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メインストーリー
聞かせて
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はっと息を吞む。
開いた扉から姿を覗かせたのは、「歪み」が、サーティの仲間が探し求めていた、美しい彼だった。
シュラ兄さん……。
思わず立ち上がる。
「初めまして。俺はベリーベル。」
俺を見つめる瞳、優しい笑顔、柔らかな声、まさに心の底で渇望していたものだった。居心地の悪い不安が吹き飛び、悦びで全身がわななく。ふんわりと漂う爽やかな香りは記憶と何ひとつ違わない。
昔、初めて会った時もこんな風に笑いかけてくれた気がする。
また会えた。嬉しい、嬉しい。
「初めまして。ミラルカです。」
「ミラルカ~。俺みたいな子がいなくて退屈してたんだ。よろしく!わからないことがあったら、何でも聞いて。」
「うん。ありがとう。」
落ち着かないと。気を抜くと声が震える。笑顔はぎこちなくなっていないだろうか。
思いっきり抱きしめられたらな。でも兄さんから見れば、初対面だから。
「大丈夫?何かあった?」
兄さんがおろおろと顔を覗き込む。
「え?」
「泣いてる。」
「あ……。」
頬を触ったら、指先が濡れた。目から涙が溢れていることに、ようやく気づく。結局、溢れ出す感情を止めることはできなかった。
「ずっと苦しかったんだ。」
永遠のように思えた地獄の中で、もう会うことはない、会いたくもないとさえ思っていた。進み続ける時間の中で、取り返せない程に道は分かれてしまったから。
「辛かったね。もう大丈夫だよ。」
兄さんが頭を撫でる。優しい感触に、心が満たされていく。
名前も、サーティのことも、俺の事も全部忘れた可哀想な兄さん。だけど、正直何もかも忘れてくれた方が都合が良かった。
もう一度聞きたいんだ。あの頃のように、俺のためだけに言ってくれた言葉を。
聞かせて。俺だけに囁いて。
―― 愛してるって。
今度こそは、ちゃんと伝えるんだ。大丈夫、時間はいくらでもある。最初から、やり直せる。
ずっと一緒がいい。二度と兄さんが傷つかないように。
開いた扉から姿を覗かせたのは、「歪み」が、サーティの仲間が探し求めていた、美しい彼だった。
シュラ兄さん……。
思わず立ち上がる。
「初めまして。俺はベリーベル。」
俺を見つめる瞳、優しい笑顔、柔らかな声、まさに心の底で渇望していたものだった。居心地の悪い不安が吹き飛び、悦びで全身がわななく。ふんわりと漂う爽やかな香りは記憶と何ひとつ違わない。
昔、初めて会った時もこんな風に笑いかけてくれた気がする。
また会えた。嬉しい、嬉しい。
「初めまして。ミラルカです。」
「ミラルカ~。俺みたいな子がいなくて退屈してたんだ。よろしく!わからないことがあったら、何でも聞いて。」
「うん。ありがとう。」
落ち着かないと。気を抜くと声が震える。笑顔はぎこちなくなっていないだろうか。
思いっきり抱きしめられたらな。でも兄さんから見れば、初対面だから。
「大丈夫?何かあった?」
兄さんがおろおろと顔を覗き込む。
「え?」
「泣いてる。」
「あ……。」
頬を触ったら、指先が濡れた。目から涙が溢れていることに、ようやく気づく。結局、溢れ出す感情を止めることはできなかった。
「ずっと苦しかったんだ。」
永遠のように思えた地獄の中で、もう会うことはない、会いたくもないとさえ思っていた。進み続ける時間の中で、取り返せない程に道は分かれてしまったから。
「辛かったね。もう大丈夫だよ。」
兄さんが頭を撫でる。優しい感触に、心が満たされていく。
名前も、サーティのことも、俺の事も全部忘れた可哀想な兄さん。だけど、正直何もかも忘れてくれた方が都合が良かった。
もう一度聞きたいんだ。あの頃のように、俺のためだけに言ってくれた言葉を。
聞かせて。俺だけに囁いて。
―― 愛してるって。
今度こそは、ちゃんと伝えるんだ。大丈夫、時間はいくらでもある。最初から、やり直せる。
ずっと一緒がいい。二度と兄さんが傷つかないように。
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