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幕間―別視点【四人ピックアップ】
何かがおかしいのだろうか……(前編)
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―――クローディル国王視点
部屋の中から赤子の元気な泣き声が聞こえた。
「元気な男の子です。さあ陛下、是非ご覧下さいませ」
「うむ」
一声頷き産室に入り、赤子の顔を見た。
他の国では驚かれる事だが、我がクローディルでは国王自らが赤子の出産を見守る。
これは大事な王族の仕事だ。
勿論全てに立ち会える訳ではない。
忙しい我が身だからな。
将来国政に関わる上位の家の者を厳選しておる。
産まれたての赤子から、魔力が放出しているのが分かる。
その魔力を受け取り、赤子は余が差し出した魔力を引き寄せる。
これでこの子は、余をこの国を大切に思うだろう。
赤子は部屋の中の大人達と交換していたが、交換の魔力はかなり薄い。
この子は余り力がないのかもな。
目安ではあるが余の経験上そう感じた。
しかし元気に産まれた子ならば、体内にある魔力が一旦無くなっても、また溜め少しづつ親との絆は強まるだろう。
他者の魔術をかけられるまでは。
最近は初手から魔力が高いと感じる者が減ったな、と思いながら王宮へ戻る馬車に乗った。
赤子には不思議な力がある。
一人では生きていけない故に相手側に保護を求め、愛護を願う。
一種の魅了とも言われる力だ。
我が国はあえて赤子の力を受け入れる事を選んだ。
その代わり赤子にも我が国の益になってもらう。
それは過去、我が国の歴史にあった。
魔力の高い者に狼藉者が増え、混沌と殺伐を好む者達で荒れた。
それと同時に愛国心を胸に秘め、魔力に満ちた偉大な魔術師達がその者達を抑え込んだ。
この図式は長く続いた。
問題は両方が同じ一族であったり、近親者であった事。
このままでは、魔力が強い事は危険な事とされかねない。
王族は勿論の事、上位貴族は皆魔力が高い。
これは個人の資質の問題と片付けるには、あまりにも異質だった。
危機感を持ち徹底的に調べられ分かった事は、腹の中で大きくなっていく過程と産まれた赤子の状態だった。
他者の魔術を受けると変化を起こす。
臨月に近づく程に影響が大きく、産まれた直後が頂点となる。
赤子が自ら魔力を放出しないと、本来持っている力が歪むのだろう。
赤子の保護を訴える魔力が消えたり、場合によっては反転する。
結果放置や無関心ならいい方で、とても言葉には表せられない状態の養育課程を経て大人になっていく。
しかしこれでは、性格が歪むのは当然だった。
そしてそれは、魔力の存在能力の高いもの程顕著だった。
将来上位になり得る、魔力の持ち主に対しての危機感もあったのやもしれない。
この事は最重要極秘機密として、王族でも一部の者が知るのみだ。
余も成人した三年後、子が出来てから教えられた。
理由は簡単だ。
歪んで育った者は、稀にありえない魔力を発現させるからだ。
今でも何処かの暗殺集団が、残酷な育て方をしている等の噂も聞くが調べると大概自滅している。
子は慈しんで育てるものだ。
ただ、このやり方も完璧ではない。
魔力の加減も知らない赤子から受ける魔力は、受け取る者の技量にも左右されるからな。
魔力が高い者は求めるが、魔力が強いだけの人格破綻者など我が国に必要ない。
甘くなりがちな子供時代を過ごそうと、この国を支える余の子供達には幸せになって欲しいものだ。
そんな事を思いながら、王宮へ戻ってみれば宰相が血相を変えていた。
「陛下、エイヴァリーズ公爵家から緊急の知らせが来ております」
「何かあったのか?」
あの家は優秀な息子の婚約者がいる家だ。
宰相から手紙を受け取り、呆れ返った。
「不出来な姉が学園を退学となったようだ。それを苦に出奔とは人騒がせな。優しいマリアーヌが気に病んでいるので、捜索隊を出したいだと願い出ておる。宰相、いかが致す?」
「触れを出せば、エイヴァリーズ公爵家の失策にも捉えられかねません」
「案外、姉はそれが狙いかもな。随分と出来の良い妹に嫉妬していると聞き及んでおるぞ」
