異世界最弱だけど最強の回復職《ヒーラー》

波崎コウ

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第六章 戦いの始まり

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 ――その時、耳に付けたヘッドセットから、セリカのけたたましい声が聞こえた。

「バカ! 『ガード』よ!『ガード』魔法を使いなさい!!」

 ああ、そういえば『ガード』の魔法なんてのがあったっけ。
 だけど、使ったこともない魔法をいきなり唱えるなんて器用なマネ、僕にはできなかった。

 本当にもうダメだ。
 後は全身にブスブス矢が刺さって、ハリネズミのようになって死ぬのを待つだけ――

 と、半ば覚悟を決めた僕の前に突如現れたのは、“小さな山”だった。
 その山は「ふんっ」と気合を入れると、僕を覆いかぶさるように立った。
 直後、無数の矢が辺り一面に降り注ぐ。

「トマスさん!!」

 山に見えたのはトマスだった。
 自らを盾にして、僕を矢の雨から守ってくれたのだ。

「ユウト、助けに来たぜ! 戦場慣れしてないお前じゃ、この状況はちょっときつかろうと思ってな」
 その後ろには、エリックの頼もしい姿もある。

「エリック!!」

「どうやら無事のようだな。よかったぜ、ユウト」

 エリックは矢の雨の中をくぐり抜けてきたというのに、まったくの無傷だった。
 が、トマスは僕を守るためかなりのダメージを受けたはずだ。
 早く魔法で回復してあげなければ――

「トマスさん、矢は――傷は大丈夫ですか? あれ?」

 驚いた。 
 見たところ、トマスの体には傷一つなかったからだ。

「これぐらいならダイジョウブ」
 トマスはニッコリと笑う。 

「さっき言っただろ。こいつは常人より体が頑丈にできてるんだって。だからあんまり気にすることはねえよ」
 と、エリックが事もなげに言った。

「さっきのオレイ……」
 トマスが恥ずかしそうに頭をかく。

「お礼?」

 礼を言われるようなことは何もしていないのに――

「だから昼飯のベーコンのことだよ。そのお礼がしたかったんだってさ」
 エリックが笑って言った。

 思い出した。
 お昼の時、食べ残しのベーコンをトマスにあげたんだっけ。
 でも、たったそれだけのことで命を張って助けてくれるとは、ずいぶん義理堅い人だ。

 そう思ってジーンとしていると――

「また矢が来ます!」
 リナが叫んだ。

「おい、トマス、頼むぜ」
 エリックが空を見上げ、叫んだ。

 トマスがうなずき、気合を入れ巨体を揺らす。
 すると、見事に何十本もの矢が、トマスの体に跳ね返って地面にバラバラ落ちた。

 この人は――
 と、僕はあることに気が付いた。
 
 ゲームに例えれば、トマスはまるで『タンク』の役割。
 盾役であるタンクが敵の攻撃を防ぎ、ヒーラーがその後ろでパーティのHPを回復する――
 オンラインRPGの職業ジョブそのものなのだ。

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