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第2章
2ー5 情報収集その2
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次の日、エレナは起きて下に降りると、サラが笑顔で出迎えた。
「おはようございます。朝ごはん、食べます?」
「食べようかな」
「はい、すぐ持ってきますね──あ、そうだ」
何かを思い出したかのようにサラが呟く。
そしてそのままエレナへと近づいた。
「何か?」
「えぇっと…これをエレナという人に渡して欲しいと言われたんですが…」
おずおずとサラがエレナに差し出したのは、一通の手紙だった。
それはエレナにとって、とても見覚えのあるものだった。
「あぁ、それは私宛のものよ、ありがとう」
宿手帳にはエレナと書いていたので、それで分かったのだろう。
「そうですか……」
何故か釈然としない様子のサラ。
「どうしたの?」
「その……これを持ってきた人が…」
そこまで聞いて、エレナはなにが言いたいのかを理解した。
「騎士の人が持ってきた?」
エレナが問いかけると、サラは驚いた様子で目を見開いた。
「はい…もしかしてお姉さん、なにか悪いことでも…」
「そんなことするはずないでしょう。ちょっとした知り合いよ」
「ちょっとした……」
それでも納得できないらしい。
「そろそろ混み始めるよ。行かなくていいの?」
「あ!すいません!では!」
エレナに手紙を渡し、サラはバタバタと慌ただしく去っていった。
その後ろ姿を見送った後、エレナは自身の手にある手紙に目を落とした。
「部屋で読もう」
ここでは人目があるため、部屋で読むことにしたようだ。亜空間に収納すると、エレナは近くの席へと座った。
そしてすぐにサラが食事を持ってきた。ベーコンエッグにパン、サラダにスープといった、少ししっかりめの朝食だった。
「お待たせしました!」
元気にそういうと、サラはまた別のテーブルへと食事を運んで行った。相変わらず忙しそうである。
「いただきます」
手を合わせて食べ始める。朝はガッツリしない系のエレナが食べるには、少々多めではあったが、味が良かったので、すべて食べ切ることができた。
「ご馳走さま。食器は…」
エレナは辺りを見渡す。どうやら皿は置いておくと、勝手に回収するようだ。
周りにならいエレナは皿を置いたまま、席を立って部屋へともどった。
部屋に入り、結界で入れないようにしてから、エレナは収納から手紙を取り出して、読み始めた。
「うん、長ったらしい文は相変わらずね」
と言う言葉とともに苦笑を零すエレナ。その手紙は、昨日エレナが男を送った兵からであった。
長すぎる文は、真剣に読めば相当時間がかかるが、大体は無駄な文なので読み飛ばしても構わなかった。
読み飛ばして理解した内容は、男の罪の確定と、その後の処罰についてであった。
「ふぅん。前科があったのか」
手紙によれば、男は元冒険者であったが、日頃の行いが目に余るため除名処分されたようだ。そして路地裏など、警邏する兵が少ない場所を狙って強盗まがいのことをしていたようだ。
「今回証拠がきっちりしていたから、鉱山送りね」
当然の処罰と言えた。なぜなら、男は人殺しさえも厭わなかったのだから。
「最後は……これ、ただの文句だよね」
手紙の最後は、つらつらと文句のような愚痴のようなものが、延々と書かれていた。
「……菓子包でも持っていこうかな?」
だが兵が菓子を食べるだろうか?と思いながらも、エレナは他に思いつかなかったので、収納にあった手頃な菓子包を送っておいた。
「顔出すのはこれが終わってからかな」
とりあえずはこれで勘弁してくれ、と念を送るのであった。
「さてと」
エレナは手紙を収納すると、今日の予定をざっと決めた。
「まずはスラム街かな」
そう思い、エレナは宿を出ることにした。
下に降りれば人が少なくなりやっと休めるようになったサラがいた。
「あ、お姉さん。出かけるの?」
「そうよ。あ、延長ってできる?」
「できますよー。同じ部屋で?」
「お願い。3日くらいかな」
調査が思ったより長引きそうなのだ。
「分かりました。じゃあ…」
「はい、代金ね。それと鍵お願い」
「はい、確かに。じゃあ気をつけて」
「ええ」
ちょっとだけ微笑み、エレナは宿を後にした。向かう先はもちろん西地区。スラム街があると言われた場所だ。
エレナはそこまで飛んで行った。
………比喩ではない。その言葉通り飛んで行ったのだ。もちろん見られると厄介なので、この王都に侵入したときに使った魔法で姿を消している。
「うわぁ…上からだとよく分かるな」
西地区もそこまで暗い印象がある訳では無い。むしろ先程までエレナがいた南地区に勝るとも劣らない活気があった。
だが、その明るさとは裏腹に、1度脇道にそれれば、崩れかけの建物などがひしめき合う場所へとたどり着く。だが、それでも大規模には程遠いスラム街だ。
「なるほど……狭い通路とか、目立ちにくいところにスラムが形成されているのか…」
一見するとまるでスラムには見えないが、上からみればまさしく一目瞭然だ。それに西地区だけではなく、小規模のスラム街は至る所にあるのが確認できた。南地区にもスラム街はあったのだ。
「これは想像以上に酷いかも…」
