
宰相サンの命令で拘束され続けている書記官たちにも自由な時間は必要だろう。
王太子の仕事を補佐、いや、監視するよう命を受けた書記官たちはとても優秀だった。
だって、あの宰相サンが目に止め、直属の部下としていいようにこき使っているのだから、優秀に決まっている。
将来、この中から副宰相や補佐官などが誕生するのだろう。
でも、だからといって、連日不眠不休で働くことができるわけではない。
勇者世界のシャチクじゃないからな。
ドリアの執務室から退出し、廊下を歩いていく書記官たちは「ありがたい、ようやく家に帰れる」「放置状態になっている観葉植物が枯れていないか心配だ」とか、「やっと産まれた子に会える」とか、口々に呟いていた。
ドリアはというと、疲れ切ってバタンキューだったらしいが、オレは……。
アレだ。それだ。うん。ソレだ。
一日中、ドリアと一緒にいたのに特になにもなかった鬱憤をはらすため。
さらには、すっかり習慣になってしまった『ずっとステータス十倍がけの魔法維持』で消費してしまった魔力を補うためにだなあ……。
毎晩、空の色がうっすらと明るくなる頃までフレドリックくんとしっかりやっちゃって、お互いしっかりと抱き合って、起床時間まで熟睡する……。
という、なかなかに充実した毎日を過ごしたのである。
異世界でこんな毎日を送るなんて、全く想像もしてなかったよ。
びっくりだ。
女神アナスティミアはさぞかしお喜びのことだろうね。
ドリアの執務を手伝って「久々に働いたゾ」という充実感に満たされ、オレの機嫌はすこぶるよい。
ずいぶんインドア派な勇者だ。
それと、夜は夜で大好きなフレドリックくんとまあ……あれなわけで、体調も魔力の状態も非常によろしい。
ぶっちゃけやる気がみなぎっているので、これはもう……オレの世界に戻る魔法陣の研究しかないだろう、という気持ちになっていた。
やっぱりインドア派だな。
パンがなければ、ケーキをつくる。魔術に関する資料がなければ、自分で資料を作ればいいだけだ。
歴代勇者の中にも、既成の物語に納得できずに、自分でせっせと薄い本を作っていたやつもいた。
そうだ。オレもそうすればいいんだ。
なければ自分で作る!
横着なんかせずに、王城の書庫にある初級、中級の一般的な魔法の勉強からはじめようではないか。
時間はたっぷりあるんだからな。
「今日くらいはゆっくりされてもいいのに……」
と、フレドリックくんとリニー少年に呆れ返られたが、ゴロゴロするのにも飽きた。
なにかしていないと落ち着かない。
このままず――っと、ダラダラとした生活は……宰相サンが許してくれたとしても、オレはイヤだからね。
とはいっても、朝イチから行動するのは、フレドリックくんやリニー少年に迷惑がかかるだろう。
まずは部屋の中で、どういう手順で研究をすすめたらよいのか、ざくっと考えてみる。
脳内であーでもない、こーでもない、と、色々と検討していたら、リニー少年が遠慮がちに声をかけてきた。
なんとも物騒な響きだ。
いや、一族郎党とか末代までとかならないのは、騎士団長サンなりの優しさなのかもしれない。
「それに、勇者様の大切なモノに手をだそうと考える不埒な輩には、わたくしが、ラグナークス家の総力をもってして、社会的に抹殺します。死よりも悲惨な目にあわせて、二度と太陽は拝めないようにいたしますので、ご安心ください」
(いやいやいやいやいや! ちょっと待て! リニーくん!)
そんな、「今日のお茶菓子は勇者様のお好きなケーキですよ」と言うのと変わらない顔で、そんな物騒なセリフを吐いちゃだめだ!
怖い。怖すぎるよ!
宰相家がやっぱり一番怖すぎるよ!
きみは純真無垢な慈愛の天使でいてくれ!
****
恐ろしげなやりとりはあったものの、フレドリックくんの宣言どおり、オレたちは夜中で仕事を切り上げると、さっさとそれぞれの部屋に戻った。
まあ、適度な休息を挟む方が、仕事の効率もあがるからね。
宰相サンの命令で拘束され続けている書記官たちにも自由な時間は必要だろう。
王太子の仕事を補佐、いや、監視するよう命を受けた書記官たちはとても優秀だった。
だって、あの宰相サンが目に止め、直属の部下としていいようにこき使っているのだから、優秀に決まっている。
将来、この中から副宰相や補佐官などが誕生するのだろう。
でも、だからといって、連日不眠不休で働くことができるわけではない。
勇者世界のシャチクじゃないからな。
ドリアの執務室から退出し、廊下を歩いていく書記官たちは「ありがたい、ようやく家に帰れる」「放置状態になっている観葉植物が枯れていないか心配だ」とか、「やっと産まれた子に会える」とか、口々に呟いていた。
ドリアはというと、疲れ切ってバタンキューだったらしいが、オレは……。
アレだ。それだ。うん。ソレだ。
一日中、ドリアと一緒にいたのに特になにもなかった鬱憤をはらすため。
さらには、すっかり習慣になってしまった『ずっとステータス十倍がけの魔法維持』で消費してしまった魔力を補うためにだなあ……。
毎晩、空の色がうっすらと明るくなる頃までフレドリックくんとしっかりやっちゃって、お互いしっかりと抱き合って、起床時間まで熟睡する……。
という、なかなかに充実した毎日を過ごしたのである。
異世界でこんな毎日を送るなんて、全く想像もしてなかったよ。
びっくりだ。
女神アナスティミアはさぞかしお喜びのことだろうね。
ドリアの執務を手伝って「久々に働いたゾ」という充実感に満たされ、オレの機嫌はすこぶるよい。
ずいぶんインドア派な勇者だ。
それと、夜は夜で大好きなフレドリックくんとまあ……あれなわけで、体調も魔力の状態も非常によろしい。
ぶっちゃけやる気がみなぎっているので、これはもう……オレの世界に戻る魔法陣の研究しかないだろう、という気持ちになっていた。
やっぱりインドア派だな。
パンがなければ、ケーキをつくる。魔術に関する資料がなければ、自分で資料を作ればいいだけだ。
歴代勇者の中にも、既成の物語に納得できずに、自分でせっせと薄い本を作っていたやつもいた。
そうだ。オレもそうすればいいんだ。
なければ自分で作る!
横着なんかせずに、王城の書庫にある初級、中級の一般的な魔法の勉強からはじめようではないか。
時間はたっぷりあるんだからな。
「今日くらいはゆっくりされてもいいのに……」
と、フレドリックくんとリニー少年に呆れ返られたが、ゴロゴロするのにも飽きた。
なにかしていないと落ち着かない。
このままず――っと、ダラダラとした生活は……宰相サンが許してくれたとしても、オレはイヤだからね。
とはいっても、朝イチから行動するのは、フレドリックくんやリニー少年に迷惑がかかるだろう。
まずは部屋の中で、どういう手順で研究をすすめたらよいのか、ざくっと考えてみる。
脳内であーでもない、こーでもない、と、色々と検討していたら、リニー少年が遠慮がちに声をかけてきた。
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