436 / 512
第二十六章 デュロワの包囲戦
(33)
しおりを挟む
「お呼びでしょうか、男爵様」
シスターマリアは聖女のオーラを発散させながら、しずしず執務室の中に入ってきた。
「わざわざ呼びつけて済まないわね、シスター。で、早速お願いがあるんだけれど――」
「男爵様、要件は察しがついております。これから始まる戦いに備え、負傷した方々を受け入れる態勢を急ぎ整えてほしい――そういうことではごさいませんか?」
「さすがシスター、その通りよ。あなたにはここにいるユウちゃんと組んでもらって負傷者の治療を是非お願いしたいの。本当は聖職者であるあなたを戦いに巻き込みたくはないのだけれど……」
「男爵様、お気遣いには及びません。わたくしが軍に同行した目的は戦いで傷ついたみなさんの面倒を見るため。そしてそこにユウト様が加わってくださるのなら、まさに天佑神助。神のおぼし召しですわ」
「ありがと! ユウちゃんもそれでいい?」
本当なら今すぐにでもリナのところへ飛んでいきたいが、この状況で断れるはずもない。
それに今回はシスターマリアという心強い回復要員がいてくれるのだ。
協力して負傷者の治癒に当たり、戦闘がひと段落したら、彼女に事情を打ち明け、城を抜け出すことができるかもしれない。
「ええ、了解しました」
と、僕はうなずいた。
「じゃあ二人とも急いで頼むわね」
男爵が僕とシスターの肩に手を置いた。
「 あ、当然のことかもだけど城の施設を自由に使ってね。それと物資だけでなく人員――メイドたちにもあなたたちに最大限協力するよう伝えておくから。 ――あらッ!!」
と、その時、突然「ドン、ドン」と大きな衝撃音が連続して響いた。
今までは静寂は嵐の前の静けさだったのか、聞き覚えのあるこの音は――
「どうやら始まったようね」
と、男爵が顔をしかめる。
「あれはきっと投石機を使って石をブン投げている音だわね。でも大丈夫。この城は高い城。そう簡単には防御を崩せないから」
そうか。
セルジュが単独でワイバーンを使い真っ先に上空から攻撃を仕掛けてきたのは、おそらく普通の方法ではデュロワ城の城壁を破壊できないと踏んだからだろう。
それだけこの城の守りは固いに違いない。
「さあ参りましょう、ユウト様」
と、シスターマリアが言った。
「この戦いおそらく今までにない激しものになるでしょう。それだけ多くの方が傷つくに違いありません。及ばずながらも、そんな方々を一人でも多く救うことが神が私に与えし使命なのです。ですからユウト様もどうかご助力ください」
「は、はい」
シスターの聖職者の威厳と高邁な志に圧倒されながら、僕は彼女とともに執務室を出た。
すると、投石の音に加え、人間の怒声と獣の咆哮が入り混じった、激しくうねるような雄叫びが外から聞こえてきた。
ついに始まった。
数万のコボルト兵と数千のイーザ騎兵の連合軍が、デュロワ城に一斉に攻撃を開始したのだ。
この一気呵成に城を攻め落とそうとする感じ――その様子は見えずとも、どうやら二つの軍はそれなりに連携と統制は取れているらしいことぐらいは分かる。
最後に生き残るのは、僕らか、あるいは彼らか――
シスターマリアは聖女のオーラを発散させながら、しずしず執務室の中に入ってきた。
「わざわざ呼びつけて済まないわね、シスター。で、早速お願いがあるんだけれど――」
「男爵様、要件は察しがついております。これから始まる戦いに備え、負傷した方々を受け入れる態勢を急ぎ整えてほしい――そういうことではごさいませんか?」
「さすがシスター、その通りよ。あなたにはここにいるユウちゃんと組んでもらって負傷者の治療を是非お願いしたいの。本当は聖職者であるあなたを戦いに巻き込みたくはないのだけれど……」
「男爵様、お気遣いには及びません。わたくしが軍に同行した目的は戦いで傷ついたみなさんの面倒を見るため。そしてそこにユウト様が加わってくださるのなら、まさに天佑神助。神のおぼし召しですわ」
「ありがと! ユウちゃんもそれでいい?」
本当なら今すぐにでもリナのところへ飛んでいきたいが、この状況で断れるはずもない。
それに今回はシスターマリアという心強い回復要員がいてくれるのだ。
協力して負傷者の治癒に当たり、戦闘がひと段落したら、彼女に事情を打ち明け、城を抜け出すことができるかもしれない。
「ええ、了解しました」
と、僕はうなずいた。
「じゃあ二人とも急いで頼むわね」
男爵が僕とシスターの肩に手を置いた。
「 あ、当然のことかもだけど城の施設を自由に使ってね。それと物資だけでなく人員――メイドたちにもあなたたちに最大限協力するよう伝えておくから。 ――あらッ!!」
と、その時、突然「ドン、ドン」と大きな衝撃音が連続して響いた。
今までは静寂は嵐の前の静けさだったのか、聞き覚えのあるこの音は――
「どうやら始まったようね」
と、男爵が顔をしかめる。
「あれはきっと投石機を使って石をブン投げている音だわね。でも大丈夫。この城は高い城。そう簡単には防御を崩せないから」
そうか。
セルジュが単独でワイバーンを使い真っ先に上空から攻撃を仕掛けてきたのは、おそらく普通の方法ではデュロワ城の城壁を破壊できないと踏んだからだろう。
それだけこの城の守りは固いに違いない。
「さあ参りましょう、ユウト様」
と、シスターマリアが言った。
「この戦いおそらく今までにない激しものになるでしょう。それだけ多くの方が傷つくに違いありません。及ばずながらも、そんな方々を一人でも多く救うことが神が私に与えし使命なのです。ですからユウト様もどうかご助力ください」
「は、はい」
シスターの聖職者の威厳と高邁な志に圧倒されながら、僕は彼女とともに執務室を出た。
すると、投石の音に加え、人間の怒声と獣の咆哮が入り混じった、激しくうねるような雄叫びが外から聞こえてきた。
ついに始まった。
数万のコボルト兵と数千のイーザ騎兵の連合軍が、デュロワ城に一斉に攻撃を開始したのだ。
この一気呵成に城を攻め落とそうとする感じ――その様子は見えずとも、どうやら二つの軍はそれなりに連携と統制は取れているらしいことぐらいは分かる。
最後に生き残るのは、僕らか、あるいは彼らか――
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる