例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間

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留木原 夜という人間

【とある優雅な貴族夫人】

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「子息様が倒れられたそうです」

「え、坊やが!?」

わたくしは翡翠の扇を落とし、驚愕する。

私の子供はとても美しい子であり、健康な、ちょっと大人びた愛しい子なのです。

名前はロキ・スクエア。

忌まわしい旦那様の子供とは思えないほど健全に育ちました。

ですが、私は坊やと離れて暮らしています。
本当ならば一緒に暮らしたいのですが…あの忌まわしい旦那様が坊やを手離さないのです。
離婚しようにも親権を取られてしまいますし…。

ならば旦那様と一緒に住めば良いと仰る方も居ます。
ですが、私と旦那様が一緒に居ると、旦那様は大変醜くなります。
高揚しすぎてしまい、権力を振りかざしてしまうのです。

以前幼い頃から仕えていた使用人を『色目使っているよね~?君の趣味を疑うよ~!でも一応私の妻だから~(略称)』など言い、辺境の領地へ送ろうとしたり、雪蔵を寒い中使用人達に作らせたり…。

権力を振り回す貴族はとても醜いですわ。

「奥様?」

「あら、ごめんなさい。あの忌まわしい旦那様を思い浮かべておりましたの」

今私の目の前に居るのは旦那様の周囲に潜らせている私の手下ですわ。
旦那様が浮気をしたら慰謝料と親権を奪うつもりで手に入れた手下ですのよ!

「それでなぜ坊やが倒れたのかしら?」

「旦那様が『詳しく聞きたかったら邸においで~』等と申されておりまして…」 

「貴方、旦那様の真似上手になったわね…じゃなくて!貴方は私の手下でしょう!」

「買収されたので」

「またなの!?」

「すみません。俺の値段は高いので…」

手下が拾った扇を私は強く握りしめます。
私の手下はこの方だけ。他を手に入れようとすると、すぐに旦那様が辺境の領地へ無断で送ってしまいます。
スクエア公爵家の持つ領地は辺境の土地が多いので何人でも送ってしまいますわ!

唯一許されたこの方は旦那様の幼馴染で同学院卒業の身元が保証された平民ですし!

「倍だしますわ!」

「了解いたしました奥様。俺の命・体は奥様の物です」

「記念すべき二十回目ですわ、それを聞くの」

「ボーナスはつきますか?」

「ふざけてますわね。それより、どうして坊やは倒れたの?」

「神殿へ向かう途中に倒れられました」

私は扇を広げ、近くにあった椅子に座ります。
そうすると手下は素早く紅茶を入れ、チップ(金)を求めますわ。

「そんなにあの女を治したいの?」

「まぁ…可哀想ですからね」

「よく言えますわね…。彼女、貴方を騙して皇帝を殺そうとしたのよ?」

彼女とはミリーナという少女ですわ。
私達とは同級生で、とても愚かで…愛らしい方ですわ。
ですが彼女は皇帝…現ロズワール皇帝を殺そうとしたのです。
それを庇った現カロアス公爵夫人は記憶を無くし、カロアス公爵が酷く悲しんでいたのを今でも鮮明に覚えています。
表情を変えられない彼が、唯一見せた表情でしたわ。

彼女は皇帝暗殺未遂で永久に眠らされる刑を与えられました。
それは残酷で残忍な夢を見続ける、とても非人道的な刑です。

その刑に私達はとても悲しみました。

皇帝暗殺は禁忌と言っても良いですわ!ですが…彼女がそんな事をするのは…何か意味があったと…思えてならないのです。

だから私はこの方とマリネット公爵のあの方の計画に知らないふりをするのです。

「何の意味もなく暗殺を企む女じゃないですよ、あのクソ女は…」

「そうね…」

「で、それより見舞い行きますか?」

「…切り替えが早いわね」

悲痛な顔をしていた筈ですのに、次の瞬間にはまたヘラヘラしただらしない顔に戻っていましたわ。

男性はすぐにそうやって誤魔化すから嫌ですわ!

「見舞いには行きますわ!でも…これで三回目よね?神殿の神聖魔法が苦手なのかしら?」

「子息の特殊魔法は【解除】ですよね?神聖魔法効くんですか?」

「旦那様も詳しくは分からないらしいのよ。そもそも【解除】の魔法適正は低く基本属性が強いのです。影響があったとしても、倒れるほどではないわ」

私は紅茶を飲みながら外の景色を見てため息をついてしまいます。
学生の頃の…図書室で旦那様と微笑んでいたあの頃が懐かしいですわ。

まぁ今となっては忌々しい過去ですが…。

坊やのお嫁さんは神殿で結婚式を挙げられないかもしれないわね。
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