【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり

文字の大きさ
43 / 60

42 ヘインズ子爵から見たもう一つの出来事2

しおりを挟む
 ロンバード男爵が真実と信じた発言に対して、バンデルン侯爵は簡潔だった。

「で?」
「えっ」
「それで?」
「はぁ?……いや、その……私は真実をですね……」

 もごもごと話すロンバード男爵は、予想と違った侯爵の反応に戸惑っているようだ。
 私の方をちらちらと見ながらも、言い訳を考えている。

「それは貴様が横領した事となんの関係があるのかね」
「大ありでしょう、クラーラは信用に値しない無価値なのです。そのクラーラの発言は全て疑ってかかるような物ばかり。偽物が大きな顔をするなど貴族として許せないのです」

 勢いが出てきた男爵は、私に勝ち誇った顔を見せ言葉を正当化していく。
 論点はずれ、男爵は横領についての内容を避け話は平行線をたどる。
 どの様な事を言っても『クラーラが悪い』に話を持っていくつもりだ。

 私はちらりと侯爵に目配せするが、発言は許されないようだ。
 言外にこのやり取りを見届ける事に徹する様に、軽く首を振られた。

「ほう、無価値ね」
「そうです。不義の子は本来捨てられて当然なのです。それを厚かましくも侯爵家に居座り続け、私に逆らうのです。ありえない事態でしょう?」
「そうだな」

 気のない返事で侯爵は適当に相槌を打った。
 どうやら一旦男爵に思いの丈を吐き立たせるつもりだ。
 男爵は気を良くしたのか、次々に自らの勝手な持論を述べていく。

 調子よく進む耳が腐る様な発言も、同席している侯爵の侍従が記しているのだろう。
 忙しそうにペンを走らす姿が目の端に映った。

「はぁ、もう言いたいことは言えたかね、ロンバード男爵」

 呆れしかない侯爵の声に男爵の声がピタリと止んだ。

「貴様は私の娘を侮辱し、我が愛しのセーラを貶め我が家に不敬を働いているが、自覚もしていないのだろうな」

 目だけが笑っていない笑顔がそこにあった。

「ここまで話が脱線し、自分の持論を述べるか。ならば身近なところで貴様にも答えやすい質問をしてやろう。何故貴様はロンバード家の息子達を放逐していないのだ?」
「?」
「不義の子の噂はクラーラに確かにあった。だがな、ナディオの方が深刻だったのだ。それゆえ何故放逐していないのかと聞いている。噂になる事自体が駄目なのだろう?」

 男爵は何を言われているのかわからない様子だ。

「貴様、貴族の法を知らないのか?ナディオがヘインズ子爵の養子になった事でどの様な憶測が飛ぶか気づかなかったのか?ここは『密会の地』と呼ばれ、子爵は独身・・だ。当然、悪意ある噂を流す者はいる。真実かどうかなど関係なくな」

 思いもかけない侯爵からの反撃に、男爵は固まった。


しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」 その一言で、私は婚約を破棄されました。 理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。 ……ええ、どうぞご自由に。 私は泣きません。縋りません。 なぜなら——王家は、私を手放せないから。 婚約は解消。 けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。 失ったのは殿下の隣の席だけ。 代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。 最初は誰もが疑いました。 若い、女だ、感情的だ、と。 ならば証明しましょう。 怒らず、怯えず、排除せず。 反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。 派手な革命は起こしません。 大逆転も叫びません。 ただ、静かに積み上げます。 そして気づけば—— “殿下の元婚約者”ではなく、 “揺れない王”と呼ばれるようになるのです。 これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。 王冠の重みを受け入れた一人の女性が、 国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。

婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」

佐藤 美奈
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」 アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。 「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」 アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。 気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

あなたの姿をもう追う事はありません

彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。 王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。  なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?  わたしはカイルの姿を見て追っていく。  ずっと、ずっと・・・。  でも、もういいのかもしれない。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜

nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。 「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。 だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。 冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。 そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。 「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」

処理中です...