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第73話
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「これで終わりか……ありがとう」
「いや、僕の敵になってくれて、ありがとう。この戦いで僕は自信を持って前へ行ける」
「結局キミは、ひとりぼっちになる運命を選ぶんだね」
「いいや、僕は、ひとりじゃない。みんながいるよ」
「それって妄想の存在だろ?」
「でも、いいんだ。ひとりでも楽しく生きていければ、それでいいんだよ」
「なるほど。キミは信じられない病人だよ」
「信じられない病人たち、だろ?」
「結局キミは、もとの歴史に戻っていく。だけど、キミは神憑武尊という存在じゃないキミになるんだ。だって、この物語の登場人物は全員、存在しない名字で、できているからね」
「でも、この世界は確かにあったんだって信じたい」
「じゃあ、俺は、この世界の一部として見守ろう」
「ああ、きっと、どこかの世界で会おう。またな、アハシマ」
「じゃあね、ヒルコ」
この《存在しない物語》はエンディングを迎えようとしていた。
*
《影の王》であるアハシマ――夜行喪樹を倒したことで、ようやく世界に存在する、あらゆる生物を吸収することができた。
しかし、別に夜行喪樹を倒す理由はなかった。
なぜなら僕が倒したのは未来の僕をいじめていた人物の幻影に過ぎないからだ。
幻影だからこそ、本当に倒す意味があったのかは疑問だ。
だけど、夜行喪樹は僕に倒されることを受け入れてくれたように感じる。
《彼》を倒したことで、僕のなかにある妄想の世界は具現化していくだろう……。
なにもかも幻だったのだ。
*
気がつくと僕は再び病院のなかにいた。
伝播大学附属病院の施錠された、ひとり部屋。
「現実顕現」
永遠剣を現実の世界に顕現しようとした。
……できなかった。
「現実顕現、現実顕現、現実顕現!」
いくら唱えても顕現しない。
薬の効果が出始めてきたのか……?
僕は、部屋に永遠という時間を閉じ込められたままなのか?
いや、まだだ。
《習合》能力を持つ僕なら、いくらでも世界を変えられる。
「現実顕現、現実顕現、現実顕現!」
だけど、現実顕現を唱えても、なにも起こらない。
僕は、あのときアハシマを倒して、《影》が存在しない世界をつくった。
つまり、それは僕自身も改変できない世界をつくってしまったということなのか?
……そんなはずはない。
もともと、この世界は現実で、僕の世界が妄想だったという話。
今、目の前にある世界が本物であるということだ。
なんだか僕は、悲しくなった。
けど、これが現実で、僕は、この世界を生きていかなければいけないんだ。
目の前にある事実を受け入れるときが来た。
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