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第一章 公爵令嬢の姉
8 姉として生まれて
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私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてきてしまった事だろう。
私は母からするりと生まれ落ちた。
初産では信じられないくらいの安産だったそうだ。
母の陣痛が来てすぐ、父や将来の縁者となる王族の到着を待たずに母から出てきてしまった。
それとは対照的に、妹は私が生まれた後半日近く母を苦しめとても難産だった。
結果、双子といえども誕生日は一日違いだ。
出産で母も妹も体力を消耗したのだろう。
母は妹を出産直後気を失い、妹は中々泣き声を上げなかったという。
出産後、二人にはすぐに治癒の魔術が施された。
妊娠、出産時には母親と子の魔力の関係で治癒魔術は思わぬ効果になるらしく、余程の事がない限り禁止とされていた。
大切な夫人や折角授かった子供によからぬ事があってはならないのだから。
妹が生まれる迄の半日間は、皆が出産の事ばかりを考えて無事を祈ったらしい。
この公爵家から王太子の婚約者が出る事は、内々で決定済みだったのだから。
この国クローディル国では王族の婚約者は早くに決める。
隣国ユーフルディア帝国との一番の違いだと言っている。
私からすると、一番の違いは魔術の発展力だと思うが、この国では認めない。
最近台頭して来た帝国など、我が国の足下にも及ばないと思っている。
その割に使っている魔道具は帝国産の物で、これが重宝されていた。
出産で皆に心配を掛けながら生まれてきた妹を、誰もが祝福した。
治療魔術を掛けられた後は、乳母から乳を与えられた。
それはそれは可愛らしい、ふくふくとした笑顔を振りまいたらしい。
我がエイヴァリーズ公爵家は安泰だと、まるで嫡子が生まれたかの様な騒ぎようだったという。
で、その間私はどうなっていたかというと、半日間放置である。
一度も母乳を与えられず、一人防音された部屋に放置された。
私の方こそよく死ななかったものだ。
乳母は、二人いたのだがどちらが担当するか決まっていなかった。
身分が高い貴族には、その貴族女性より少し低い貴族が乳母になる。
エイヴァリーズ公爵家には二人の伯爵夫人が乳母となっていた。
関わる子によって、自分のみならず自分の子の将来が変わるのだから先に決めようがない。
そしてどちらも、既に私の面倒は相手が見ていると思っていた。
多分この扱いが、私のこの家での扱いを象徴している事柄だろう。
だからこれは後から乳母に聞いた話だった。
「ここ迄出来の悪い子に当たるなんて私は不幸よ。あの時人知れず死んでいた方が良かったかもしれないわね」
そんな言葉を添えられながら、聞かされた。
放置していたなど知られる訳にもいかず、使用人やどこぞの見習い魔術師に口止め料など払い、かなりのお金を使ったらしい。
王太子の婚約者と決まった妹を中心にこの家が回り始め、私は弟が出来るまでの予備扱いで暫定次期公爵家当主となった。
しかし、現在もエイヴァリーズ公爵家には私達の他に兄弟はいなかった。
私は母からするりと生まれ落ちた。
初産では信じられないくらいの安産だったそうだ。
母の陣痛が来てすぐ、父や将来の縁者となる王族の到着を待たずに母から出てきてしまった。
それとは対照的に、妹は私が生まれた後半日近く母を苦しめとても難産だった。
結果、双子といえども誕生日は一日違いだ。
出産で母も妹も体力を消耗したのだろう。
母は妹を出産直後気を失い、妹は中々泣き声を上げなかったという。
出産後、二人にはすぐに治癒の魔術が施された。
妊娠、出産時には母親と子の魔力の関係で治癒魔術は思わぬ効果になるらしく、余程の事がない限り禁止とされていた。
大切な夫人や折角授かった子供によからぬ事があってはならないのだから。
妹が生まれる迄の半日間は、皆が出産の事ばかりを考えて無事を祈ったらしい。
この公爵家から王太子の婚約者が出る事は、内々で決定済みだったのだから。
この国クローディル国では王族の婚約者は早くに決める。
隣国ユーフルディア帝国との一番の違いだと言っている。
私からすると、一番の違いは魔術の発展力だと思うが、この国では認めない。
最近台頭して来た帝国など、我が国の足下にも及ばないと思っている。
その割に使っている魔道具は帝国産の物で、これが重宝されていた。
出産で皆に心配を掛けながら生まれてきた妹を、誰もが祝福した。
治療魔術を掛けられた後は、乳母から乳を与えられた。
それはそれは可愛らしい、ふくふくとした笑顔を振りまいたらしい。
我がエイヴァリーズ公爵家は安泰だと、まるで嫡子が生まれたかの様な騒ぎようだったという。
で、その間私はどうなっていたかというと、半日間放置である。
一度も母乳を与えられず、一人防音された部屋に放置された。
私の方こそよく死ななかったものだ。
乳母は、二人いたのだがどちらが担当するか決まっていなかった。
身分が高い貴族には、その貴族女性より少し低い貴族が乳母になる。
エイヴァリーズ公爵家には二人の伯爵夫人が乳母となっていた。
関わる子によって、自分のみならず自分の子の将来が変わるのだから先に決めようがない。
そしてどちらも、既に私の面倒は相手が見ていると思っていた。
多分この扱いが、私のこの家での扱いを象徴している事柄だろう。
だからこれは後から乳母に聞いた話だった。
「ここ迄出来の悪い子に当たるなんて私は不幸よ。あの時人知れず死んでいた方が良かったかもしれないわね」
そんな言葉を添えられながら、聞かされた。
放置していたなど知られる訳にもいかず、使用人やどこぞの見習い魔術師に口止め料など払い、かなりのお金を使ったらしい。
王太子の婚約者と決まった妹を中心にこの家が回り始め、私は弟が出来るまでの予備扱いで暫定次期公爵家当主となった。
しかし、現在もエイヴァリーズ公爵家には私達の他に兄弟はいなかった。
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