「騎士団長と相談したいと存じます」
「任せる」
そう言えば、マリアーヌの出産時は大変だったな。
部屋の中から赤子の元気な泣き声が聞こえた。
「元気な男の子です。さあ陛下、是非ご覧下さいませ」
「うむ」
一声頷き産室に入り、赤子の顔を見た。
他の国では驚かれる事だが、我がクローディルでは国王自らが赤子の出産を見守る。
これは大事な王族の仕事だ。
勿論全てに立ち会える訳ではない。
忙しい我が身だからな。
将来国政に関わる上位の家の者を厳選しておる。
産まれたての赤子から、魔力が放出しているのが分かる。
その魔力を受け取り、赤子は余が差し出した魔力を引き寄せる。
これでこの子は、余をこの国を大切に思うだろう。
赤子は部屋の中の大人達と交換していたが、交換の魔力はかなり薄い。
この子は余り力がないのかもな。
目安ではあるが余の経験上そう感じた。
しかし元気に産まれた子ならば、体内にある魔力が一旦無くなっても、また溜め少しづつ親との絆は強まるだろう。
他者の魔術をかけられるまでは。
最近は初手から魔力が高いと感じる者が減ったな、と思いながら王宮へ戻る馬車に乗った。
赤子には不思議な力がある。
一人では生きていけない故に相手側に保護を求め、愛護を願う。
一種の魅了とも言われる力だ。
我が国はあえて赤子の力を受け入れる事を選んだ。
その代わり赤子にも我が国の益になってもらう。
それは過去、我が国の歴史にあった。
魔力の高い者に狼藉者が増え、混沌と殺伐を好む者達で荒れた。
それと同時に愛国心を胸に秘め、魔力に満ちた偉大な魔術師達がその者達を抑え込んだ。
この図式は長く続いた。
問題は両方が同じ一族であったり、近親者であった事。
このままでは、魔力が強い事は危険な事とされかねない。
王族は勿論の事、上位貴族は皆魔力が高い。
これは個人の資質の問題と片付けるには、あまりにも異質だった。
危機感を持ち徹底的に調べられ分かった事は、腹の中で大きくなっていく過程と産まれた赤子の状態だった。
他者の魔術を受けると変化を起こす。
臨月に近づく程に影響が大きく、産まれた直後が頂点となる。
赤子が自ら魔力を放出しないと、本来持っている力が歪むのだろう。
赤子の保護を訴える魔力が消えたり、場合によっては反転する。
結果放置や無関心ならいい方で、とても言葉には表せられない状態の養育課程を経て大人になっていく。
しかしこれでは、性格が歪むのは当然だった。
そしてそれは、魔力の存在能力の高いもの程顕著だった。
将来上位になり得る、魔力の持ち主に対しての危機感もあったのやもしれない。
この事は最重要極秘機密として、王族でも一部の者が知るのみだ。
余も成人した三年後、子が出来てから教えられた。
理由は簡単だ。
歪んで育った者は、稀にありえない魔力を発現させるからだ。
今でも何処かの暗殺集団が、残酷な育て方をしている等の噂も聞くが調べると大概自滅している。
子は慈しんで育てるものだ。
ただ、このやり方も完璧ではない。
魔力の加減も知らない赤子から受ける魔力は、受け取る者の技量にも左右されるからな。
魔力が高い者は求めるが、魔力が強いだけの人格破綻者など我が国に必要ない。
甘くなりがちな子供時代を過ごそうと、この国を支える余の子供達には幸せになって欲しいものだ。
そんな事を思いながら、王宮へ戻ってみれば宰相が血相を変えていた。
「陛下、エイヴァリーズ公爵家から緊急の知らせが来ております」
「何かあったのか?」
あの家は優秀な息子の婚約者がいる家だ。
宰相から手紙を受け取り、呆れ返った。
「不出来な姉が学園を退学となったようだ。それを苦に出奔とは人騒がせな。優しいマリアーヌが気に病んでいるので、捜索隊を出したいだと願い出ておる。宰相、いかが致す?」
「触れを出せば、エイヴァリーズ公爵家の失策にも捉えられかねません」
「案外、姉はそれが狙いかもな。随分と出来の良い妹に嫉妬していると聞き及んでおるぞ」
「騎士団長と相談したいと存じます」
「任せる」
そう言えば、マリアーヌの出産時は大変だったな。
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