化け物は化け物らしく消えることにします

家具屋ふふみに

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化け物らしく消えることにします

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 私は生まれた時から、家族に怯えられ、恐怖の目線を向けられていました。
 まぁその理由は分かります。私は、強大な魔力を持ち合わせて生まれてきたようなんです。
 
 魔力持ちというのは、珍しいことではありません。ただ、魔力を持つかどうかは神のみぞ知る。生まれるまで分からないということです。
 なのでたとえ両親が魔力持ちでも、その間の子供が魔力を持っているとは限らないのです。
 そして私の両親は生憎、魔力を持っていませんでした。その結果、魔力暴走を起こした私を抑えることが出来なかった。
 
 強い魔力を持って生まれた子供は、その制御が上手くいかず、制御出来るようになるまでは、よく魔力暴走を起こします。
 そのため、魔力を持って生まれた子供には、生まれた時から制御装置を身につけます。その装置はネックレスだったり、腕輪だったり……首輪だったりします。
 
 そしてまぁ私も付けていましたよ…首輪を。
 私は生まれた時はそこまで怯えられてなかったんです。でも、3歳の時でしたでしょうか?転んでしまったんです。転んで膝を擦りむいて…泣きました。
 普通の子供ならそこで終わりです。ですが、私は強い魔力を持っていた。まだ魔力の制御もロクに出来ない子供でしたからね。案の定魔力を暴走させましたよ。
 
 その結果地面は割れ、私に付いていた侍女は怪我をしました。まぁ怪我しただけで良かったですよ。もしかしたら…命が無かったかもしれませんからね。
 え、制御装置ですか?付けてましたよ?
 ……壊れましたが。
 
 パリンっという音を立てて、制御装置が壊れたときの侍女の顔は今でも覚えていますよ。
 一瞬で恐怖に染まる顔を、ね。
 
 それからというもの、私はより家族から恐れられ、化け物と呼ばれて、自分の部屋へと閉じ込められました。まだ3歳ですよ?家族に甘えたい年頃なのに遠ざけられる。これほど辛いことはないと思いません?
 
 でも私はそんな事は一切思いませんでした。ていうか、ここまで自分の体験をペラペラと喋れるのも凄いと思いますが。
 というのも、私はただの3歳児ではないんです。漠然とした記憶しかありませんが、かつてここでは無い世界で生きていたという記憶があります。だから客観的に物事を捉えられたんですよ。
 
 とりあえず、私はそれからずっと部屋に閉じこもりました。私も相手を傷つけることはしたくありませんでしたからね。
 
 「ねぇ?本を持ってきてくれる?」
 「か、かしこまりました!」
 
 だからってなにもしないというのは暇なんですよ。幸いと言っていいのか、一日に何回かは侍女が世話をしにきます。その度に誰かを捕まえて本を頼んでいるんです。
 ……怯えられるのは仕方ありませんが。
 
 「こ、これでいいでしょうか?」
 「ええ。ありがとう」
 
 ちゃんと本を持ってきてくれた侍女に笑いかけました。すると顔を赤くして足早に去っていってしまいました。もうちょっと会話をしたかったんですが…仕方ないですね。
 
 「持ってきたのは…魔法書?」
 
 小説を持って来るかと思っていたのですが、意外ですね。
 ちなみに私が今住んでいるのは家族が住んでいる本宅から離れた別宅です。それ故に、家族とは全くと言っていいほど話していません。まぁ気持ちは分かるので別に気にしていませんが。
 
 「なるほど…これなら暴走しなくて済むかも」
 
 実はあの暴走の後、何回か同じ魔力暴走を起こしていました。でも、その魔力暴走は感情が高ぶったからではありませんでした。
 魔力暴走の原因としては感情の高ぶりが一般的なんです。でも、私は違った。突然魔力が高まって、暴走しだしたんです。これには私も慌てましたよ。全くもって制御が出来ませんでしたから。
 
 魔力暴走は基本魔力制御を訓練することで抑えられます。ですが私はその訓練をしていなかったので、暴走したようなものなんです。そして今回侍女が持ってきてくれた魔法書には、その訓練の仕方が載っていました。
 
 「まず体内の魔力を高めて抑え込む…」
 
 体内にある熱い感覚。それが魔力です。いつもは無理やり抑えていたそれを、少しづつ高めていきます。
 
 メキッ!ビシッ!
 
 「あっ!」
 
 すこし緊張して高めすぎてしまったようです。壁と床にヒビが入ってしまいました。
 
 「大丈夫。落ち着いて…」
 
 今度は落ち着きながら、慎重に高めて、その高めた魔力を抑え込むことが出来ました。それにより、感覚として今の私の魔力を知ることが出来ました。
 ………しかし、私は気づいてしまったんです。
 
 
 ──生まれた時とは比べ物にならないほど、魔力が増えているということに。
 
 成長期ならば有り得る話ではあるようです。ですが、それでも異常というものです。
 
 「これは…まずかったかも」
 
 あまりに増えすぎた魔力は抑え込むことが出来なくなります。今回侍女がこの本を持ってきてくれなかったら…それこそ、ここら一帯が焦土と化していたかも知れません。
 
 「ひとまず魔力制御。それから魔法の訓練と体力作りね」
 
 魔力があったからといって、魔法が使えるかはその人の素質次第らしいです。そのため訓練が必要なんだとか。それとずっと部屋に引きこもっていたので、ある程度の体力作りは必要ですね。
 え?なんでそれが必要なのかって?
 
 
 
 
 
 
 
 ………化け物は化け物らしく、消えるのが良いんですよ。恐らくそこまで気にもしないでしょう。寧ろ肩の荷がおりたと安心するかも知れませんね。

 あぁ、消えるっていうのは死ぬってことじゃありませんよ。簡単に言ったら…家出です。二度と帰ってこない家出。
 
 今から楽しみになってきました。とりあえず、今は寝ることにしましょう。おやすみなさい…
 
 
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