剣と恋と乙女の螺旋模様 ~持たざる者の成り上がり~

千里志朗

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第2章 流水の弟子編

041.西風旅団・新生(4)

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 ※


 西風旅団の女性陣がテントの中でしていた修行、と言うよりも応用知識の学習。

 まず、サリサ、アリシアは、ゼンから渡された、緑色のクリスタルに魔力を通して『再生』状態にした。

 クリスタルには、普通の、好々爺な感じのお爺さんが映っている。後、何故か後ろの方で、ゼンの師匠のラザンが酒を飲んでいるのが映っている。

「なんでラザンさんが~~?」

「背景で、後ろにいるのが映りこんでるだけじゃないかしら。多分……」

 そのまま、しばらくそのお爺さんがニコニコしているだけの映像が流れる。
 
 後、ラザンが酒を飲み続けている。

「?何も……言ってないわよね?」

「うん~。そももそも、口開いてないと思う~」

 とアリシアとサリサが話していると、

「爺さん、それもう記録始まってるんじゃねぇかな?」

 とラザンが急に言い出し、

「おっと、うっかりしておったわい」

 パラケスのお爺ちゃんは、カカカと笑う。

 サリサとアリシアはその場で力が抜けてノメっていた……。

 年寄の妙なペースだと話が進まないので、抜粋していこう!

 魔術等の開祖は、その原初の時代では、詠唱というものは、そもそもしていなかったのだとパラケスは語る。

 神に語り掛け、精霊に語り掛ける巫女は、言葉を使ったりはしない。心の声で語り掛けるものだ。それは、自然界の魔力源(マナ)への呼びかけもまたしかり。

 だから、術の詠唱とは、本来、心の中の声で唱えられていた物だと言う。

 それが、一般に普及させるにあたり、誰にでも分かりやすく間違えずに出来る方法として、呪文、言葉の詠唱という、至極分かりやすく単純な手法を取る様になり、そしてそれが世間一般に広く知られる様になったのだとパラケスは語る。

 すると、その原初の、神や精霊、自然との会話、極度の集中状態で、他の雑音を締め出し、正確な呼びかけや内容を、脳内で完結させる、という難解な方法は忘れ去られ、いつしかその方法は失われたのだと言う。

 ならば、その逆もまたしかり。

 その言葉の内容や意味、何か対象がある場合は、その者への語り掛け、等の詠唱は、心の中、つまり脳内でその詠唱をしても、同じ効果が得られる事になる。

 つまり、言葉で口にしなくても、術という物は、その正確な意味と内容を、脳内(心の中、でも可)で思い浮かべるだけで、同じ様に術は発動する筈だという。

 人が、言葉で話すよりも、ただ思考するだけの方が速いのは当然。それが『脳内詠唱』と言う。

 ただし、心には、いろいろな思考の雑音、ノイズが他から紛れ込み、この詠唱がうまくいかない事が、ままあるーーー


「~~サリー、これ、どゆ事?」

 アリシアは、まるで意味が分からないので親友に聞く。その方が早いのだ。

「つまり、魔術にしろ神術にしろ、一番初めに創った人は、呪文の詠唱をしていなかったんだってさ。それを、普通の人でも出来るような分かりやすい方法として確立したのが、呪文詠唱だって、このお爺ちゃんは言ってるわ」

 サリサは期待通り、今の内容を簡単に意訳して聞かせる。

「え~~、それ本当~~?」

「う~~ん。一応、業界トップの人のいう事だし、完全な嘘とかそんな事はないみたい。

 でその初めの方法が、頭の中や心の中で、言葉を思い浮かべる事で、呪文の詠唱と同じ効果が得られるんだって言ってた。それが『脳内詠唱』」

「でも、私達にもそれって出来るの?」

「出来なくもないけど、正直難しいかも。心の中、もしくは頭の中で呪文を唱える……思い浮かべるのは、声を出して言葉で詠唱を長ったらしくやるよりも確かに早いとは思うけど、他になにか余計な事考えたり、あるいは少しでも別の事に気を取られたりすると、それは、呪文とは別の、いらない要素、雑音(ノイズ)となって、呪文の完成の妨げになってしまうみたい」

