47 / 55
過去の記憶
しおりを挟む
しばらくマリと空中散歩を楽しんでいると……少し厄介な場面に遭遇してしまった。
「ユーリ様…」
「……うん。ちょっと待っててね」
「…え、どうやって行くのですか…?」
「うん?こうやって」
マリをアーテルの背に残し、わたしはその場から飛び降りる。
「えぇっ!?」
『心配しなくても主は大丈夫だよ。飛べるし』
あ、そっか。言ってなかった。
「いきなりでごめんね。心配しないでいいよ。アーテルはマリを連れて帰って」
『りょーかい』
「…お気を付けて」
「もちろん」
さあってと。その遭遇した厄介な場面なんだけど……村がね、魔物に襲われちゃってたんだ。小さな村ではあるけれど、さすがに見殺しには出来ない。まぁもとより、見て見ぬふりをするという選択肢はないんだけどね。
「…これでいいか」
魔法を構築し、魔力を放出する。そして、それぞれの射線を固定し、自動追尾を設定……よし。
「…"穿て"」
たった一言。それだけで、魔力によって構築された不可視の槍が魔物へと襲いかかる。
自動追尾をしている為、絶対命中。さらに人には当たらないよう、しっかりと計算している。助けるのに怪我させたら元も子もないからね……。
不可視の槍は、寸分の狂いなく魔物を刺し殺した。残りは……いないな。
「さて。村の様子は……」
そこでわたしは、村の人々の目を見てしまった。
……それは、かつて見たことがある瞳。
怯え、恐怖の色に染った瞳。
「…っ」
それが必ずしも、わたしに対してそう感じている訳では無い。先程の魔物に対しての感情でもあるだろう。
……けれど、そう分かっていても、わたしの中に渦巻く感情があった。
「……違う。これは違うの」
自分自身に言い聞かせる。……しかし、体は正直だ。震えが止まらない。
「……っ」
わたしはその場から転移で消え去る。
あの瞳を見たくなくて。
あの瞳から逃れたくて。
「おかえりなさいませ。……どうかしましたか?」
執務室に直接転移すると、アニスがそう聞いてきた。
……やはり、バレてしまうか。
「……体洗ってくる。誰も入れないで」
「……かしこまりました」
そう言ってわたしは足早に、浴室への通路を進んだ。
「ユーリ様…」
「……うん。ちょっと待っててね」
「…え、どうやって行くのですか…?」
「うん?こうやって」
マリをアーテルの背に残し、わたしはその場から飛び降りる。
「えぇっ!?」
『心配しなくても主は大丈夫だよ。飛べるし』
あ、そっか。言ってなかった。
「いきなりでごめんね。心配しないでいいよ。アーテルはマリを連れて帰って」
『りょーかい』
「…お気を付けて」
「もちろん」
さあってと。その遭遇した厄介な場面なんだけど……村がね、魔物に襲われちゃってたんだ。小さな村ではあるけれど、さすがに見殺しには出来ない。まぁもとより、見て見ぬふりをするという選択肢はないんだけどね。
「…これでいいか」
魔法を構築し、魔力を放出する。そして、それぞれの射線を固定し、自動追尾を設定……よし。
「…"穿て"」
たった一言。それだけで、魔力によって構築された不可視の槍が魔物へと襲いかかる。
自動追尾をしている為、絶対命中。さらに人には当たらないよう、しっかりと計算している。助けるのに怪我させたら元も子もないからね……。
不可視の槍は、寸分の狂いなく魔物を刺し殺した。残りは……いないな。
「さて。村の様子は……」
そこでわたしは、村の人々の目を見てしまった。
……それは、かつて見たことがある瞳。
怯え、恐怖の色に染った瞳。
「…っ」
それが必ずしも、わたしに対してそう感じている訳では無い。先程の魔物に対しての感情でもあるだろう。
……けれど、そう分かっていても、わたしの中に渦巻く感情があった。
「……違う。これは違うの」
自分自身に言い聞かせる。……しかし、体は正直だ。震えが止まらない。
「……っ」
わたしはその場から転移で消え去る。
あの瞳を見たくなくて。
あの瞳から逃れたくて。
「おかえりなさいませ。……どうかしましたか?」
執務室に直接転移すると、アニスがそう聞いてきた。
……やはり、バレてしまうか。
「……体洗ってくる。誰も入れないで」
「……かしこまりました」
そう言ってわたしは足早に、浴室への通路を進んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
31
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる