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16 苦しい言い訳
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そこにあったのは、ぴかぴかの懐中時計。蓋には濃紺の宝石がはめ込まれている。
(時計が……2つ⁉︎)
引き出しから、ぴかぴかの懐中時計を手に取る。ほとんど無傷だ。鎖もぜんまいも新品同然。
私は、さっきの引き出しをまた開いた。汚れている方の懐中時計も取り出してみる。
綺麗な時計の横に並べると、写し取ったようにそっくりだった。
溶接の形。宝石のカットの角度。何もかもが一致している。
片方は、汚れや傷が尋常でなく増えているけれど……。
混乱する私の頭が、激しいノックの音を認めたのは、かなり時間が経ってからだったらしい。
「奥様! アリス様! どうかなさいましたか? 『悲鳴が聞こえたけれど、声をかけてもお返事がない』とメイドが申しているのですが! 大丈夫ですか? 入りますよ!」
ナンシーだ。私が大声を上げたせいで、ずいぶん心配させてしまったようだ。
あとから考えると、焦ることではなかったのだけれど、私はかなり気が動転していたのだろう。
(隠さなくちゃ!)
懐中時計と天使の人形を、急いで小物入れへしまい込む。そして、ドアに向かって声を張り上げた。
「大丈夫よ! どうぞ、入って!」
言い終わる前に、出入り口のドアがパッと開いて、つんのめりながらナンシーが転がり込んできた。
「ああ、奥様! よかった、ご無事で……!」
丸い体を揺すって、ぽてぽて駆け寄ってくる。
「どうなさったんですか? 『いくら呼んでも、物音すら聞こえない』と、メイドが真っ青でしたよ」
「えっと……その……ごめんなさい、寝言かもしれないわ」
人騒がせな、と怒られるかもしれない。だけど、とっさに出た嘘がそれだった。
ナンシーは怒りはしなかったけれど、肩すかしを食らったようにぽかんとしている。
「寝言、ですか?」
「そ、そうなの。変な夢を見たから」
言いながら目を泳がせると、ドアの隙間から寝室を覗くメイドたちが見えた。私の視線に気付いたみんなは、安心したように、それからおかしそうにクスクス笑いながら去っていく。
ナンシーはメイドたちの後ろ姿を睨みつつ、私に尋ねた。
「そんなにおかしな夢だったんですか?」
「えっと……昨日見た夢の続きだったのよ。びっくりして、夢の中で叫んじゃった」
「ああ、なるほど! そうしたら現実でも口に出していらした、ということですか」
ナンシーは、ぱちん、と軽快に手を打った。
「だと思う。驚かせてごめんなさい」
「まあ、まあ! そんな、おやめください」
頭を下げた私に、ナンシーは大きく手を振った。
「とにかく、お顔色もようございますし、朝食を持ってこさせますわ」
ナンシーは小走りに廊下へ出て、まだ残っていたメイドに「朝食を運んで」と言いつけた。
そして、再び寝室にぽてぽて戻ってくると、私を小さなテーブルに着かせて、簡単に髪をまとめ始めた。
「それにしても、外に聞こえるくらいの声で叫ぶなんて、ずいぶんな夢を見られたんですねえ」
「え、ええ、まあ」
本当は、夢の中では叫んでいないの。詳しく聞かないで──と祈ってみたものの、無駄だった。
「どんな夢だったんです?」
(時計が……2つ⁉︎)
引き出しから、ぴかぴかの懐中時計を手に取る。ほとんど無傷だ。鎖もぜんまいも新品同然。
私は、さっきの引き出しをまた開いた。汚れている方の懐中時計も取り出してみる。
綺麗な時計の横に並べると、写し取ったようにそっくりだった。
溶接の形。宝石のカットの角度。何もかもが一致している。
片方は、汚れや傷が尋常でなく増えているけれど……。
混乱する私の頭が、激しいノックの音を認めたのは、かなり時間が経ってからだったらしい。
「奥様! アリス様! どうかなさいましたか? 『悲鳴が聞こえたけれど、声をかけてもお返事がない』とメイドが申しているのですが! 大丈夫ですか? 入りますよ!」
ナンシーだ。私が大声を上げたせいで、ずいぶん心配させてしまったようだ。
あとから考えると、焦ることではなかったのだけれど、私はかなり気が動転していたのだろう。
(隠さなくちゃ!)
懐中時計と天使の人形を、急いで小物入れへしまい込む。そして、ドアに向かって声を張り上げた。
「大丈夫よ! どうぞ、入って!」
言い終わる前に、出入り口のドアがパッと開いて、つんのめりながらナンシーが転がり込んできた。
「ああ、奥様! よかった、ご無事で……!」
丸い体を揺すって、ぽてぽて駆け寄ってくる。
「どうなさったんですか? 『いくら呼んでも、物音すら聞こえない』と、メイドが真っ青でしたよ」
「えっと……その……ごめんなさい、寝言かもしれないわ」
人騒がせな、と怒られるかもしれない。だけど、とっさに出た嘘がそれだった。
ナンシーは怒りはしなかったけれど、肩すかしを食らったようにぽかんとしている。
「寝言、ですか?」
「そ、そうなの。変な夢を見たから」
言いながら目を泳がせると、ドアの隙間から寝室を覗くメイドたちが見えた。私の視線に気付いたみんなは、安心したように、それからおかしそうにクスクス笑いながら去っていく。
ナンシーはメイドたちの後ろ姿を睨みつつ、私に尋ねた。
「そんなにおかしな夢だったんですか?」
「えっと……昨日見た夢の続きだったのよ。びっくりして、夢の中で叫んじゃった」
「ああ、なるほど! そうしたら現実でも口に出していらした、ということですか」
ナンシーは、ぱちん、と軽快に手を打った。
「だと思う。驚かせてごめんなさい」
「まあ、まあ! そんな、おやめください」
頭を下げた私に、ナンシーは大きく手を振った。
「とにかく、お顔色もようございますし、朝食を持ってこさせますわ」
ナンシーは小走りに廊下へ出て、まだ残っていたメイドに「朝食を運んで」と言いつけた。
そして、再び寝室にぽてぽて戻ってくると、私を小さなテーブルに着かせて、簡単に髪をまとめ始めた。
「それにしても、外に聞こえるくらいの声で叫ぶなんて、ずいぶんな夢を見られたんですねえ」
「え、ええ、まあ」
本当は、夢の中では叫んでいないの。詳しく聞かないで──と祈ってみたものの、無駄だった。
「どんな夢だったんです?」
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