「??」

「つまりは、その呪文を頭の中で唱えるとすると、他になにかふと考えたり、戦闘中だったら別の事に気を取られたりするのはよくある事よ」

「あるね~~」

「それだけでもう駄目なの。

 私が敵を見ながら呪文唱えるとするでしょ、でも横から別の敵が出て来たりして、でそっちを目標に変えたりする事もある。

 でも、この『脳内詠唱』っていうのは、そういう柔軟性がないみたいなの」

「それじゃ、駄目じゃない~~」

「うん……これは、使えないかしら?」

「……サリー、まだお爺ちゃんの話、続きがあるみたい」

 二人はまたクリスタルの映像に注目する。どうでもいいのだが、後ろでお酒を飲んでいるラザンがどうしても気になる二人だった。まさしく余分要素(ノイズ)だった。

 そして、パラケスの映像でも、確かに、これは早く詠唱出来る事は出来ても、失敗の可能性が多々ある、高度過ぎて余りいい方法ではない、と言っている。

 しかし、ある方法を使えば、その問題は解決すると言う。

 それは、雑音のない状況で、催眠暗示(自己暗示でもいい)を使って、長い呪文を記憶に刻み込ませ、鍵(キー)となる言葉を、『自分』が使った時に、思い浮かばせるようにすればいい、と言うのだ。

 『自分』が、という箇所は大事な条件だ。他人が言っても発動してしまうのでは、場合によっては危ない事態になりかねない。

 つまり、その鍵となる言葉は、呪文の名前、そのものでいいのだ。

 例えば、風の刃の呪文に、これこれこう、という呪文があるなら、暗示でそれを記憶に刻み付け、『風の刃』という、魔術の名前を、その記憶を呼び覚ます鍵(キー)として設定すれば、まさしく無詠唱となって、呪文の名前をいうだけで発動出来る状態まで持って行ける訳だ。

「なるほどね~。さすが伝説の『隠者』。これなら、私達にも出来るかも」

 それから、ともかくお試しで、と言う事で、お互いに催眠をかけ、5つ程の長い呪文を、暗示登録した。お互いが心を許した親友である二人だからこそ出来た方法だった。

 催眠暗示、などど言う、自分が無防備で、何をされるか分からない状態を任せられるのはやはりこの親友同士ならば、という信頼関係がなければ中々出来る事ではない。

(一人の場合、自己暗示で設定するのには、かなり苦労したであろう)


 ※


 2日目。

 ガゼバの武器と防具の店に、二人の新しい鎧を引き取りに皆で来た。

 アリシアとサリサは予備のローブ、僧衣を持参し、改めてその裏地にグランド・サンドワームの皮の、要所要所への縫い付け補強をお願いした。

 そちらの分のグランド・サンドワームの皮も追加で渡す。

 ガゼバはホクホク顔だ。やはりSランクな素材を扱えると言うのは職人冥利に尽きるものなのだろう。

「親方がもしかしたら知らないかもしれないので、ここで、このワームの皮の特性について教えておきましょうか」

 ゼンは、鎧の腕の部分、前腕部を盾の様に構えて、ガゼバに言った。

「ここに、剣でも槍でも何でもいいので、攻撃してくれませんか?」

「確かに、この皮には物理耐性や衝撃耐性なんかもある様だが、何のつもりだ?」

 それは、やってみれば分かる、とゼンはにこやかに言う。

 ガゼバは、中々切れ味の良さそうな剣で、ゼンに向かって無造作に攻撃した。

 その攻撃を、ゼンはその藍色をした鎧の前腕部で盾の様に受けるのだがーーー

 剣は、藍色の皮に少し沈み、まさかそのまま切れるのか、と思いきや、途中で止まり。弾力ある何かに阻まれた様な感じで跳ね返された。

「な、なんだ今の手応えは?」

「今のは、その衝撃耐性や物理、斬撃の耐性が、俺の”気”で強められた結果、おきた現象です。つまり、このワームの皮の性能は、装着した者の”気”で高められる、変則的な性能を持つ物なんです」

