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クイーンズアンバランス
帰郷のち
しおりを挟む最大16名のパーティーが組めるこのゲームにおいて、最大人数の場合は支援ジョブは大抵4人は必要といわれている。
攻略サイトを見るまで知らなかったけど。
たった7人じゃないか。
私を含めず考えると6名。
こんなのむしろ小規模だ。
「大丈夫。」
スキルのショートカットを開く。
スキルの数は他のジョブと比べるまでもなく支援ジョブが最多。
最少の生産ジョブと比べると4倍はある。
それを配列しながら割り当てられた場所を確認する。
「うん、変わってない。」
スキルを使用するためのMPは7名に使うとなると大体3回ずつ…かな。
まずは自分に、次に全員にバフを付与。
クールタイムを予想し戦闘ジョブを主にHPの少ない下級ジョブにも目を配る。
6名分のステータスウインドウに少し笑みすら出る。
あまりにも小さい。
あの頃に比べれば。
「大丈夫、全員生かす。」
パーティーに犠牲者がでる度に聞く彼からのため息を思い出すと未だにぞっとする。
あれは私への期待値が、彼から漏れ出す音。
駄目、今は必要のない思考。
今はこの6人を絶対に生存させる。
終了条件も、クリア条件も失敗条件も分からない。
そんな事はどうでもよかった。
ぐんぐん減るMPを自前のポーションで回復しつつ、リキャストタイムの終わりを私にかかったバフの残りゲージで確認しながら繰り返す。
あ、まずい。
戦闘ジョブが圧されて…。
大丈夫。落ち着いて。確か…。
聖属性付与…あった!
必要なスキル取得ポイントは余っている。
バフも合わせると会心率も上がるはず。
いける。多分。
まだ魔力ポーションはある。
行け。動け。私が最優先。私が死ぬことはこのパーティーの壊滅を意味する。
今が全てでもいい、取得できるものはしよう。
大丈夫、もう失望する人なんていない。
褒められなくたっていい。
ただ、私がやってきたことは悲しいだけで終わるのは私が許せない。
なにより最上級戦闘ジョブのプレイヤーが上手い。
やりやすい。
中級、下級ジョブのプレイヤーもできることをしてくれている。
敵の数は…あと半分くらい…?
いや、駄目。考えないで。油断が生まれる。
次になにをやるかは体が覚えてる。
いけると確信した瞬間だった。
「え…?ボスクラス出現…?」
一転、絶望の雰囲気が漂う。
なんの情報もない、なかったのだ。
対策なんて誰もできなかった。
誰のせいでもない。
…だから何?私が諦めるの?
これでお終い、皆悪くない、ナイストライ。
なにそれ。駄目、駄目だよ。
ポーションも残りわずか。
クリアは無理かもしれない。おそらく勝てはしないだろう。
ただもし終了条件にさえ…うん、わずかながら6人が生存する可能性はある。
「みんな、生きてね。」
スキルを使用すると派手な演出とともに鐘の音が鳴る。
リキャストタイム、5760分。
全てのMPと引き換えに5分、どんな攻撃も魔法も全てを無効にする最上級支援ジョブのみが使えるスキル。
しかしデメリットはリキャストタイムだけではない。
特定のスキルはすべて再使用できるまで使用不可になる。
実質、支援ジョブとして5760分は無能になる。
5分耐えれば開始から30分を超える。
「このゲーム、制限時間30分を超えるクエストってないはず。」
賭けだ。それも相当、分の悪い賭けだ。
ポーションも使い切った。
鐘は鳴った。
あとは私が犠牲になれば、それで終わればいいな。
「楽しかったな。」
【ありがとう、終わらなかったらごめんね。】
とチャットに残して私のキャラは立ち尽くした。
そうして クリア失敗! の表示のあとに
生存成功!
の表示を確認して、私は今まで体験したことのない安心感を抱えてログアウトした。
これから私は無能だ。
みんなが生きていた、それだけで全てが嬉しい。
「よかったぁ…!」
誰も聞いていないパソコンの前で心の底から出た言葉。
過去の私は今の私を救ったのだ。
今の私は過去の私を救ったのだ。
たった4日間なんて、やっていなかった時間に比べればなんてことはない。
今までにない達成感と共に、4日後が楽しみな自分が少し恥ずかしい。
でも、「本当にありがとう。」と今日のみんなに伝えられればいいな、なんて思いながら
「ふふっ…!ふふふっ…!」
心地よい笑いが零れて仕方ないのだ。
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