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第32話
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まだ僕は《機関》がどういうものかということを理解していない。
「僕が《機関》に入ることを『イエス』と言うと思っているのか?」
「ただ指をくわえて《影》に人殺しをされる場面を見ているだけの毎日を送ることになりますが、それでもいいですか?」
「いや……」
そんなわけないだろ……真海奈は《影》に殺されたんだ。
僕の言葉で彼女が自殺するほど、彼女は弱くなかった。
だったら僕にできることは、《影》による殺人をなくすことだ。
でも、それが僕にできるのか?
「――迷っていますか?」
「僕が、どうやったら、この町を救うことができる?」
「まずは、今、飲んでいる薬を飲まずに捨てるべきですね」
「飲んでいる薬を捨てる……?」
「それは《影》を察知する能力を麻痺させるものです。今すぐ捨ててください」
「これは僕の病気を寛解させる薬なのに、どうして……?」
「神憑先輩の病院は、神憑先輩に情報の隠蔽をおこなっています。今、通っているクリニックだって前の情報のない病院の引き継ぎをおこなっているだけです」
「つまり、僕を廃人化させたい、と」
「そんなことないです。神憑先輩は騙されているのですよ。薬という脳のリミッターを外さなければ神憑先輩の能力は開花しません」
「なぜ、そう言えるんだ。僕の病名を知らないくせに」
「知っていますよ。《妄想具現症》ですよね」
「なんで……言ってないのに」
「《妄想具現症》……人類の一%しか発症できない、ちょっと稀な症候群ですが、その症状は憑き物がついたように霊の感覚を持つことができる特殊な病です」
萌瑠は言い含めさせるような表現をするが。
「ただ、あたしが思うに神憑先輩のは《妄想具現症》ではないのかもしれませんね」
「はい?」
「誤診であるか、またはカムフラージュか」
「というと?」
「病院が隠蔽したい事実があって《妄想具現症》と診断したという線です」
「ああ……」
その可能性は確かにある。
患者自身が持つ《病》というものは、その診断名がゆえに常時、社会の枠組みから外れていく者であるという証明のようなものであると僕は思っている。
だか、それが隠蔽されている……どういうことだ?
「――僕の病気を悪化させたいわけじゃないんだな?」
「はい、信じてください。神憑先輩は名前通りの人物であると、あたしは信じています」
「名前通り?」
「神が憑き、日本武尊のような傑物であると信じていますから」
「名前を読み解いたところで、そのような人物になるとは限らないけどね。でも、まあ、わかった。《機関》に所属するよ。《影》に仇討ちするためにね」
「了解です。これから本部に案内します」
これからの僕の行動は、僕が勝手にすることだから、すべては自己責任ということだ――薬をやめるということはね。
真海奈のための復讐劇が始まろうとしていた。
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