【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり

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 ハマー伯爵は青い顔をしたまま婚約破棄の書類を睨みつけて言います。

「なんだ、この理由は。カリン嬢、女を下げる必要はない。私は、婚約破棄に反対する」

「いえ、反対すると言われましても既に受理されておりますわ。理由のところはオリバーが言った事をそのまま記載しただけで私としては他意はないです」

 カリンはただその場でオリバーに署名させたかっただけの事である。自分が言った事が記載されているのだから理解するだろう。

 貴族用に飾った言い回しなど使ってオリバーが理解出来なかったら困るのだから。

「こんなもの認めない。いいのか?婚約破棄などすれば、ターナー家もカリン嬢も評価が落ちるだろう?ポールはまだ婚約者が決まっていない。弟に迷惑かけてどうするんだ」

「ですので婚約破棄は済んでます」

「そんなもの、取り消せばいいだけのことだ。飢饉に陥っているハマー領を見捨てたなど不名誉なことは言われたくないだろう?」

「飢饉って何時のお話でしょう?飢饉は広範囲でこの国を襲いましたが、既に殆どの領で建て直しがなされています。その事によってターナー家が不名誉をこうむる事はありませんわ」

 5年前に起きた飢饉はハマー家だけではなかった。国全体の広範囲にわたり主要穀物の麦が枯れてしまったのだ。大なり小なりどの領地でも被害があった。
 もちろんターナー家でもだ。ただターナー家は元々被害が少ない上にかなりの備蓄があり、それを放出しただけの事だった。

 広範囲に渡った為国でもいろいろな措置が考えられ実行されている。

 それに翌年には全国的に収穫量は上がり、今年は豊作である。本当にこの苦難は一時的なものとされていた。

 ただ小さな領地や蓄えがあまりなかった領地などはまだまだ苦慮している所はある。
 だがそれは余程酷い被害があった子爵領や小さい故に上手く立ち回れなかった男爵領である。

 伯爵領で飢饉が言い訳に使われるなど有り得ない。逆に領地経営の不手際で見切りを付けられたと見られるだけでターナー家よりハマー家の方が社交界での醜聞になる。

 ハマー家がその様な事を気にするかは別問題なのだが。
 カリンとしては「今更悪評の一つや二つ増えても気にならないんだろうな」と思っていたりする。


 押し問答は続く。諦めの悪いハマー伯爵が言い募るがカリンは毅然とした態度を崩さない。

 父はこの様な交渉は苦手で直ぐに折れてしまう。
 カリンとターナー伯爵は違うのだと言うことをハマー伯爵に理解させなければならない。

「話が全く進まないのですが『婚約破棄』は決定事項です。覆りませんし、再度私がハマー家との婚約書類に署名する事はありません」

 そこでカリンは口元をにっこりと笑みハマー伯爵を目だけで睨みつけた。



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