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第十二章 秘密

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 それにしても、セリカの奴め――!
 と、僕は改めて思ってしまった。

 今さら腹を立てても仕方ない。
 だが、最初に僕が『ルミナス』の魔法で敵の目を眩ましていれば、ロードラント軍は苦戦することなくコノート城まで退却できていたはずで、結果的に多くの人の命が失われることもなかっただろう。

 確かに『ルミナス』を使うという発想ができなかった自分にも非はある。
 しかし、異世界に来たばかりで魔法を使った経験もない僕に、そのことをアドバイスしてくれなかったセリカもかなり酷いと言えるのではないか?

 そういえば、なぜセリカが僕の使える魔法について詳しいのかもよく分からないい。
 現実世界でセリカは、オンラインRPGアナザーデスティニーのCMを見たことがある言っていたけれど、実際のプレイ経験はなさそうだった。
 なのにどうして、彼女は僕が唱えることのできる白魔法の種類を知っているだろう? 

 すべてが謎だらけのセリカ。
 ただ一つはっきりしているのは、彼女は安易に信用していい人ではない――
 その点だけだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『ルミナス』の輝きはすでに消えた。 
 ロードラント軍の兵士たちが目を開けた時には、多少の光は残っていたが、殺人的なまぶしさはもうなかった。

「おい、なんだなんだ」
「どうしたんだ? これ」

 上を下への大混乱に陥っているイーザ陣営と、地面をのた打ち回るコボルト兵を見て、みんなポカンとしている。

 もちろん戦いは自然に止んだ。
 アリスも目を開け、馬上から周囲を見回している。

 今ここで何が起ったのか、またこれから何をすべきなのか――
 聡明なアリスは、即座に思い付いたようだ。

(アリス王女、そうです! 今こそみんなでデュロワ城に撤退するチャンスなのです)
 僕はアリスにそう目配せをした。

 アリスが(了解した)とうなずき返し、再び号令を下す。

「皆の者、今が好機だ! さあ、私に続いて進め――!」

 すべて順調、僕の思った通り事は進んでいる。
 これでみんな必ず助かる。

 と、喜び勇んだその時――
 とんでもない事件が起こった。
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