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4章 呪われた竜
2月17日 曇り
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どうなってるの? 本当なら今頃、「明日は何をしよう」って、のんびり考えてるはずだったのに。
えーっと、えーっと、何から書けばいいのか。
まず、今日は……ウィルブローズ様に会えなかった。
遅くても夕方までには戻るって言ってたのに、いつまで経っても帰らない。
とうとう日が暮れちゃって、さすがに心配になったから、「帰ってきてください」って名前と一緒に紙に書いてみたけど、反応なし。
どうしよう、何かあったんだ! って思って、ジェフローラ様やアートハル様に聞いてみようかって、ペンを手にしたその時よ。玄関の呼び鈴が、壊れておかしくなったみたいに、チリチリチリチリ~! って鳴り出した。
何事⁉︎ って階段を駆け下りたら、ちょうどラウルさんがエントランスに舞い降りてきた。
「子どものいたずらですかねえ」なんて言い合いながらドアを開けると……訪問者はなんとジェフローラ様!
私の顔を見るなり、息を切らせて仰ったの。「ウィルブローズを助けてほしい」って。
詳しくは明日、軍の本部に行った時に話すって言ってた。「見てもらった方が早いから」だって……。
ウィルブローズ様に何があったんだろう。怪我をしてるのか聞いたら、大きな傷はないって言われた。今すぐ命に関わることはないって。
でも、一刻を争う事態らしいわ。どうしてかはわからないけど、私の力が必要みたい。
じゃあ今から! と思ったら、「何日かかるかわからないから、宿泊の準備をしてちょうだい」って言われちゃった。ジェフローラ様もだいぶ慌ててらしたから、私を迎える用意ができなかったそうなの。
なんなのよ、もう!
事件が起きてほしいとは書いたけど、こんなに深刻な事件はいらないのに!
とにかく、明日は早起きしよう。ジェフローラ様が迎えの馬車をよこしてくださるそうだから、すぐ飛び乗れるように準備しておかなくちゃ。
ウィルブローズ様、大丈夫かな。早く顔を見て安心したい。
あとは嬉しかったことだけど、さすがに今日は……いや、そういえばジェフローラ様が仰ってたわ。3日前、戦地に着いたウィルブローズ様は、段々そわそわし始めたんだって。
どうしたのか尋ねたら、「早く帰りたい」「ニニが心配だ」って、やけに焦ってたらしいの。
不謹慎だけど、ちょっと浮かれちゃった。
だって私、ウィルブローズ様に何もしてあげられてないんだもの。なのに、そこまで私のことを考えてくれるなんて。
もしかしたら私の空回りも、何かの役に立ってるのかもしれないわ。
食卓の汚れを拭こうとして、コップを落としたこと……は、さすがに違うだろうけど。
でも本当に、どうしてそこまで? 私を好きになった理由も、いまだに謎だし。
まあいいや。今はとにかく、ウィルブローズ様を助けることに集中しよう。
何をすればいいかわからないけど、私は妻なんだもん。できることがあるはずよ!
えーっと、えーっと、何から書けばいいのか。
まず、今日は……ウィルブローズ様に会えなかった。
遅くても夕方までには戻るって言ってたのに、いつまで経っても帰らない。
とうとう日が暮れちゃって、さすがに心配になったから、「帰ってきてください」って名前と一緒に紙に書いてみたけど、反応なし。
どうしよう、何かあったんだ! って思って、ジェフローラ様やアートハル様に聞いてみようかって、ペンを手にしたその時よ。玄関の呼び鈴が、壊れておかしくなったみたいに、チリチリチリチリ~! って鳴り出した。
何事⁉︎ って階段を駆け下りたら、ちょうどラウルさんがエントランスに舞い降りてきた。
「子どものいたずらですかねえ」なんて言い合いながらドアを開けると……訪問者はなんとジェフローラ様!
私の顔を見るなり、息を切らせて仰ったの。「ウィルブローズを助けてほしい」って。
詳しくは明日、軍の本部に行った時に話すって言ってた。「見てもらった方が早いから」だって……。
ウィルブローズ様に何があったんだろう。怪我をしてるのか聞いたら、大きな傷はないって言われた。今すぐ命に関わることはないって。
でも、一刻を争う事態らしいわ。どうしてかはわからないけど、私の力が必要みたい。
じゃあ今から! と思ったら、「何日かかるかわからないから、宿泊の準備をしてちょうだい」って言われちゃった。ジェフローラ様もだいぶ慌ててらしたから、私を迎える用意ができなかったそうなの。
なんなのよ、もう!
事件が起きてほしいとは書いたけど、こんなに深刻な事件はいらないのに!
とにかく、明日は早起きしよう。ジェフローラ様が迎えの馬車をよこしてくださるそうだから、すぐ飛び乗れるように準備しておかなくちゃ。
ウィルブローズ様、大丈夫かな。早く顔を見て安心したい。
あとは嬉しかったことだけど、さすがに今日は……いや、そういえばジェフローラ様が仰ってたわ。3日前、戦地に着いたウィルブローズ様は、段々そわそわし始めたんだって。
どうしたのか尋ねたら、「早く帰りたい」「ニニが心配だ」って、やけに焦ってたらしいの。
不謹慎だけど、ちょっと浮かれちゃった。
だって私、ウィルブローズ様に何もしてあげられてないんだもの。なのに、そこまで私のことを考えてくれるなんて。
もしかしたら私の空回りも、何かの役に立ってるのかもしれないわ。
食卓の汚れを拭こうとして、コップを落としたこと……は、さすがに違うだろうけど。
でも本当に、どうしてそこまで? 私を好きになった理由も、いまだに謎だし。
まあいいや。今はとにかく、ウィルブローズ様を助けることに集中しよう。
何をすればいいかわからないけど、私は妻なんだもん。できることがあるはずよ!
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