断罪された大聖女は死に戻り地味に生きていきたい

花音月雫

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第一章

聖女認定の日ですわ

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さぁ。本日は聖女認定ですの。
私は紺色の生地に銀色の糸でお花の刺繍が全体的に入っているワンピースを着てお揃いの生地の帽子を被り玄関ホールに立っています。

アクアもマリルも準備万端で私の横に立っています。

「なぁ、聖女認定って欺けるもんなのか?」

アクアがマリルに聞こえないよう小さな声で話しかけてきます。

「任せて下さい。大丈夫です」

「すげー自信満々だな。本当に大丈夫かよ......」

珍しくアクアが不安そうな声を出していますね?
あ、そうですわよね。もし私が聖女様になってしまったら悪魔との契約なんて絶対に駄目ですしね。

でも今更ながらですが私と契約して何かアクアの為になっているのでしょうか?
最初は面白そうだからとか何とか言っていましたが。
アクアにとって私の人生は面白いのでしょうか?疑問ですわ。

お父様とお母様の支度が出来たので馬車に乗り込みました。
お父様、お母様、私、マリルの4人です。我が家の馬車は基本4人乗りですのでアクアはまた護衛騎士と共に馬に乗ってついてきていますわ。

聖女認定は少し遠くの教会で行われます。こちらから行くと山を一つ越えなければなりませんの。
ゆらゆら、がたがたと馬車は進みます。
ガクッと馬車が勢いよく止まりました。

「何事だ⁉︎」

お父様が護衛騎士に向かって叫びます。

「奇襲です!皆様はそのまま馬車の中に!」

護衛騎士の叫び声が聞こえてきました。

「リリー、ここは任せても良いか?」

「はい」

お父様は聖騎士団の団長です。
守ってもらうわけがありません。
剣を掴み馬車を降りて行きました。
お母様は私を抱き締めてマリルと共にシールドを馬車に張ります。

外からは激しい戦いの音や叫び声が響いてきます。
確実に私の聖女認定の日を狙ってきましたわね。誰かしら。
色々と考えを張り巡らせていると馬車が浮いた様な感覚がありました。

「「「!!」」」

私達3人は息を飲みます。
馬車は乱暴に地面に落とされました。
シールドを張っていたので大破は免れましたが馬車の形が歪んでしまいました。

突然シールドが破られ馬車も粉々に砕かれました。けれどお母様とマリルが力を合わせて移動魔法をしたので3人で無事に馬車が壊れる前に脱出できましたわ。

外は先程まで馬車が走っていた山の中ではなく何処かの森の中です。
馬車ごと移動魔法をかけられ連れて来られたのですね。お父様達は大丈夫でしょうか?

お母様とマリルは2人で私を抱き締めて目の前に立っている人物を睨んでいます。

「よおぉ!久しぶりだな!少し大きくなったか?あの時はこんくらいしかなかったのになぁ?」

その男は右手の親指と人差し指で大きさを表しています。
あ!あの誘拐事件で私を串刺しにした男です!
むむ!あの時、確かに小さかったですけれどそんな虫みたいに小さくはなかったですわよ!

「私を串刺しにした男......」

私は小さく呟きました。
それを聞いたお母様とマリルが一瞬にして理解したようで周りにシールドを張りました。

「覚えててくれてたとは嬉しいねぇ。あの時、俺達が捕まえていた悪魔とちゃっかり契約したんだもんなー。普通のガキじゃないとは思ったがまったくな」

「逃げていたのですの?あの時の誘拐犯達は皆......」

お母様が声を震わせて言いました。

「あぁ!あの時の騎士団長はあんたの旦那か!俺、そーゆーの分かっちゃう力あるから。そうか、そうか。うん。うん。アイツら捕まったら面倒な事になるだろう?だからアイツらが「捕まる!」って思った瞬間頭が吹っ飛ぶように俺が全員に術かけといたわけ。綺麗に吹き飛んだって旦那言ってなかったか~?」

なんて最低な男ですわ。
誘拐犯達とはいえその様な悲惨な最後だったなんて。それでお父様はあまりあの事件については話したがらなかったのですね。

「酷い!あなたの仲間だったんでしょう?」

マリルが睨みながら笑っている男に叫びました。

「仲間ぁ?違うよ。俺の駒だよ、駒。あんな弱ちぃー奴らが仲間なわけないだろうが」

男はイライラしたのか私達に小さな稲妻の様なモノを手で作り出しこちらに投げてきます。シールドで全部弾かれていますが。

「ま、そんな事で串刺しにしたガキの事が忘れられないでいたらまーなんと偶然?マーレに絡んできてくれたわけよ!嬉しかったねぇ」

え?マーレ様の事件にも関係していましたの?あ!ダリル様が言っていたもう1人の男!

「あなたがマーレ様をそそのかしたのですね?」

私はお母様とマリルの後ろに隠れながら問いかけます。

「人聞き悪りぃな!こんな黒魔術を知ってるか?って教えてあげたのと優秀な部下を貸してあげただけなんだけど?お前の悪魔に殺られちゃたけどなぁ」

あの騎士もこの男の仲間でしたか。

「あなたのせいでマーレ様があんな事になってしまったのですよ?」

私はどんどん腹が立ってきましたわ。

「違う。違うなぁ。あの女が勝手に条件揃ってないのに儀式をやっちまうからだよ。俺はきちんと揃えろって、条件満たせって言ってたんだぜぇ?」

ニヤニヤ笑いながら男は言います。

「でも、あれはあれで良かったんじゃないかぁ?好いた男と同じ見目の悪魔に食い殺されるなんてロマンチックだよなぁ?」

「どこがだ。阿保なのか?」

私はキレかかっていますわ。
いえ、キレてますわね。

「しかしなぁー。お前の力は凄いとは思ってたけど悪魔と契約した事で更に強くなってたんだな!大人になってマーレと戦ってただろう?素晴らしかったぜ?ま、悪魔と契約してたからだけどな。本来はその体のサイズだとあれの三分の一ってとこか~?」

全部見てたのですね。
でも、あの力は半分以上アクアのものでしたのね......。少しガックリですわ。
で、でも、私は聖女様にも大聖女様にもなる気はないのですからそんな大きな力は要らないのですわ。
うん。うん。
納得していると男の隣の空間が突然歪み次の瞬間女性が立っていました。

「何を悠長に話してるの?まだ侍女も殺ってないのね」

甲高い声が聞こえてきましたわ。
この聞き覚えのある声は!
男の隣に立っていたのはオレット様でした。
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