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連れてきた

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 とりあえず一番問題だったのはウィルフレッドだけだった。あとの子達は普通に家族の元へ返したよ。無論、誘拐されたことは言わないよう口止めしてね。
 ただ……やっぱりというか、みんな戦争という言葉に過剰に反応した。だから言わないで頼んだ時もしっかりと頷いたんだけど……それだけ、は深いか。

「……で。あなたはどうしようか」
「………」

 そう。実は1人だけ残っちゃったんだよね。獣人の女の子。この子はねぇ……実の親から売られたらしいんだ。だから帰る場所がない。

「……ひとまず、うちくる?」
「……(コク)」

 頷いてくれたので、早速転移する。転移先はわたしの書斎。
 
「お帰りなさいませ……おや、その子は?」

 すぐさまアニスが獣人の女の子の存在に気付いた。
 その当の本人は、キョロキョロと忙しなく視線をさまよわせている。驚きからかな。

「まさか誘拐…」
「何故わたしがそんなことしなきゃならん!」
「冗談です」

 全く……ほんとにコイツはわたしを上司だと思ってるんだろうか。

「訳ありよ。お風呂に連れてってあげて」
「分かりました。では、こちらへ」

 アニスが未だキョロキョロしていた女の子の手を取り、お風呂へと連れていった。さてと……意見書書くか。

◆◆◆

「あの……」
「なんでしょうか?」

 手を繋ぐ獣人の女の子に怖がられないよう、優しく話しかける。

「こ、ここはどこです…か?」

 ……ユーリ様、何も言わずに連れてきたんですね。誘拐って言葉ある意味合ってたのでは……

「ここは……城です」
「し、ろ?」
「はい。魔王城。正確には、東の魔王城と呼ばれています」
「東の、魔王城……どうして、こんな所に…」
「えっとですね……連れてきて下さった方、分かります?」
「は、はい。真っ白な髪の…綺麗な子」

 子。

「……どうした、です?」
「…いえ。少し」

 いけません。不覚にも笑ってしまいました。
 ……後で怒られそうです。

「その方が、この城の主だからですよ」
「………え?」

 驚くのも無理ないです。誰だって言われなければ分かりませんから……

「え、あるじって…つまり」
「はい、魔王様ですよ」
「……ええぇぇ!?」
「あ。着きましたね。では入りましょうか」
「えぁちょっと待って!待って、下さい!えぇ!?」

 未だ理解が追いつかない女の子をお風呂の担当へと引き継ぐ。ちゃんと話しますから今は入ってください。


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 書きだめ無くなった……1~2日に1話更新出来たらいいかなぁ、と…すいませんm(_ _)m

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