やめたと思いたかっただけ

ルティエ

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クイーンズアンバランス

戦闘ジョブの在り方

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 こんな所で見つけるだなんて。

 エルミアと言う名前。
 支援ジョブがなるには最難関と言われる最上級ジョブ。
 そして何より、支援ジョブでありながら誰にも頼らずに全てを己で片付けようとする姿勢。

「まだやってたのか…。」



 特殊クエストを発生させた原因は俺だろう。
周りのプレイヤーを巻き込み、ワールド内に影響はないものの迷惑をかけてしまった。
謝罪するか悩んだが、現状の打開が最優先だと思い戦闘を優先した。

おそらく不可能だ。
下級に中級、戦闘として成立するわけがない。
ならば独りでやれるところまでやろう。

亜人種という種族は持ち前の防御力を生かしタンクとして運用するのが一般的だ。
しかし素早さもあるためタンクだろうがアタッカーだろうが、戦闘ジョブを選べば特に不自由がない。
初心者向けとも言っていいだろう。

小型の敵ならある程度の数は一度にさばける。
大型は…正直周りを気にしながら戦闘できるかは分からない。

バフがかかったことで支援ジョブの存在に気づいた。
純粋にありがたい。
しかし低レベルのスキルは付け焼き刃だ。
ないよりはマシ程度の物だ。

バフと回復がどんどん飛んでくる。
やり易い、やり易いどころかなにをしても死ぬ気がしない。
これ、もしかして相当高レベルのスキルじゃないか?
効果時間も長い。

「最上級ジョブだろこれ…。」

周りを見る余裕はない。
ヘイトが支援に向いてしまうからだ。
最大ダメージを出し続け最前線にいなければ、仕様上ヘイトは最優先で支援ジョブに向かう。
上手い奴がいる、それだけは分かる。

死んで元々。
こんな難易度の特殊クエストは誰もクリアできないだろう。
しかしこの支援ジョブは諦めていない。
ガンガン飛んでくるスキルが全てを語る。
何があっても生きろ、そう伝わるような懸命な回復とバフ。
まずMPがおかしい。とっくに切れていておかしくない。
MPポーションを支援ジョブは持たない。
持てないと言った方が正しい。
スキル数が多すぎてMPを回復する時間が作れない。

【MP枯れ】

そうチャットに書いてMPの自動回復スキルで回復するまで周囲は戦闘をしつつ待つのが通常だ。

考えながらも戦闘を続ける。
もう少ししたら一段落つきそうだ。
終わりが見えてきた。
そう思った瞬間だった。

「は…?」

ボスクラスの出現。
大型モンスターとボスクラスは同じようで格が違う。
膨大な体力、膨大な攻撃力、そしてなによりの違いかつなにより厄介な特殊スキル。
表示されたのは

HP50%31

無理だ。
俺は属性スキルを取得していない。
かろうじて支援ジョブが聖属性付与を行ってはくれているが支援ジョブのMPが尽きたら、吸収が待っている。

「運営…性格悪すぎだろ…。」

やれるだけの事は一応やろう。
そうすれば俺は精一杯やったが不可能だったと言い訳もできる。
HPだって回復よりダメージの方が上回ってジリ貧だ。
負けだ。敗北。仕方がない。
最上級ジョブでも勝てないなら大討伐イベント、もしくは負けイベントに違いない。
支援ジョブがMVPだろう。
よく分からないがとにかくそいつがいなければここまで来れなかった。

もういい、諦めよう。

手を緩めた瞬間、聞いた事のない音と見たことのないエフェクトが画面いっぱいに広がった。

この場に似つかわしくない荘厳な鐘の音。


【ありがとう、終わらなかったらごめんね。】

チャットに並んだ文字。
最前線に立ち塞がる最上級支援。
被ダメージ数が表示されるべき場所には無効の文字が無数に出る。
そんなチートスキル、代償があるに違いない。
何故?何故そこまでして?無理の2文字で片付ければいいじゃないか。

動揺する気持ちを嘲笑うかのようにクエスト失敗と表示された。
しかし、そののち生存成功と表示されてやっと俺は気づいた。

「んだよ…生存クエかよ…。」

そして鐘の音はなり止んだ。
あの支援に全員守られた。
他が喜びや健闘を称えるチャットを交わしている中、俺は礼を言うべきだと気づいたがもう支援ジョブのキャラクターはいなかった。

ただ、戦闘中に残されたチャットからキャラクターネームを確認して驚きと疑念が生まれるのにそう時間はかからなかった。

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