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オスの三毛猫しらぬいの診療カルテ⑥ 猫又の願い
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いちごが美樹を連れて行った場所には、いつもどおり日本人形のような幼い少女がちょこんと座って居た。
おかっぱの黒髪、抜けるような白い肌、透き通る青い目。
(ミキ、こちらです)
少女はそう言い、背中で守るように隠していたモノを美樹に見せた。
そこには小さな三毛猫が横たわっており、それの両側には大きな三毛猫と尾の無い三毛猫が座っていた。
「これは・・・ざくろちゃん、一体どういうことなの?」
(天によると彼はまだこの世にいるもののようです。彼を助けてほしい。二度とヒトの悪意に触れることのないように)
少女が大きな三毛猫に前へ出るよう促すと、その猫は美樹の後ろへ回ったかと思うと和服の女性へと姿を変えた。
年のころは40歳すぎだろうか。長い黒髪を一つにまとめ切れ長の目は黒い。その漆黒の瞳の奥には闇をたたえている。
(お初にお目にかかります。わたくしは浄行寺に住む青島と申す猫又にございます。この者は不知火。オスの三毛猫にございます。珍しさから不幸な最期を迎えることが多いため、わたくしが産みの親から彼を預かり庇護していたのですがヒトに捕まりひどい拷問を受けていたようなのです。)
「どのくらいの期間、つかまっていたのですか?」
(3年ほどになります。ヒトの3年と我らの3年は時間の流れが違いますがこの者は普通の猫でありますからヒトで言いますところの10年、といった感覚でしょうか。)
「3年間も・・・」
美樹は一刻も早く病院へ連れ帰り検査と治療に入るべきと判断した。
「すべてを私に任せていただけますか?場合によっては何のお役にも立てないこともあります。」
(センセイ、この者の苦しみは体の傷ではありませぬ。親愛の情を寄せた人間に裏切られ心を引き裂かれているのです。命の火が消える前にどうか彼を救ってやってくださいませ。)
(ミキ、青島様の一声で何十何百の猫が集まる。血が足りなくなったら言って)
「ざくろちゃん、いちごちゃん、病院へ急ぎましょう」
キャリーバッグに不知火をそっと入れて蓋を閉じ、美樹が顔を上げると和服の女性もおかっぱの少女も消えていた。
代わりに大きな三毛猫と尾の短い三毛猫、猫の姿にもどったざくろといちご、合計8個の瞳が美樹を視ていた。
意識を凝らすと無数の猫の目が公園全体を囲んでいるようだ。
「全力を尽くします」
振り返らずに病院へ歩き出した美樹の後ろを白猫と黒猫が駆け足でついて行く。
(どうか、どうかさいごにもう一度だけ不知火に人間を信じさせてやってくださいませ)
青島は遠ざかっていく美樹と2匹の姉弟猫にむかって深くお辞儀をした。
おかっぱの黒髪、抜けるような白い肌、透き通る青い目。
(ミキ、こちらです)
少女はそう言い、背中で守るように隠していたモノを美樹に見せた。
そこには小さな三毛猫が横たわっており、それの両側には大きな三毛猫と尾の無い三毛猫が座っていた。
「これは・・・ざくろちゃん、一体どういうことなの?」
(天によると彼はまだこの世にいるもののようです。彼を助けてほしい。二度とヒトの悪意に触れることのないように)
少女が大きな三毛猫に前へ出るよう促すと、その猫は美樹の後ろへ回ったかと思うと和服の女性へと姿を変えた。
年のころは40歳すぎだろうか。長い黒髪を一つにまとめ切れ長の目は黒い。その漆黒の瞳の奥には闇をたたえている。
(お初にお目にかかります。わたくしは浄行寺に住む青島と申す猫又にございます。この者は不知火。オスの三毛猫にございます。珍しさから不幸な最期を迎えることが多いため、わたくしが産みの親から彼を預かり庇護していたのですがヒトに捕まりひどい拷問を受けていたようなのです。)
「どのくらいの期間、つかまっていたのですか?」
(3年ほどになります。ヒトの3年と我らの3年は時間の流れが違いますがこの者は普通の猫でありますからヒトで言いますところの10年、といった感覚でしょうか。)
「3年間も・・・」
美樹は一刻も早く病院へ連れ帰り検査と治療に入るべきと判断した。
「すべてを私に任せていただけますか?場合によっては何のお役にも立てないこともあります。」
(センセイ、この者の苦しみは体の傷ではありませぬ。親愛の情を寄せた人間に裏切られ心を引き裂かれているのです。命の火が消える前にどうか彼を救ってやってくださいませ。)
(ミキ、青島様の一声で何十何百の猫が集まる。血が足りなくなったら言って)
「ざくろちゃん、いちごちゃん、病院へ急ぎましょう」
キャリーバッグに不知火をそっと入れて蓋を閉じ、美樹が顔を上げると和服の女性もおかっぱの少女も消えていた。
代わりに大きな三毛猫と尾の短い三毛猫、猫の姿にもどったざくろといちご、合計8個の瞳が美樹を視ていた。
意識を凝らすと無数の猫の目が公園全体を囲んでいるようだ。
「全力を尽くします」
振り返らずに病院へ歩き出した美樹の後ろを白猫と黒猫が駆け足でついて行く。
(どうか、どうかさいごにもう一度だけ不知火に人間を信じさせてやってくださいませ)
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