無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物

ゆうぎり

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国境へ

14 このまま進む事になりました

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 ゆるゆると進む馬車から、国境の街ブルンデンの街門が見えてきた。
 そんな時に、前の馬車の歩みが止まった。
 私が不思議がっていると、アビィが説明してくれた。

「街門の魔道具に、引っかかったみたいだな」
「魔道具ですか?」
「そう、簡易門にも設置してあったんだけど、人を殺傷してなければ大丈夫。ただ問題点もあって、医者や騎士、兵士達が引っかかるんだよな」

 仕事上、仕方のない方達なのでしょう。

「予め門に報告しておくと、スムーズに進むから特段困らないんだけどな。ほら、すぐに動き出した」

 アビィの言う通り、馬車の列はすぐに動き始めた。
 そのままゆるゆると進み、私は何事もなく街門を通った。
 その際に魔道具を見ると、左右と上の三箇所に球体の魔道具が半分埋められた形であった。

 街門を入って少しした大きな広場では、馬車から降りた人が何やら手渡している。

「本来、さっきの村とここを繋ぐ定期馬車があるんだ。その分を乗せてもらった馬車に払ってる。勿論俺らも払うからな」

 私が操縦する馬車は、アビィの家に向かう事になっていた。
 アビィがそんな風に話していると、突然後ろが騒がしくなった。

「荒くれ者が捕まったって」

 後ろの馬車の護衛の人が、またこちらに来て教えてくれた。
 アビィと護衛の人が移動しながら話していると、突然会話を遮る様に上から声が降ってきた。

「坊ちゃ~ん。良かった、中々見つからないからヒヤヒヤしました」
「こら、馬が驚くだろう!」

 しゅたっと華麗に着地した男は、馭者席に上る際の足がかりに立ちアビィに話かけた。
 どちらかというと、馬より後ろに乗っていた四人の方が驚いていた。
 サッと馬車を開け、荷物を放り込んでいたから。

「申し訳ない。忙しい中坊ちゃんの荷物持って来たんですよ。褒めて下さいよ」
「俺は一旦家に戻るつもりだったんだがな」

「別にそれでもいいですけど、オーリア国へ行くのが一月後とかになりそうですよ」
「それ、どうゆう事?」

 後ろから、ローラが会話に割り込んで来た。

「坊ちゃん?」
「村で知り合った友達。皆オーリア国へ向かうから、知ってる事情を全て話してくれ」

「分かりました。実は今、国境門に水晶が設置されておりません。何やら最終点検とか言い出して、派遣されて来た騎士が、王宮の魔術師に確認させているとか。このどさくさに紛れて、溜まっていた人々を一気に流しているんです。ここ数日飽和状態でしたから」

「街長の説得に、応じたんじゃないのかよ~」
「混乱を避ける為の方策を行う旨の了承はされたんですか、騎士はその方法を知らないんで。まぁ、上手く方便に乗せられた方が悪いんですよ」

 そう言って、にこやかに男は笑った。

「で、騎士が言う『本番』とやらが、どれだけ迷惑な代物になるか予想できない訳でして。『予行』のペースでもかなり迷惑でしたから。この街の経済を遅延させ、王族不信を招きたいとしか思えないですよ。騎士は王太子の側近ですし」

「王太子の側近?」

 私は、知らず小さく呟いていた。

「そうなんですよ。王太子直々の密命とかで。どっかの公爵の私兵も来てるんですが、喧嘩売ってるだろうって態度でムカつくんですよね」

「なんで、密命を知ってるんだか……」

「やだなぁ坊ちゃん。人徳ですよ、人徳。そいつらが今国境門に居ないんで、さっさと抜けるに限ります。こんな素敵な情報を持ってきたんですから、褒めて下さいよ」

 ぬっと手をアビィの前に出し、にこにこと男は笑った。

「これだから、コイツは……」

 そう言いながらもアビィは幾許いくばくかを渡していた。

「毎度あり。あっ坊ちゃん、これかしらからの手紙。珍しく協会経由の特急だったんです。何が書いてあるんですか?別れの挨拶ですか?」

 あまりない事なのか、アビィも手紙を読みながら驚いていた。

「……これ確認していいよ。…………もう、会ってるんだよなぁ」

 読み終えた手紙を男に渡し、顔に手を当て何かを小さく呟いた。

 私の意識は別の事に囚われ、アビィの言葉は聞こえなかった。

 今を逃せば、国境を越えるのは難しくなる。

 ゆっくり進む馬車の群れは、私の焦る気持ちも知らず国境門へ通じる道を進んでいった。




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