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手伝いするかぁ

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 ディルヴァーと手をまた繋ぎ、今度こそ城の中へと転移する。
 転移して真っ先に見えたのは……書類の山。

「あちゃぁ……ここまで増えてるか…」

 …これ全部仕事の書類なのね。天井まで届きそうなんだけど。

「あ!親父!やっと帰ってきた…」

 資料の山から見覚えのある少年が出てきた。
 間違いない。あそこで助けたウィルフレッドだ。見た感じ元気にしてるようで何よりだね。

「どうした、この山?」
「なんかいきなり増えたんだよ…俺じゃあ処理できないもんもあって、今親父呼ぼうとしてたんだ。ちょうど良かったよ」
「そうか。……その、ユーリ。頼みがあるんだが…」
「……はぁ。手伝えばいいんでしょ」
「助かる」

 そもそもわたしだって帰ったら仕事山積みだと思うけど……まぁ、仕方ない。仲間だし、わたしでもここまで仕事が一気に大量に来たことはほぼ無いからね。
 ……わたしは毎日小出しで多分これと同じ量出されてるけど。多分こっちもそれは一緒だよね。今日がまとめてだっただけで。

「……あの時の」

 ここでウィルフレッドがわたしの存在に気付いたらしい。あれか?背丈か?低くて見えなかったのか!?
 ……自分で言っててダメージを受けるからやめよ。

「(ところでディル。わたしのことどれだけ話した?)」
「ん?あぁ、魔王ってことくらいだな」

 少な!?あぁでもそっちのほうがいいか。

「久しぶり…って程でもないか。あの時はユナって言ったけど、本当はユーリっていうの。改めてよろしく」
「あ、あぁ聞いたよ。東の魔王だって……俺より歳上だったのかよ」

 ……歳の話もしたのか。

「あんまり言わないでね?」
「あー…まぁそれは勿論なんだが…多分言っても誰も信じねぇだろうな…」
「ぶふっ」

 ……ひとまず笑ったディルは蹴ろう。そうしよう。

「いてっ!」
「やるよ。ほら」
「へいへい」

 とりあえずディルから言われた範囲の書類を片付けることにする。
 

 ……今更だけど、これって国の重要機密だよね。わたしが知っていいの?

「お前さんに隠し事しても意味ねぇだろうから、別に問題ない」
「……信用されてるんだか、されてないんだか」
「してるしてる」
「はぁ…ほら、手止まってる」
「…相変わらずスペック高ぇな。話しながらなのに俺より速いじゃねえか」
「…見れてるのか、それ」
「見てるよ。ちゃんと。…完全に記憶もしちゃってるけど」
「…忘れることは?」
「無理」

 無駄に高スペックだからなぁ……まぁ、国防費とかを忘れる努力はしよう。
 


 


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