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二十二話
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「じゃあ、どうしてここにいるの? 村に行こうとしたんでしょ」
「散歩だ、ただの」
「嘘ね。私に会いに来たんでしょ」
「バカ言え、俺は、食い物を」
「嘘」
「ジャックは元気か」
「そうよ、こんなことしてる場合じゃないの。さ、早く来て」
ジャニスは俺の腕をつかむと、ぶら下がるように体重をかけて坂下へと引っ張った。
『村へは行かない』とビシッと断れなかった俺は、ジャニスに引かれるまま足を踏み出す。
その勢いでジャニスは尻餅をつきそうになり、あべこべに俺が引き上げて立たせてやる。
こうして俺は、シャーウッドの村へ初めて向かうことになった。
——まあいい。ジャックにはジャニスとのことを、俺からきちんと話しておく必要がある。そう思えば、いい機会だ——
ところが、だ。
俺が連れて行かれたのは、村長の家だった。
てっきりジャックのところへ連れて行かれて、ジャニスについて責任を取らされるのだとばかり思っていた。
それがどういうわけか、村長の家へと連れて来られたのだ。
この村では男女の交際について、村長の承認が必要で……、ということではなさそうだ。
案内された部屋には大勢の男が集まっていた。
なにやら重大な会合だろうか?
男衆の顔は一様に暗く、皺が刻まれていた。
どうやらそれは、村に日暮れが訪れたせいだけではないらしい。
おそらくこの集まりの議題が、ジャックとジャニスが俺のところに来なかった理由と、つながるのだろう。
さらに加えるなら、俺を村へ連れてきたかった理由であるのかもしれない。
遅かれ早かれ、こうなる運命だったのだ。
俺は面倒ごとに向き合わねばならぬことを覚悟した。
引き込まれた俺を、ジャックが紹介する。
そしてそのままジャックの隣に座った。
俺が部屋に入っても、チラッと見るだけの者がほとんど。
歓迎の様子はどこにもない。
それぞれがうつむく視線の先には、つまみのナッツや酒はおろか、喉を湿らせる水さえもない。
「よく来てくれた、熊殺しの男よ。村を代表して、感謝する」
——熊殺し、ね——
はじめに代表して挨拶するくらいだ、この頭髪がすっかりなくなった初老の男が村長なのだろう。
『熊の討伐の褒美には、いったい何が貰えるんだ?』
そんなふうに冗談を飛ばせるような雰囲気ではない。
村長は次に、ジャニスを守ってくれたことについても感謝を述べた。
これもやはり、通りいっぺんのもの。
温かさなどない、乾いたうわべだけの言葉。
やっと形式的なことが終わったかのように、俺に「意見を求めたい」と。
それはおおよそ、こんな話だった。
「散歩だ、ただの」
「嘘ね。私に会いに来たんでしょ」
「バカ言え、俺は、食い物を」
「嘘」
「ジャックは元気か」
「そうよ、こんなことしてる場合じゃないの。さ、早く来て」
ジャニスは俺の腕をつかむと、ぶら下がるように体重をかけて坂下へと引っ張った。
『村へは行かない』とビシッと断れなかった俺は、ジャニスに引かれるまま足を踏み出す。
その勢いでジャニスは尻餅をつきそうになり、あべこべに俺が引き上げて立たせてやる。
こうして俺は、シャーウッドの村へ初めて向かうことになった。
——まあいい。ジャックにはジャニスとのことを、俺からきちんと話しておく必要がある。そう思えば、いい機会だ——
ところが、だ。
俺が連れて行かれたのは、村長の家だった。
てっきりジャックのところへ連れて行かれて、ジャニスについて責任を取らされるのだとばかり思っていた。
それがどういうわけか、村長の家へと連れて来られたのだ。
この村では男女の交際について、村長の承認が必要で……、ということではなさそうだ。
案内された部屋には大勢の男が集まっていた。
なにやら重大な会合だろうか?
男衆の顔は一様に暗く、皺が刻まれていた。
どうやらそれは、村に日暮れが訪れたせいだけではないらしい。
おそらくこの集まりの議題が、ジャックとジャニスが俺のところに来なかった理由と、つながるのだろう。
さらに加えるなら、俺を村へ連れてきたかった理由であるのかもしれない。
遅かれ早かれ、こうなる運命だったのだ。
俺は面倒ごとに向き合わねばならぬことを覚悟した。
引き込まれた俺を、ジャックが紹介する。
そしてそのままジャックの隣に座った。
俺が部屋に入っても、チラッと見るだけの者がほとんど。
歓迎の様子はどこにもない。
それぞれがうつむく視線の先には、つまみのナッツや酒はおろか、喉を湿らせる水さえもない。
「よく来てくれた、熊殺しの男よ。村を代表して、感謝する」
——熊殺し、ね——
はじめに代表して挨拶するくらいだ、この頭髪がすっかりなくなった初老の男が村長なのだろう。
『熊の討伐の褒美には、いったい何が貰えるんだ?』
そんなふうに冗談を飛ばせるような雰囲気ではない。
村長は次に、ジャニスを守ってくれたことについても感謝を述べた。
これもやはり、通りいっぺんのもの。
温かさなどない、乾いたうわべだけの言葉。
やっと形式的なことが終わったかのように、俺に「意見を求めたい」と。
それはおおよそ、こんな話だった。
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