魔王様、仕事して下さい!

家具屋ふふみに

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空の散歩

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 アーテルがいる騎獣舎は、天井が可動式となっている。なので、直接飛び立つことが出来る。

『どこまでいくの?』
「ぶらぶらと散歩かな。マリもいるから、速度は抑えてね」
『わかったっ!』

 …本当に分かっているのか怪しいが、まぁ大丈夫だろう。

「マリもしっかり掴まっててね」
「は、はい」

 一応騎獣なので、乗るための鞍はある。その持ち手をマリに握らせ、わたしは全体を包むように防風の結界を展開した。

『いっくよー!』

 その直後、ドンッ!と空気が割れるような……否、割れた音が響いた。騎獣舎壊れてないかな…

「きゃぁぁ!?」

 あまりの速さにマリが悲鳴をあげる。けれど、マリが落ちないように結界で固定しているし、防風の結界もさっき張ったので、危険はない。

 アーテルのスピードは瞬く間に加速していき、あっという間に雲を突き抜けていた。

「はぁぁぁ…」

 アーテルがスピードを緩めて雲の上を飛ぶと、マリが安堵の溜息を零した。ほぼここまで垂直で飛んできたからね…

「怖かった?」
「当然ですっ!!」

 おっと。少しマリが涙目だ。

「でも、アーテルが加減してこれだもんなぁ…」
「これで、加減……」

 そう。この速さでもアーテルは加減しているのだ。本気になったら……多分、わたししか乗れない。

「…飼い主に似る」
「何か言った?」
「いえっ!?なにもっ!」

 そうかな?まぁいいか。

「ほら。綺麗だよ」
「え…うわぁ!」

 雲の上の世界や、雲の切れ目から覗く地面の光景。それらを見てマリが感嘆の声を上げる。

「こうして空から見ると、また違って見えますね」
「そうだね。視点を変えてみると、全く違って見えるからね」

 景色だけじゃない。物事だって、時には視点を変えてみることも大切だ。そうしないと、見つけられないこともあるから。

「……まさか、それを伝えるために?」
「さぁ?どうだろう」

 まぁその思惑がなかったと言えば、嘘になる。
 マリはこの世でただ1人の銀狼族。だからこそ、広い視野を持って欲しい。間違いを冒さないように。ヒトを見分けられるように。

『久しぶりにここまで飛んだなぁ』
「そうだねぇ。最近一緒に飛べてないし」

 こう見えてアーテルはまだ幼体だ。
 黒龍、というか、龍全般は飛ぶために魔力が必要になる。体を軽くしたり、羽ばたく際に発生する風を強くする為だったりね。
 その点アーテルはまだ幼体で、魔力量が少ない。だからそう頻繁に高くは飛べなくて、こうして雲の上を飛ぶには、直接わたしから魔力の供給を受けないと難しいんだよね。

「これで、幼体ですか…」
「大きさはもう大人なんだけどねー」

 大体大人まで半分の年齢と言ったあたりになると、もう大人の体の大きさになる。なので、そのタイミングで成長はほぼ止まる。
 アーテルはもうそこまできているので、これ以上体が大きくなることは無いんだよね。

『主も一緒?』


 ……うるさいやい。




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