REBIRTH〜国を追われ、名を捨てて〜

1976

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第三十七話

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 クズな領主はどこにでもいる。
 それはどの国でも同じ。
 俺の故国グランリオでも、ここモンテルレイの辺境の村であったとしても、だ。
 俺は少し考えた。
——価値がないから無視される。では、領主に無視させないためには、どうするか……——
 無視されないようになる条件は、いくつかある。
 一番は税の上がりが多いということだ。
 領土全体に寄与することになるし、なにより領主とその一族が贅沢できる。
 クズな領主ほど、自分の生活に直結する部分には敏感。
 見栄を張るにも、賄賂を送るにも、金が必要。
 税がたくさん取れるならば、その土地は必然として手放せなくなる。
 多くの税が取れる場所といえば、食糧生産地帯。
 あとは港、補給拠点、市場の盛んな場所……
 だがどれも、な。
 人数が少なく、村の生産量は少ない。
 海に面していないのだから、当然港もない。
 急に交易のルートが変わり、商人が多数訪れて市場ができるなんてことも、まずあり得ない。
 この街に旅人が来るなんてことは、実際ないのだ、見かけない。
 来るのは定期的にやってくる行商人や隣村の使い、あとは徴税の役人くらいなもの。
 もっとも、こういったネガティブな理由そのものが、俺がこのシャーウッドの村に落ち着けている理由でもあるのだが。
 まあ、今はそれは置いておくとして……

 次に、戦略上の重要拠点であること。
 だがこれについては、ここで取り上げることそのものに矛盾がある。
 まず多くの税があがる場所自体が重要拠点だ。
 先に挙げた項目に被る。
 それ以外の重要拠点といえば、国境の街だ。
 しかし隣国に狙われるような場所なら、当然常駐の兵が詰めている。
 よって賊などに怯えることはない。
 むしろ、戦火に巻き込まれかねない、という方が問題なはずだ。
 ならばあとは……
『ここにしかない』という、格別に魅力的な何かがあるかどうかだが……
「このあたり、変わったモノがとれたりするかな?」
「変わったもの?」
「掘ると岩塩が出るとか、燃える水とか。あるいは変わった食材でもいい。ここでは重要ではないものでも、別の場所では貴重だったりすることがある。
 そうだな…… 商材ではないが、例えるなら、硬貨だ。この村の中に限れば、硬貨を持っていても使い道がない。食料や道具などの方が、よっぽど高い価値がある。しかし街に行けば、硬貨での取引が中心。人参一本、じゃがいも一個で市場を歩いても、邪魔にされるだけだ。
 こんなふうに場所によって、モノの価値は変わる。
 だから変わったものがあるなら、別の街や村に持っていくことで金になる可能性がある。特産品だな。そういう有名な何かを産出できるなら、領内における重要度は上がる」
「なるほど。しかしどうだろうか……」
 それから村長と意見を出し合い、検討してみた。
 だが挙げられたものの中に、候補になりそうなものはなかった。
 俺自身も山の中を狩りや採集で回っていたが、これはというような珍しい物を見かけた記憶はない。
「……呼んでもらってすまないが、やはり地道に開墾し、作付けを増やすしかないように思える。あとは植える時期や方法を変えて試したりして、もっと収穫の上がる方法がないか挑戦してみたり、か?」
「やはりそういったことしかないか…… となると、どちらも時間がかかる。効果が出るのは、はるか先、子か孫の世代であろうな。すぐに結果を望むのは現実的ではない。
 すると、結論は決まるか…… やはりウッド、おぬしにに頼るしかないな」

 俺との話し合いではいい案にたどり着けなかった。
 それなのに、村長は俺に頼るという。
 どうにも話がわからなくなってきた。
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