GLAY

絶望

いつものように挨拶もせずに教室へ入り、眩しい朝日が入り込む窓際の後ろの席に座り、黙って朝の用意をする。そしてちょっかいも何もかけずに静かに授業を受け、暇な時は外を見て、休み時間は静かに過ごす。
そんな平凡な日々を送っていた愛華の人生は、この日から変わった。

「ただいまー…」
午後4時。帰宅して部屋へ行き、荷物をおろしてソファへ座ろうと思ったその時。
「お嬢様…お父様とお母様が…」
間部家の使用人である三郎が、伏し目がちに愛華に話しかけた。
「亡くなられたようです…」
秒針が動く音が聞こえる時計。窓越しに聞こえるカラスの鳴き声。
周りの音は聞こえているのに、この家だけ時が止まっていたようだった。
沈黙が数秒続き、やっと愛華の思考が追いついてきた。
そこで、何故か視界がぼやけた。
少し白髪があり、背が高く、眼鏡をかけ、真面目そうな三郎の顔が見えなくなった。
その途端、頬に何かが伝った。 
生暖かい水。いや、涙だ。
何も考えられなくなった。急に涙が溢れ、止まらなくなってしまった。
何故お父さんが？なぜお母さんが？
それしか頭に無く、周りのことなど考えていなかった。