 ゼンは何やらとんでもない事を、何でもない事の様に軽く言う。

「つ、つまりグランド・サンドワームは、”気”で自分の防御を要所要所高めて戦う様な知性を持った魔獣だったのか?」

「それが知性でなのか本能でなのかは分かりませんが、ワームと言う割にはかなり色々凝った戦法を使って来る魔獣でした。変異種だったから、とかも関係してそうですが……」

 ゼンは頭を捻り、戦った時の事を思い出しながら答えた。

「しかしそうすると、この皮の値段は更に跳ね上がるな。耐性の上限は、使う冒険者の”気”次第なら、強者であればある程性能が上がる訳だからな」

「まあ、そこら辺は、親方にお任せしますよ。ちなみに、現地だと~~な値段でしたよ」

「なに!そいつを狩った現地ですらその値段なら……」

「まあ向こうでは、解体に協力してくれた冒険者にかなり分けたので、自分で使わない場合売った人もいるでしょう。多少はあの後値崩れしたと思いますが……」

「ふむ。だが、ここは遠い異国の地だ。お前さんは、この素材を売ってばら撒く気はないんだろ?」

「ゴウセルが望むならそうしますが、俺自身は別に困窮してる訳でもないですから」

「よしよし分かった。ゴウセルなら無駄にせっかくの高級素材を値崩れさせるような事はしない、堅実な商人だ。なら安心だな。

 ところで、物は相談なんだが、お前さんは、この3種の素材、貯蔵(ストック)してないか?ちょっと入用なんだが……」

 ゼンはそのメモに書かれたリストを見て、少し考える顔をするが……。

「……ある事はありますが……」

「あ。あるってどれが?まさか3種とも?!」

「3種とも。そんなに多く持ってる訳じゃ、ないですよ?」

「いや、あるだけでありがてぇんだ!頼む!売ってくれ!」

「……そうですね。ただ、値段交渉は、ゴウセルとして下さい。正直、この素材がいくらなのか、俺は知らないので」

 ゼンは慎重に、そう断った。ゴウセルに任せれば、自分が適当に売るよりもちゃんと適正値段で売ってくれる筈だから。

 ガゼバは勿論だ、とばかりに豪快に頷く。

 ゼンはひと塊の、爪や羽、角の様な素材をカウンターに出した。

「じゃ、俺達は行きますから、ローブとかの件も忘れないで下さいね」

 ガゼバは分かってる分かってる、と上機嫌で手を振る。

 リュウとラルクは、今日完成して装着したばかりの、その濃い藍色の鎧は、半ば黒に近い、不思議な質感の皮で、今さっき聞いた性能を思い出すと、多分とんでもない値がつく鎧となるだろう。いくらになるかは聞かないでおこうと心に決めるリュウとラルクだった。

「それは普通に、気を防御膜として身体の表面に展開してるだけで、鎧の効果もさっきみたいに上がりますけど、攻撃を受ける所に集中して”気”を集めれば、盾代わりにも使えるぐらいの強い効果になりますから。

 ただ、それを過信して攻撃を避けない様になっては駄目だと思いますけど」

 ゼンはそう講釈する。

 三人は、同じ皮の素材を使った鎧をお揃いの様に着けているが、ゼンとは造った職人の違いからか、デザインも微妙に違い、皮の色も、リュウ達の方が微妙に濃く、余り同じ素材の鎧の様には、一見すると見えなかった。

 リュウとラルクのも、前衛とスカウトの違いなのだろう。しっかりとした前衛の重鎧と、中衛の軽鎧、と言った感じだ。実際は、重さ自体はほとんど変わらないが。

 今やっている気の訓練次第で、この貴重な素材の鎧の真の性能を発揮出来るのか、と思うと、リュウとラルクは共に、身が引き締まる様な思いがする。

 それを生かすも、無駄にして殺すも自分達次第なのだ。

 また、フェルズの表門を出て、山へと向かう。

 サリサも言われる前から杖に横座りして空へと舞い上がる。

 目指すは昨日と同じ場所だ。


 ※


 アリシアやサリサ達は、また崖下に設置してもらったテントに籠る。

 まだ、登録してない呪文が~、と意味不明の事を言っていた。

 昨日の終わりに見せた、『無詠唱』での呪文発動の出来から言っても、こちらも順調の様だった。

「じゃあ今日は、木の模擬剣を使った立ち合いとかして、その鎧の使い心地を見て下さい」

 二人は交代で、ゼンに立ち会い稽古をしてもらった。

 ゼンは、鎧の性能を見る為なのだろう。リュウ達の防御の隙をすり抜けて、見事に攻撃を当ててくる。

 鎧自体には鈍い衝撃があるのだが、それを着けている本人にはほぼ何の衝撃も伝わらない。

 木剣だからだろうか?

