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メインストーリー
祈りは、
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深暦2890年 2月26日 ユースプリング連邦
パイプオルガンの重厚な音色が教会に響き渡る。ステンドグラスから差し込む光が床に淡い影を落とす。燭台のろうそくの火が揺らめく。
レイは願う。
目の前で僕に祈りを捧げる子が、これ以上病に苦しむことがないように。
それだけでいい。
レイの黒い髪が根元から毛先にかけて、絵の具が垂れていくように赤くじわじわと染まる。
同時にその子供の腹の奥で執念深く巣食っていた病巣の気配がふっと消える。
「もう大丈夫」
レイは優しく子供の頭を撫でる。その姿は日の光に照らされ、後光が差しているようだった。
見上げる子供にとって、その声はどれほど神聖に聴こえただろう。その魔法は、まさに神の所業であった。
「軍司教さま、ありがとうございます。」
「ありがとうございます、ありがとうございます、うう……。」
すでに半泣きだった母親はどっと泣き崩れ、我が子をぎゅっと抱きしめる。毛玉が付いているセーター、ひとつに束ねられた髪にはおくれ毛が目立つ。
「神の御加護があらんことを。」
レイは微笑みを浮かべる。別れの挨拶に幸せを願うまじないをかけるのも忘れずに。
いつの間にか、髪の色は元通りに戻っていた。
「交代です。」
すぐそばに控えていた兵士が、淡々と親子に退去を促す。母親は嗚咽を漏らしながら小さな男の子の手を引いて、ふらふらと玄関口へと向かった。子供は手を引かれながらも振り返って、笑顔でレイに手を振る。親子の後ろで待っていた、若い夫婦がレイのもとへ進み出る。二人の表情は気疲れより緊張が勝っていた。親子の姿は人混みに紛れてすぐに見えなくなる。教会の外まで続く長い列が、また少し前へ進む。
教会のベンチも、奇跡を目撃しようと集まった敬虔な信者で埋め尽くされていた。
教壇からかなり離れた後方のベンチに、ベールをかぶった少女が座っていた。何重にも重なる信者の背中越しに、レイの手によって易々と叶えられる「願い」を瞬きもせずに見つめている。
レイの背後に佇む黒い影は、神聖な空気の中で鉛のように重くよどんでいた。
少女と影を認識する者は誰もいない。ただひとり、少女だけが影の正体を知っていた。
パイプオルガンの重厚な音色が教会に響き渡る。ステンドグラスから差し込む光が床に淡い影を落とす。燭台のろうそくの火が揺らめく。
レイは願う。
目の前で僕に祈りを捧げる子が、これ以上病に苦しむことがないように。
それだけでいい。
レイの黒い髪が根元から毛先にかけて、絵の具が垂れていくように赤くじわじわと染まる。
同時にその子供の腹の奥で執念深く巣食っていた病巣の気配がふっと消える。
「もう大丈夫」
レイは優しく子供の頭を撫でる。その姿は日の光に照らされ、後光が差しているようだった。
見上げる子供にとって、その声はどれほど神聖に聴こえただろう。その魔法は、まさに神の所業であった。
「軍司教さま、ありがとうございます。」
「ありがとうございます、ありがとうございます、うう……。」
すでに半泣きだった母親はどっと泣き崩れ、我が子をぎゅっと抱きしめる。毛玉が付いているセーター、ひとつに束ねられた髪にはおくれ毛が目立つ。
「神の御加護があらんことを。」
レイは微笑みを浮かべる。別れの挨拶に幸せを願うまじないをかけるのも忘れずに。
いつの間にか、髪の色は元通りに戻っていた。
「交代です。」
すぐそばに控えていた兵士が、淡々と親子に退去を促す。母親は嗚咽を漏らしながら小さな男の子の手を引いて、ふらふらと玄関口へと向かった。子供は手を引かれながらも振り返って、笑顔でレイに手を振る。親子の後ろで待っていた、若い夫婦がレイのもとへ進み出る。二人の表情は気疲れより緊張が勝っていた。親子の姿は人混みに紛れてすぐに見えなくなる。教会の外まで続く長い列が、また少し前へ進む。
教会のベンチも、奇跡を目撃しようと集まった敬虔な信者で埋め尽くされていた。
教壇からかなり離れた後方のベンチに、ベールをかぶった少女が座っていた。何重にも重なる信者の背中越しに、レイの手によって易々と叶えられる「願い」を瞬きもせずに見つめている。
レイの背後に佇む黒い影は、神聖な空気の中で鉛のように重くよどんでいた。
少女と影を認識する者は誰もいない。ただひとり、少女だけが影の正体を知っていた。
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