REBIRTH〜国を追われ、名を捨てて〜

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第六十四話

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 翌早朝、ジャックが訪ねて来た。
 俺の顔を見るなり、心配の声をあげた。
「どうしたんだ、そんなによくないのか? それともどこかが痛むのか? ジャニスを引っ張って連れて来てやろう」
「いや、いい、大丈夫だ。面倒をかけてすまなかったな」
 もともと『調子が悪い』と、門での騒ぎから早々に引き上げていたのだ。
 そのうえジャニスと喧嘩し、彼女は兄夫婦の元へ押しかけた。
 俺はといえばジャニスを迎えにもいかず、フィルとの揉め事で精一杯。
 もっともフィルとのあいだで話された内容を思えば、留守でちょうどよかったのだが。
「昨日は参った。話し相手が来て嬉しいんだか、クリスティーナが俺の愚痴ばかりジャニスに言いやがる。ジャニスも妹なんだからなだめてくれりゃいいのに、昔の終わった話を引っ張り出して盛り上げやがって。俺は不貞寝しようにも騒がし過ぎて、おかげで満足に寝られやしなかった」
「それは悪かったな、謝る。それよりこんな早い時間だ。俺に特別な用があって来たんじゃないのか?」
「ああ、そうだった」
 俺は水でも出してやるかと思い、「待っていろ」と席を立ちかけた。
「いや、いい、おまえは楽にしていろ。話というのは、ほかでもない」

 ようするに、昨日の続きだった。
 ならず者のくせに、日の出とともに村の門に押しかけて来たらしい。
 しかも、今度は本気の様子。
 両手で足りないくらいの数で来ていると、ジャックは言った。
「セスたち自警団の若い衆が門を押さえてるから、そう簡単に向こうも手は出してこないと思うが」
「へんに自信を持つのが一番危ない。絶対にこっちから手を出させるな」
「よろしければ私が行きましょうか。オーウェン殿下をお探しなのでしょう、彼らは」
 フィルが急に口を挟んできた。
 わざと俺に向け、オーウェンと口にしたに違いない。
 『私は知っていますよ』、そう言いたげに。
 フィルの思惑を含んだ言葉に、俺はにらみを返した。
 だが、それで顔色が変わるようなことは無い。
 いつも通りの、平然とした表情。
 くえない男だ。
 ついカッとなり、自分の顔に火が入るのがわかった。
 が、それさえも『わざと怒らせて、バレてしまえばいいのだ』という、フィルの狙いかもしれない。
 いったん目を閉じて息を吸い、落ち着こうとする。
 咳払いをしてから、できるだけ平坦な声になるよう努めてフィルに告げた。
「客人よ、余計な手出しは無用に願おう。気が短いおまえが行けば、血が流れずに事は済むまい。流れた血とは、水が土に染み込むが如く次の血を欲しがるものと決まっている」
「ああ、そうだな。これはシャーウッドの村のことだ。通りすがりの客人殿の手を煩わせることはできない。俺からも、この村を代表して言わせてもらう。あんたの申し出はありがたいが、これは我らシャーウッドの村に住む者が解決すべきことだ」
 ジャックまでもがそう言うと、フィルは目を閉じ、それからは何も言わなかった。
 ジャックは対応を協議すべく、村長の元へ向かうという。
「おまえは休んでいろ。必要なときに力が出ないでは困るからな」
「ジャック、押しかけて来ている奴が相手のすべてとは限らん。全体がつかめないなら、こちらからは絶対に手を出すべきじゃない。熱くなるなよ、くれぐれもセスたちを頼む」
「ああ、わかってる」
 ジャックはそそくさと席を立ち、村長の家へと向かった。
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