「それで通常状態みたいです。なるべく意識して、攻撃された箇所に”気”を集中させてみて下さい」

 言いながら、また鋭い攻撃が、リュウの剣をすり抜け脇腹にーーー

 ガツン!と妙な音がして、ゼンの剣が弾かれ、しっかり握っていた筈のゼンの剣は大きく真横の藪に飛ばされていた。

「やった、今多分、その鎧の耐性が、物凄く上がりましたよ!多分、実剣だったとしても、攻撃が跳ね返されたと思います!」

 自分でやったのが信じられないリュウだが、確かに今、素晴らしい位の手応えがあった。”気”によって性能の上がる鎧とは、これ程までに凄い効果の出る物なのか……!

 残念ながら、その目覚ましい効果が出たのは、その一度きりだったが、リュウは鎧の”気”によって高められる効果を十分実感したのであった。

 交代したラルクも、なんとかその効果を出してみたいと思うのだが、ゼンの攻撃が鋭すぎて、中々思う様にはいかない。鎧自体は、何度か当てられている感じからして、普通の物よりも余程上等な物であるのが分かるのだが。

 ゼンの上段からの攻撃に、剣で受けようとしたラルクだが、それはフェイントだった。すぐにゼンは横に切り返し、真横から斬撃が来る。

 ラルクはすぐ次の瞬間に来る衝撃に備えてーーー

 また先程と同じガツン!と妙な音がしてゼンの木剣は、振ったのとは逆方向に飛ばされていた。ゼンは剣に来た衝撃に無理に逆らわず、剣を持つ手を放した様だ。

「これ、攻撃する方も痛いですね。衝撃で手首を痛めそうです」

 そう言って苦笑いをして手を振るその感想は本当なのだろう。

 それ位の勢いでゼンの木剣は跳ね飛ばされたのだから。

 ラルクは、その性能の高さを思い知ると同時に、こんな身の丈に合わない防具なんかを提供してもらって、本当にいいのだろうか?と、他の、地道にやっている冒険者達に対して罪悪感を覚えてしまうのだが、それは防具だけの話ではない事を、この後すぐ知る事になる。


 気の特訓は順調に成果を上げていると言えた。

 元々の下地が出来ていたので、その理屈や方法が分れば、やはり二人の飲み込みは速かった。

 ”目”を使った判別も、ほぼ間違える事がなくなって来ていた。

「じゃあ、鎧の次の、問題点追及です。リュウさん、ラルクさん、今持ってる武器、どう思ってますか?」

 収納具から、いつも使っている武器を出してもらっている。

「?ちょっと弱い、使い応えの無い武器かなぁ、とは思ってる」

 リュウは呑気に答え、

「買い替えたかったんだが、金がなぁ……」

 ラルクはただ、予算に嘆くだけ。

 ゼンはなんだかやるせなくなって、思わずしゃがんで溜息が出てしまう。

「負けた原因、その2です。その武器は、今まで、特訓したからじゃなくて、もう二人の”気”で使うには、とっくに限界だったみたいですよ?」

「えーと。どういう意味だ?」

「つまりですね、その武器は、もう壊れる寸前なんです。”気”を流して使うには……

 元々、普通の武器って、”気”に対する耐性が、そんなにないんです。だから二人は、無意識の内にその武器が、これ以上”気”を使うと壊れるのが分かっていて、加減して戦ってた、のだと思います」

「??いや、死にかけてたのに、加減なんかする余裕はないだろ?」

「”気”に限っての話です。じゃあ、その武器貸して下さい。あ、ラルクさんの短剣で」

 ゼンはそれを持って、軽く”気”を流した。短剣の刀身にピキっと亀裂が入る。

「リュウさん、そのバスターソードに、少し強めに”気”を流してみてください」

 リュウが言われた様に、”気”を剣に流すと、バスターソードにも大きな亀裂が入り、まるで今こそそれが限界だった、とばかりに剣そのものが、脆くもボロボロに崩れていった。

 リュウもラルクも茫然自失だ。

「鎧よりも、武器を先に新調してた方が、まだなんとかなったかもですよ

 リュウさんラルクさん、ずっとそれ使ってたから、剣の芯からもう限界に来てたんですよ。

 それを無意識の内に悟ってるのも、変な話なんですが、壊れない様に”気”だけ加減して使ってたみたいですね」

 ゼンが、それがどれ程危険な瀬戸際だったのかを考え、真剣な声音で説明する。

「俺等、こんな危ないの使って戦ってたのか……」

 もしも戦ってる最中に壊れていたら、と思うとゾっとする。

「剣の”気”に対する耐久性って、鍛冶師の方だと今一つ分からないみたいなんです。個々に使う”気”の量が違い過ぎて」

「じゃあ、武器も新調、する事になるのか……」

 色々予算管理していたラルクが表情を暗くする。

「そこでこれです!」

 ゼンが、ジャジャーンとか口でわざわざ効果音を言っている。

 ゼンがポーチから取り出して、リュウに渡したのは、剣の中心線で色が赤と青に別れた、なんだかおめでたい感じのする、妙に派手な大剣だった。

「……なんだ、この派手なバスターソードは?」(キカ〇ダーか?)

