体質系?異世界召喚者、また召喚され、怒る

吉野屋

文字の大きさ
36 / 49
第四章

6.王の使徒

しおりを挟む
 皆で連れ立って、神殿に向かった。

「瘴気きっつ、モヤってる」

 ハンターがパタパタ手を動かしている。

「これでは、神殿の内部がどうなっているのか分かりません。貴方たち三人は外で待っていて下さい」

「さすがに、三賢人と巫女姫ってトコだな。何ともないの?」

「大丈夫だよ。それより、おかしいね・・・急に瘴気が濃くなって来た。ハンター達はこれ以上きつくなるようだったら、逃げてね」

「分かった。急に周りが暗くなって来たぞ。俺達は足を引っ張るのも嫌だから引くぞ」

「うん」

 直ぐに三人の姿が消える。黒い影が三つ飛んで行くのが見えた。

 神殿に着いた途端、周りの明度がぐんと下がった。

 ギイィィィィ―――――――

 鉄の扉は開けずとも内側に勝手に開いていく・・・。

 

「来るぞ!」

 アスランテの声で三方に跳び退った。

 私達がいた場所に、青い雷(いかずち)が落ちる。

 ―――― バリバリバリバリッ

 床に青い魔法陣が浮かび上がる。

「何ッ!」

 ムーランが驚いて叫んだ。

 そこに、黒い騎士の一団が現れたのだ。皆馬上にいる。全てが黒だった。

 騎士も馬も、鎧も全てが黒ずくめ。これが王の使徒!?

「どういう事だ!」

 アスランテも叫ぶ。

 黒い騎士の先頭にいる男が腰の剣を抜き払い頭上に掲げた。

「巫女姫をもらい受けたい」

 地の底から響く様な男の声がした。

「「「断る!」」」

 思わずハモってしまった。えっなんで、巫女姫ってやっぱ私だよね。

 ムーランが右胸に手を当てたのが見えた。

 「うっ」

 胸から黄金の光が放出される。

 少し苦しそうに右胸から黄金の杖(じょう)をつかみ出すのが見える。

 ああ、えぐいわ。これ見るの久しぶり・・・。

 ズルリと神官の杖が取り出された。すごい魔力だ。


 今度はアスランテが左肩に右掌を当てた。急に空気が冷えて来る。

 そして、左肩から手の先へと右手を滑らせた。

 すると、右手には恐ろしい程の冷気を纏った銀色に冴えわたる大剣が握られていた。

 聖剣、クレイヴ・ソリッシュ。光の剣 と呼ばれる物らしい。

 さっ、寒い程の冷気だ。これも久しぶりに見た。



 黒い騎士達が馬ごと後ろに下がった。

 馬って後すだり出来るんだ。そんな事考えてる場合じゃない。

 私はポケットに手を入れた。

 別に植物は何でもいいんだけど、最近いつも魔力を与えている人喰い蔓はお気に入り・・・。

 私の掌に乗せた人喰い蔓の種から蔓が何本も天に向かい伸びる。

 そのまま急降下し黒騎士を狙い、槍になって落ちる。


「散れ!」

 黒騎士の統率者の一言で皆が蔓の鋭い矢を避けて逃げる。

 私はそのまま落ちて来た蔓の一本を手に持ち、鞭に変えた。

 身体強化を上げる。足らない。まだ足らない。

 鞭には棘を纏わせる。

 

 アスランテの剣が、銀の矢の様に一線する。

 そしてムーランの黄金の杖(じょう)が煌めきながら振られた。

 二人の動きは無駄がなく、舞のような流れで黒騎士達を倒して行く。

 馬の嘶きと金属の交わる重い音が鳴り響く。

 倒れて砂が崩れるように消える黒騎士達と馬。

「黒騎士とは、不死者なのか!?」

 ムーランの声がした。

 全ての黒騎士が崩れて消えたとたん、ガラスの割れるような音が鳴り響いた。

 パリ――――ン・・・・。

 いきなり周囲が明るくなった。作られた結界が破綻した。

「向こうにはかなり強力な魔道師がいるようだ・・・」

 アスランテの剣が薄くなり宙に溶ける様に消えた。

「怪我はないですか?」

 ムーランの杖(じょう)も同じように消える。

 私は種をポケットに戻した。何かチガウ。

「王の使徒が出て来たって事は、敵は王族?なんか私狙われてる?」

「・・・王族に関しては我々も良く分からない部分があるのです。慎重に、貴女を守りながら消された村人の事などを調べてみるしかないでしょう・・・。ただ、今回の事で間違いなく王族は敵だとわかりましたね」

「王族がココを召喚したのか、邪魔だから連れ去ろうとしたのか、何故彼女を連れて行こうとするのか分からないが、何方にしてもココは渡さない」

 アスランテにギューっと抱きしめられた。ぐ、ぐるじい。

「ああ、ココ申し訳ありません。お疲れですね。帰りましょう」

 くったりした私をアスランテは子供を抱っこするみたいに縦抱きにして歩き始めた。

 何か、チガウ。

 ほんと、でもなんか疲れた。寝てもいい?意外に広い腕の中は居心地が良かった。
 

 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...