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第2章 王都 学園初等部生活編

第38話 初めての授業は...

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次の日、私たちは昨日と同じようにご飯を食べて屋敷を出た。

馬車に揺られ、学園に着く頃にはまた酔った。でも前よりましにはなってきている......と思う。

教室に入るとまたキャサリンが同じ席に座っていた。

「おはようですわ!」
「おはよ!」
「おはよ。朝から元気だねぇ」

私は前世もそうだったが、朝はとても苦手なのだ。だからキャサリンみたいに朝から元気な人はいいなーって思ってた。

「だっていよいよ今日から授業なのですよ!しかも!あの6大英雄のカトリーナ様から教えて貰えるのですよ!」
「う、うん。そうだね...」

どんどん顔を近づけながら話してくるもんだから圧が凄いよ...。でもカトリーナってそんなに人気があったんだね。街に出かけてもそこまで騒ぎにならなかったから、気にしてなかったや。

「はーい、席についてね。出席とるよー」

リーナ...じゃなくて、カトリーナ先生が入ってきた。昨日と同じで私からだった。

「はい。全員いるね。じゃあ早速授業を始めるよ」

前にも言ったけど、この教室には黒板がない。じゃあどうやるのかとカトリーナ先生にきいたら、

「魔力を使って空中に字を書くのよ」

とのこと。実際目の前でやっている。文字の色は白色、なんかふよふよ浮かんでて面白い。

「では今日は地理からよ。皆さん教科書を出してね」

そう言われたので、みんなカバンから教科書を出し始めた。このカバンは学校が支給しているもので、中が魔法で拡張されている。カバンに付いている金属のプレートに自分の血を1滴垂らすことで、その本人にしか使えなくなるんだって。私はアイテムボックスに全部入っているけど、注目を引きたくないので、カバンから出すふりをした。

「では1ページを開いてね」

教科書は前世でよく使っていた教科書によく似ている。開けてみると写真ではなく絵などが描かれていた。7歳ってだけあって、本格的にやるのはまだ先らしく、簡単な説明書きしか無かった。


...今更だけどいつもの口調に戻ってるね。


「今日は4大陸についてよ。私たちが今いるメルギヤ大陸の他に3つの大陸があるわ。まず1つ目は『カタリナ大陸』よ。ここには獣人族とエルフ族が住んでいるわ」

へー、その2種族が主に住んでいるのね。獣人族はあまり人間にいい感情は持っていないらしい。何故かというと、昔人間が獣人族を奴隷として使うためによく誘拐していたから。今は大陸間で協定が成されて奴隷制度は廃止になったけど、まだ奴隷は後を絶たないし、昔の溝はそう簡単には埋まらない。

エルフ族は魔法に秀でた種族で、争いを嫌う。長寿で有名だが、エルフの血を飲めば長生き出来るという根も葉もない噂がたち、長寿を求めた人間と争いになったことがある。その争いはエルフの勝利だったが、被害はとても大きく、今でも人間を恨んでおり、友好関係は宜しくない。それでも少しづつ関係は回復してきている......らしい。




......これだけ聞くと人間がいかにバカで自己主義なのかが分かるね。


「カタリナ大陸には争いを嫌い、逃げてきた人々もいるわ。そういった人々を受け入れることは滅多としてないけれど、心が綺麗だと判断された場合は、受け入れてくれたりするわ」

心が綺麗、か...

「先生、心が綺麗ってどうやって分かるんですか?」

お、私の斜め前にいる女の子が質問した。名前は確か..."ペトラ"だったかな?

「それはエルフ族に伝わる特別な魔法で分かるのよ」

そうカトリーナ先生は答えた。確かにエルフだし、そういうことが得意なのかな。

「ただ、この魔法を知っているのはエルフの族長だけで、その族長に会うまでがかなり厳しいから、ほとんど受け入れられることがないのよね」

...それ、むりじゃない?

「だからエルフ族に受け入れられなかった人は、獣人族の所に行って頼み込むか、何処かに村を作って生活していたりするわ。そこでの生活から認められることもあるわ」

なるほど。受け入れて貰えなくても自力で生活すればいいのか。ただ、生活用品とかを買うのは大変そうだね。

...ていうか、さすがSクラスと言うべきか...他のクラスはここまで詳しくはやらないだろうね。


「次は『ヴォルケーノ大陸』。ここには主にドワーフ族が住んでいるわ。この大陸の真ん中には大きな火山があって、その影響で気温が少し高いわ」

ドワーフ族...あの武器屋の人もドワーフだったね。ドワーフは手先が器用で、防具作りや武器作りを得意としている。まぁ全体的に言えば鍛冶が得意。魔力量は少なく、あまり魔法は使えないけど、技術力はとても凄い。だからこそ、ドワーフの造る物はとてもいい。

「それに豊富な鉱物資源があるわ」

多分ドワーフがここに住んでいるのはそれが一番の要因だろうね。鍛冶が出来ても材料が無ければなにも造れないものね。

「最後は『トルメヤ大陸』。ここには主に魔人族が住んでいるわ」

魔人族は魔力量が多く、力も強い。だからこそ、戦争をふっかけようとする国は無くて、平和。意外にも争いを好まない。ただ、戦うならば容赦なく潰すという考え方をしている...らしい。魔人族は総称で、ダークエルフ族とか、鳥人族とかをひっくるめている。鳥人族は獣人族に似ているけれど、体の作りが根本から違うらしく、別の種族となっている。ダークエルフ族はエルフ族によく似ているが、肌が少し黒い。得意とするのは闇魔法で、その威力は魔力量と相まって強力。

「この大陸にはダンジョンが多くあって、そこからとれる魔石を加工して作った魔道具が、主な輸出品よ」

ダンジョンとは何処かにいきなりできる地下迷宮みたいなもので、中には大量の魔物が生息する。この魔物が一定量を超えると、あの時のようなスタンピードが起こる。だから定期的にハンターが中に入って魔物を狩っている。

この国にもダンジョンはあるんだけど、そこに入るには最低でもランクがDないとだめらしい。私はこの前ランクアップしたのでF。だからまだまだかな。


「魔人族とは友好関係が良くて、あなた達は中等部になったら行く予定よ」

え?!それは初耳なんですけど?!

この学園は初等部、中等部、高等部があり、7~9歳は初等部、10~12歳は中等部、13~15歳は高等部、といった具合だ。だから10歳になったら行くことになる。

...正直、とても楽しみ。だってせっかくなら色んな大陸に行ってみたいもんね。


「あ、もう時間ね。じゃあ今日の授業はここまでね」
「「「「「ありがとうございました」」」」」

初等部なのですぐに終わる。来年くらいになると昼までやることになって、学園にある食堂を使うことになる。

「フィリアさん達は、明日からどうするのですか?」

明日は休み。だから久しぶりにハンターとしての仕事をしたいかな?

「依頼でも受けよかなーって」
「依頼...ということはお二人共ハンターなのですか?」

あ、そういえば言ってなかったっけ。

「うん。そうだよ」
「そうでしたの(ではわたくしも...)」
「うん?なにか言った?」
「いえ?!ではさようならですわ!」

そう言ってキャサリンは去っていった。

「私たちも帰ろっか」
「うん!」

私たちは行きと同じく馬車に乗り、屋敷に帰った。

「おかえりなさいませ」
「ただいま」

執事のセバスチャンさんと会話を交わして、中に入る。すると...

「フィリア!会いたかったぞ!」






...............何故かパパがいた。
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