 リュウが微妙に嫌な顔をしている。

「魔剣です」

(魔剣とは、別に悪い剣の事でなく、なんらかの魔力を宿した剣の総称。1章に出たザルバートの『グラム』もそうである。ちなみに値段はとてもお高い)

「ラルクさんはこっち」

 ゼンは、綺麗な装飾の鞘の、抜くと碧の刀身輝く、綺麗な芸術品か?、というような短剣を渡される。

「まさか、これも……」

「魔剣です。それは、ウィンディアっていいます。風の魔力が宿っているので、装備する者を風で包み、素早く移動が出来るようになります」

「おー、凄い。スカウトにピッタリな短剣じゃないか!」

 ラルクは値段とかの事を考えるのは放棄して、自分に適した武器である事だけに注目して喜んだ。

「後は、これを」

 続けてゼンがまた何か出す。

「弓……短弓か?」

 小型で軽量の感じの弓だ。連射しやすそうな感じがする。

「魔弓イチイバルスですね」

「………」

 二人はもう色々諦める事にした。

「矢は?」

「それは、”闘気”で矢を作るんです。普通の矢も使えますが、”気”で威力調整とかも出来るんですよ。弾数は、ラルクさんの”気”の容量次第ですね。弱い矢を作って沢山撃つか、強い矢で強い敵を仕留めるか、はラルクさんのお好み次第です」

「ラルクは2つも武器あるのか?俺のは?」

 リュウは、しまいには図々しくなっていた。

「リュウさん、大剣以外使わないでしょ?あー、でも前の事もあったし、予備に普通の剣あった方がいいかな?じゃあ、それは後で考えます。

 でも、その剣、もの凄い性能ですよ」

「そうなのか?!」

「赤い方に、”気”流して、炎出ろーって念じて下さい」

「うぉ、刀身から炎が噴き出した!」

「それを、向こうに向かって、思いっきり飛ばすつもりで斬って下さい」

「?素振りみたいな感じでいいのかな、えいやっと、うぉ」

 炎の刃のような物が、剣の振りと同時に飛んで行き、その先の大木に当たった。

 すぐゼンが駆け寄って消したので延焼はしなかった。

「次、剣の炎を消してから、青い方には氷です」

「分かって来た分かって来た」

 リュウが剣に気を込め、今度は刀身に氷が出る。リュウはそれを大剣を振りかざし、振る!

 同じ様に氷が飛ぶ。炎と違うのは氷の無数のつららの様な粒が飛んで行った所だ。

 またさっきの大木に、つららが矢の様に無数に突き刺さる。大木さん、御免なさい。

 大剣(バスターソード)であるのに、遠近両用の攻撃が可能なのだ。しかも、炎と氷の2属性。

「その剣は氷炎魔剣、フレイザードって言いま」

「あああああーーー。聞こえない聞こえないな。うんじゃあこの剣はフレイムブリザードと呼ぼう!」

 突然リュウが大声をあげて、ゼンの声をかき消した。

「え?なんで、長く剣の名前を改名するんですか?」

 ゼンは心底不思議そうな顔で、突然意味不明な行動をとるリュウを見る。

「世の中には、そういう事もあるんだ、ゼン!」

 ラルクも必死になってゼンを説得する。

「……まあ、いいですけど。それ、別に炎とか出さなくても、普通に斬れますから。”気”を、使う事が前提に造られてるから、めったな事じゃ壊れないですよ」

 何か納得し難い物を感じながらも、ゼンは武器の説明をするのだった……。


*******
オマケ

リ「遠近両対応の前衛って、ちょっと凄くね?」
ラ「凄過ぎて近寄りたくないよ。お前、間違ってもそれ、後ろに撃つなよ?」
ア「あ~、私達がテントにこもってる間にズルい!汚い!エコヒイキ!」
サ「私達のは、迷宮で渡すって言ってたじゃない?きっと『凄い』のくれるわよ。期待して待ちましょ……」

ゼ「なんか変な圧力が?……」
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