異世界最弱だけど最強の回復職《ヒーラー》

波崎コウ

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第十五章 信条と約定

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 しかし僕は、ヒルダが何を言おうが何を企もうが、意外と冷静でいられた。

 というのも、この『イビルバインド』による拘束は、魔法効果を打ち消す白魔法『ブレイク』で解除できる。
 そう踏んだからだ。

 そして体さえ自由になれば、後はこちらのペース。
 油断したヒルダが近づいてくるのを待って不意を突けばいい。
 それなら魔法で反撃される心配もないし、シャノンが介入してくる時間もないだろう。 

 ただし一つ、問題があった。
 しかも究極の。

 それはセフィーゼと戦った時と違い、ヒルダには剣による脅しなどまず効かないだろうということだ。
 つまり、やるなら一思ひとおもいにヒルダの急所を突き、殺すしかない。

 しかし――

 普段の理性を取り戻しつつある今の自分に、敵とはいえ女性を、ためらいなく一撃で倒すことなど可能なのか?
 いや、それ以前に“人を殺す”という最後の一線を越える覚悟が、自分の中に果たしてあるのか?

 そこだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おい、キサマ!」
 ヒルダが僕に向かって吐き捨てるように言った。
「答える気がないのなら、ひとこと言っておこう。ワタシはキサマのような甘ったれた奴が死ぬほど嫌いだ!」

 甘ったれた奴?
 ヒルダにとっては、人を殺せない=甘ったれということらしい。

「キサマは回復者ヒーラーだろう? まったく回復者ヒーラーなんてやからは、いつも後方にいて偉ぶっている腐ったクズばかりだからな。キサマが安全地帯でのうのうとしている間、実際に戦い血を流しているのは誰か? 傷つき倒れていくのは誰か? キサマはそのことを今まで一度でも想像したたことがあるのか?」
 回復者ヒーラーに恨みでもあるのだろうか? ヒルダは憎しみのこもった声でまくし立ててくる。

 ヒルダの主張はまったくの言いがかりで、難癖に近い。
 けれど――その考え方にも一理あるのかもしれない。
 僕はそんな風にも思ってしまった。
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