想像以上の事の深刻さに焦る気持ちを抑え、エレナは西地区の人通りが少ない道へとバレないように降りていった。
「おはようございます。朝ごはん、食べます?」
「食べようかな」
「はい、すぐ持ってきますね──あ、そうだ」
何かを思い出したかのようにサラが呟く。
そしてそのままエレナへと近づいた。
「何か?」
「えぇっと…これをエレナという人に渡して欲しいと言われたんですが…」
おずおずとサラがエレナに差し出したのは、一通の手紙だった。
それはエレナにとって、とても見覚えのあるものだった。
「あぁ、それは私宛のものよ、ありがとう」
宿手帳にはエレナと書いていたので、それで分かったのだろう。
「そうですか……」
何故か釈然としない様子のサラ。
「どうしたの?」
「その……これを持ってきた人が…」
そこまで聞いて、エレナはなにが言いたいのかを理解した。
「騎士の人が持ってきた?」
エレナが問いかけると、サラは驚いた様子で目を見開いた。
「はい…もしかしてお姉さん、なにか悪いことでも…」
「そんなことするはずないでしょう。ちょっとした知り合いよ」
「ちょっとした……」
それでも納得できないらしい。
「そろそろ混み始めるよ。行かなくていいの?」
「あ!すいません!では!」
エレナに手紙を渡し、サラはバタバタと慌ただしく去っていった。
その後ろ姿を見送った後、エレナは自身の手にある手紙に目を落とした。
「部屋で読もう」
ここでは人目があるため、部屋で読むことにしたようだ。亜空間に収納すると、エレナは近くの席へと座った。
そしてすぐにサラが食事を持ってきた。ベーコンエッグにパン、サラダにスープといった、少ししっかりめの朝食だった。
「お待たせしました!」
元気にそういうと、サラはまた別のテーブルへと食事を運んで行った。相変わらず忙しそうである。
「いただきます」
手を合わせて食べ始める。朝はガッツリしない系のエレナが食べるには、少々多めではあったが、味が良かったので、すべて食べ切ることができた。
「ご馳走さま。食器は…」
エレナは辺りを見渡す。どうやら皿は置いておくと、勝手に回収するようだ。
周りにならいエレナは皿を置いたまま、席を立って部屋へともどった。
部屋に入り、結界で入れないようにしてから、エレナは収納から手紙を取り出して、読み始めた。
「うん、長ったらしい文は相変わらずね」
と言う言葉とともに苦笑を零すエレナ。その手紙は、昨日エレナが男を送った兵からであった。
長すぎる文は、真剣に読めば相当時間がかかるが、大体は無駄な文なので読み飛ばしても構わなかった。
読み飛ばして理解した内容は、男の罪の確定と、その後の処罰についてであった。
「ふぅん。前科があったのか」
手紙によれば、男は元冒険者であったが、日頃の行いが目に余るため除名処分されたようだ。そして路地裏など、警邏する兵が少ない場所を狙って強盗まがいのことをしていたようだ。
「今回証拠がきっちりしていたから、鉱山送りね」
当然の処罰と言えた。なぜなら、男は人殺しさえも厭わなかったのだから。
「最後は……これ、ただの文句だよね」
手紙の最後は、つらつらと文句のような愚痴のようなものが、延々と書かれていた。
「……菓子包でも持っていこうかな?」
だが兵が菓子を食べるだろうか?と思いながらも、エレナは他に思いつかなかったので、収納にあった手頃な菓子包を送っておいた。
「顔出すのはこれが終わってからかな」
とりあえずはこれで勘弁してくれ、と念を送るのであった。
「さてと」
エレナは手紙を収納すると、今日の予定をざっと決めた。
「まずはスラム街かな」
そう思い、エレナは宿を出ることにした。
下に降りれば人が少なくなりやっと休めるようになったサラがいた。
「あ、お姉さん。出かけるの?」
「そうよ。あ、延長ってできる?」
「できますよー。同じ部屋で?」
「お願い。3日くらいかな」
調査が思ったより長引きそうなのだ。
「分かりました。じゃあ…」
「はい、代金ね。それと鍵お願い」
「はい、確かに。じゃあ気をつけて」
「ええ」
ちょっとだけ微笑み、エレナは宿を後にした。向かう先はもちろん西地区。スラム街があると言われた場所だ。
エレナはそこまで飛んで行った。
………比喩ではない。その言葉通り飛んで行ったのだ。もちろん見られると厄介なので、この王都に侵入したときに使った魔法で姿を消している。
「うわぁ…上からだとよく分かるな」
西地区もそこまで暗い印象がある訳では無い。むしろ先程までエレナがいた南地区に勝るとも劣らない活気があった。
だが、その明るさとは裏腹に、1度脇道にそれれば、崩れかけの建物などがひしめき合う場所へとたどり着く。だが、それでも大規模には程遠いスラム街だ。
「なるほど……狭い通路とか、目立ちにくいところにスラムが形成されているのか…」
一見するとまるでスラムには見えないが、上からみればまさしく一目瞭然だ。それに西地区だけではなく、小規模のスラム街は至る所にあるのが確認できた。南地区にもスラム街はあったのだ。
「これは想像以上に酷いかも…」
想像以上の事の深刻さに焦る気持ちを抑え、エレナは西地区の人通りが少ない道へとバレないように降りていった。
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