REBIRTH〜国を追われ、名を捨てて〜

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第四十二話

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 よく見ると地面の色が変わっている。
 セスが掘った、そう思われる場所まできた。
 どうせ子供の作った落とし穴だ。
 俺の経験だと、掘ってから布をかけ、薄く土を撒いてあるのだろう。
 あるいは枝で簡単な下地を組んで、大きな葉を敷き、土を撒いたか……
 俺だってかつては少年だった。
 似たようなことは経験済みだ。

 心の中では用心しながら、気づいていない演技で足をついてみる。
 すると思った通り、身体が傾いていった。
——思ったより深いか?——
 俺の予想より穴の底が深く、つんのめりそうになってしまう。
 自然と転ばないよう、手を振ってバランスを取ることになった。
 どうにか転ばないようにこらえると、やっと底につま先が触れる。
 演技するまでもない、しっかりとした罠だ。
 思わず、へんに感心してしまった。
 そして俺をにらみつけてきた、セスのあの瞳を思い出す。
——意志の強さ、あれを良い方に引き出してやれればいいのだが——
 しかし感心している場合じゃない。
 この劇は続かなければならないのだ。
 たとえるならまだ、序章も終わっていない。
 俺は驚いたように慌てて足を引き抜く。
 そのせいでさらによろけ、また別の穴に足を入れ、派手に転ぶ。
「誰だ! こんなところに穴を掘った奴は!」
 叫びをあげる。
 それからザッザッと足で土をかいて穴を埋めるよう、オーバーにやって見せた。
「見つけたら、叩きのめしてやる! どこだ、どこにいやがる。どこかで笑ってるんだろう!」
 まわりをぐるっと見回しながら、文句を喚き散らす。
 なんだかバカバカしいが、一周回って面白くなりつつあった。
——どうだセス、見ているか? こんなのが、おまえのやりたかったことか?——
 今度は木剣を取りに向かう。
 並べて立てかけてある木剣の柄は、鈍く光を反射していた。
 そこには塗ってあるのだ。
 松ヤニがベッタリ付いた木剣を、素手に直接つかむ……、さすがにそれはいい気がしない。
 どうせ見えやしないだろうと高を括り、サッとボロ切れを出して手に巻く。
 それから木剣をガッとつかむが、それを驚いて放り投げてみせる。
「なんだこれは!」
 じつにバカバカしい。
 まあ、もう、こんなもんでいいだろう。
 観客は十分に楽しんだはずだ。
「今日はヤメだ! 畜生!」
 この喜劇の演出の一部として出演願ったジャニスの反応はどうだろうか?
 それが気になってそちらへ振り向く。
 すると、さっきまでいた場所にジャニスがいない。
「どこに」と思わずつぶやいて首を振ると、彼女はいつの間にか柵内へと入って来ていた。
「なにやってるのよ、冗談なの? 本当に悪戯なら悪質すぎる! 村長に言いつけてやらなきゃ」
「ジャニス! 来るな!」
「なに言ってるの! 早く足を見せなさい、傷を洗わなきゃ」
 次の瞬間、ジャニスが軽くつまづいた。
 俺の手が思わず動く。
 が、遠過ぎた。
 当然のように支える手は届かない。
 そのとき、上で何かが動くのが見えた。
 樹木にロープで吊るしてあったはずの木片が、なぜか枝の上からズリ落ちるのが見えた。
「上だ!」
——届かないなら!——
 立てかけてあった木剣をつかむや否や、投げつける。
 ジャニスへ向かう木片へ当たれ、と。
 ジャニスは驚き、その場で身を縮める。
 木剣は木片へと回転しながら飛び、ロープのついた木片をからめとった。
——間に合った!——
 しかし、罠はそれだけではなかった。
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