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第19話
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椎菜さんは僕より先に退院していった。
トークアプリのIDは交換したので、僕が退院したら、いつでも連絡できるだろう。
でも、僕は彼女の言葉の真意を退院するまで読み取れなかった。
僕は神さま――《ミラ・ウィース》ではなかった。
《ミラ・ウィース》は、ある車のCMで流れた音声の、要は僕の聞き間違いだったようだ。
そして、綿里さんは無事だった。
結局のところ、僕がトークアプリでメッセージを送信して確認をおこなったら、本当に、なにもなかったらしい。
『病気を治して、また学校へ行こうね』
『ありがとう。今回のことは本当に申し訳なかった。僕は、もうキミに心配はさせないから』
そう書いて、もう綿里さんと連絡することをやめた。
なんだか、あのときのこと――特に綿里さんと混浴で温泉には入れると思ったことを墓場まで持っていきたい気分だったのだ。
恥をさらしてしまった。
*
こうして、ここに、なに食わぬ装いで別の女性ふたりと連絡を取り合っていたという事実に関してだが、ここまで読んできた読者の皆さまはお気づきかもしれない。
僕は真海奈と連絡先を交換する前から、連絡を取り合える女性たちが存在したということ。
この事実は僕の話に矛盾が生じてしまっているのだ。
なにか、ものすごい思い違いをしていないか?
これも《妄想具現症》の症状だとするならば、僕の話は、どんどん崩壊していくだろう。
それも、自分では制御できないレベルで改変されていく。
これが僕の《妄想具現症》の症状なのだ。
*
場面は《現在》に移行する。
――そうだ。
僕は新聞部に所属している矢林御琴に取材されているのだった。
「いいよ」
「えっ?」
「僕は、あの病院のことを話さない。それこそプライベートに関わる問題だ。だから、その音声を伝播高校の生徒全員にばらまいてもいい」
「それでいいのですか?」
「ああ、僕は本音を言っている。その言葉に感化されるくらいなら、彼女たちは、それまでだったと思うことにするよ」
「じゃあ、取材は受けないということですね」
「うん。その代わり、今のキミの行動は、おかしさ満点だけどな」
「おかしさ満点?」
「盗聴は犯罪ではないが、それをするのはリテラシーの問題になってくる」
「と、いうと?」
「新聞部の評判が悪くなるということだ」
「なぜ?」
「普通に考えたら、わかるだろ。たとえ取材を受けたとしても、そんな記事、誰が興味を持つんだ。たかが一般人だぞ。そんな記事が全校生徒に読まれるわけがない!」
「はっ……盲点でした。この取材は、なかったことにさせていただきます」
に
「よろしいぞ、新聞部の矢林先輩。取材に夢中になっている場合じゃないぞ。受験勉強をがんばってくださいね」
「はい。神憑さんに従います。ただ、神憑さんの入院していた病院のことは気になりますがね……」
「病院の件は、あきらめて、な」
「では、失礼しました!」
矢林御琴は一年A組の教室を出ていった。
――さて、これから、どうしようかな……。
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