6 / 105
1章 断罪回避
6 超絶イケメン間近に迫る
しおりを挟む
少し長めの、サラサラの金髪。
風に震える長いまつ毛。
緑の瞳は特に目立つ。
森を映す湖みたいに澄んでいる。
二十歳は確実に超えていると思うけど……
美しすぎて年齢なんかどうでもいい。
ふいに、超絶イケメンが間近に迫った。
私の頬についた砂を、彼の指先がそっと落とす。
(うわ……っ)
心臓が胸の中で跳ね回って、空気の吸い方がわからなくなる。
「アナベル様。この……は、いつ……ますか?」
「ご、ごめん。何?」
風と心臓の音がうるさくて、彼の声がよく聞こえない。
「この嵐はいつ終わりますか?」
「……いつかな?」
早く終わってほしい。
大怪我をする人はいないだろうけど。
精霊は昔、人間を守ると約束したから。
力の経路となれる人間──聖女を選び、共に魔物を倒そうと、手を差し伸べてくれた。
だから、精霊は基本的に人間を傷つけない。
「嵐を起こしたのはアナベル様では?」
「そ、そうなんだけど。いつまで続くかわからないよ」
私と処刑人の間に、変な空気が流れる。
だって力を使うの初めてだし……
真顔の美形にガン見されて、猛烈に居心地が悪い。
気まずくて目をそらすと、光るオコジョがこっちへ飛んでくるのが見えた。
「あっ。おかえり、風の精霊!」
よかった、これで話がそれる。
宙を駆ける風の精霊は、私の目の前でスッと止まった。
「ただいま戻りました、聖女様。私のことはナギとお呼びください」
「えっ、名前があるの?」
ゲーム内では「風の精霊」扱いだったから知らなかった。
「ナギっていうんだ、似合うね」
「聖女様にお褒めいただき、光栄です」
ナギは目を細め、ふわふわの頭を私の頬にすりつけてきた。
ああ、可愛い。
たまらない。
後ろ手に縛られていなければ、この子を抱きしめるのに。
小さなお耳もフニフニしたい……
夢のような妄想をしていると、ナギが私の肩をペチペチと叩いた。
「聖女様。じきに風が鎮まりますよ」
「そうなの?……あ、偵察役の魔物が消えてる」
私がそう言うと、ナギは短い前脚を広げて胸を張った。
「はい!山三つ向こうまで飛ばしてやりました。何しろ私は、息苦しさの中で何十年も耐えた精霊ですから」
「そうなんだ、さすがだね!」
「ええ、逃げてしまったほかの精霊とは違います。魔物の群れも一網打尽ですよ。一匹残らず、千々に引き裂きました!」
「そ、そうなんだ……さすがだね」
「聖女様が、私の力を正しく引き出してくださったからです。だというのに、まだ魔力が十二分に残っておられる。素晴らしい!」
ナギが、私の周りを何度も飛び回る。
尻尾が頬や耳に当たってくすぐったい。
そこへ、淡々とした声が聞こえた。
「たしかに、風が弱まってきたようです」
私と一緒に伏せていた処刑人が、壇の陰から周りをうかがっている。
「魔物の群れも見当たりません」
「そうでしょう? 聖女様のおかげですよ。……それにしても」
ナギは前脚をうんと伸ばして、ポフポフと拍手をする。
「処刑人でありながら、聖女様を支えてくれたようですね。褒美に、聖女様を称える栄誉を差し上げます。さあ、崇めなさい!さあ!」
「いらない!そういうのいらないから!」
美形に崇められるなんて嫌だ。
ただでさえオコジョに絶賛されて気まずいのに。
気まずいのに……
神レベルのイケメンは、薄布でも持つかのように、私をふわりと抱き上げた。
風に震える長いまつ毛。
緑の瞳は特に目立つ。
森を映す湖みたいに澄んでいる。
二十歳は確実に超えていると思うけど……
美しすぎて年齢なんかどうでもいい。
ふいに、超絶イケメンが間近に迫った。
私の頬についた砂を、彼の指先がそっと落とす。
(うわ……っ)
心臓が胸の中で跳ね回って、空気の吸い方がわからなくなる。
「アナベル様。この……は、いつ……ますか?」
「ご、ごめん。何?」
風と心臓の音がうるさくて、彼の声がよく聞こえない。
「この嵐はいつ終わりますか?」
「……いつかな?」
早く終わってほしい。
大怪我をする人はいないだろうけど。
精霊は昔、人間を守ると約束したから。
力の経路となれる人間──聖女を選び、共に魔物を倒そうと、手を差し伸べてくれた。
だから、精霊は基本的に人間を傷つけない。
「嵐を起こしたのはアナベル様では?」
「そ、そうなんだけど。いつまで続くかわからないよ」
私と処刑人の間に、変な空気が流れる。
だって力を使うの初めてだし……
真顔の美形にガン見されて、猛烈に居心地が悪い。
気まずくて目をそらすと、光るオコジョがこっちへ飛んでくるのが見えた。
「あっ。おかえり、風の精霊!」
よかった、これで話がそれる。
宙を駆ける風の精霊は、私の目の前でスッと止まった。
「ただいま戻りました、聖女様。私のことはナギとお呼びください」
「えっ、名前があるの?」
ゲーム内では「風の精霊」扱いだったから知らなかった。
「ナギっていうんだ、似合うね」
「聖女様にお褒めいただき、光栄です」
ナギは目を細め、ふわふわの頭を私の頬にすりつけてきた。
ああ、可愛い。
たまらない。
後ろ手に縛られていなければ、この子を抱きしめるのに。
小さなお耳もフニフニしたい……
夢のような妄想をしていると、ナギが私の肩をペチペチと叩いた。
「聖女様。じきに風が鎮まりますよ」
「そうなの?……あ、偵察役の魔物が消えてる」
私がそう言うと、ナギは短い前脚を広げて胸を張った。
「はい!山三つ向こうまで飛ばしてやりました。何しろ私は、息苦しさの中で何十年も耐えた精霊ですから」
「そうなんだ、さすがだね!」
「ええ、逃げてしまったほかの精霊とは違います。魔物の群れも一網打尽ですよ。一匹残らず、千々に引き裂きました!」
「そ、そうなんだ……さすがだね」
「聖女様が、私の力を正しく引き出してくださったからです。だというのに、まだ魔力が十二分に残っておられる。素晴らしい!」
ナギが、私の周りを何度も飛び回る。
尻尾が頬や耳に当たってくすぐったい。
そこへ、淡々とした声が聞こえた。
「たしかに、風が弱まってきたようです」
私と一緒に伏せていた処刑人が、壇の陰から周りをうかがっている。
「魔物の群れも見当たりません」
「そうでしょう? 聖女様のおかげですよ。……それにしても」
ナギは前脚をうんと伸ばして、ポフポフと拍手をする。
「処刑人でありながら、聖女様を支えてくれたようですね。褒美に、聖女様を称える栄誉を差し上げます。さあ、崇めなさい!さあ!」
「いらない!そういうのいらないから!」
美形に崇められるなんて嫌だ。
ただでさえオコジョに絶賛されて気まずいのに。
気まずいのに……
神レベルのイケメンは、薄布でも持つかのように、私をふわりと抱き上げた。
176
あなたにおすすめの小説
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました
タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。
ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」
目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。
破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。
今度こそ、泣くのは私じゃない。
破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる