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第10章 −青い治癒−
63 医師の体調不良
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遅い朝の食卓、ハチミツをつけたパンを口へと運ぶ。
「その目、本当に痛くないの? 赤い髪に赤い目で色は、まぁ合ってるけどねぇ。
そうそうコレ、酸味はあるけど美味しかったわよ」
自身は朝食をとっくに終えたポーラがテーブルに黄緑のブドウが入った小鉢を置いた。
「ありがとう。
出血してこうなってるんじゃないし、全く痛くないとは言えないけど⋯⋯カヤミが診てくれてるから問題ないよ」
ロティルは、そう言って赤い右眼で微笑んでみせてから、右隣りに視線をやるが空いた席があるだけ。上がっていた口角が徐々に戻っていく。
「⋯⋯カヤミ、大丈夫かな」
「お医者さんの仕事してる本人が軽い風邪だ って言ってるんなら、きっと そうなんでしょ。大丈夫よ。今は寝かせておいてあげなさい」
「うん⋯⋯」
昨日、ロティルの自宅で2人で数時間過ごしたあと、帰路につく。ルシーとカペラの店に行くのは、また別の機会にしよう ということになった。
ロティルの右眼を気遣って、たまに声を掛け、カヤミから手を繋いで数分 歩く。それを繰り返しながら海辺の町まで帰ってきた。
右眼の色は今までも変化したことはあり、ポーラ達には稀に こんな風になる⋯⋯程度の話しかしていない。今回は、あまりにも赤いので 平気なのか、と流石に案じられた。
約束した通り、夜はカヤミがロティルの部屋にやってきて⋯⋯と、いっても帰宅してから、必要な時以外は同じ部屋で、ほぼ片時も離れず状態。
兄のことや過去の出来事、右眼の状態も悪化し、精神的にも肉体的にも相当参っていたロティルに対し、いつも以上に思いやり、手厚く接するカヤミ。
ソファで寄り添って座っているのを抱きしめれば、そのまま何も言わず抱きしめ返してくれる。
ずっと触れていられる
今日はそんな免罪符を持っているような感じだ
俺の苦痛ごときで済むなら安いものだとさえ思う
もちろん⋯⋯早く治してカヤミに心配させないようにはしたい
しかし、究極どこまで許してもらえるのか⋯⋯そんな思慮に欠けた想像は脳内で継続中。
ロティルが欲にまみれたことを考えているなど全く知らないカヤミは2年前の出来事、キャレの死因について自分なりの意見を述べた。
「傷が原因なんて話だけど、一概にロティルの悪いとは言えないと思う⋯⋯当然 右眼の力のせい、なんていうのは嘘なんだし。亡くなる前日の体調は わからない?」
「前の日、夕方に見舞いに行ったヤツがいて、普通に元気そうだったって⋯⋯俺も変に遠慮しないで毎日顔出せば良かった⋯⋯」
後悔するロティルの言葉を受け止めるようにカヤミの腕がギュッと柔らかな力を込め、抱きしめ直して背中をゆっくりと擦る。
「傷口から菌とかに感染なら、熱が出たり何かしら前触れがあってもいいはずなんだけど⋯⋯」
「突然悪くなったりしたら医療班から教えてもらえたとは思う⋯⋯面会が今できないとか。それに周りも騒ぐし」
「亡くなるまでが急すぎて、違和感を感じるんだよな⋯⋯発作みたいで。こっちは死因を調べる方法が限られてるみだし、斬られた事が原因ではない可能性は充分あるよ」
「そう⋯⋯なの⋯⋯?」
「絶対とは言えない⋯⋯でも、そういうのは俺の方が詳しいんだからさ。だから⋯⋯ロティルだけが思い詰めないで いい」
カヤミの言葉、声が、ロティルの心と身体に深く浸透していく。
「少しだけど⋯⋯気が楽になる。
カヤミは⋯⋯やっぱり癒してくれる魔法使いみたいだ」
「⋯⋯使えないよ⋯⋯そんなの」
目を閉じて小さく笑ったカヤミが、赤い髪を優しく撫でながら自分の額を寄せた。
カヤミが いなかったら
俺は どうなっていたんだろう
出会ったあとだから いくらでも待つなんて言えるけど
本当に会えなかったら 光が何も見えないままで
⋯⋯いずれ呪いに飲まれて 誰かを殺して
自分も死んでいたかもしれない
ロティルが身体を離してカヤミの顔を見ながら伝える。
「カヤミ⋯⋯ ありがとう」
「何だよ、改まって⋯⋯こんなのお礼なんかなくていいのに。自分だって前にそんなようなこと⋯⋯」
「そう思ってた時もあったけど、ありがとう は言われると、いつでも嬉しい言葉だから⋯⋯俺も、ちゃんと伝えたい」
「⋯⋯ん⋯⋯ そう だな」
その晩、一緒にベッドで眠る際、ロティルから腕まくらをしたいと希望し、カヤミも快諾ではないが断らずに受け入れた。
ドギマギする様子は2人共にあったが、前回のような混乱ぶりはなく、その体勢で朝まで穏やかに眠った。
夜が明け、ロティルが ふと目を覚ますと、先に起きていたカヤミ様子が何だかおかしい。その第一声にロティルは驚くことになる。
「⋯⋯俺 多分、熱ある⋯⋯」
それが今朝の出来事。慌てたロティルがカヤミを抱き上げ部屋まで連れて行った。カヤミは現在、自室で眠っている。
ピンクのマグカップで朝食後のお茶を飲んでいるロティル。ポーラは洗濯をしているので食卓にはロティルだけしかいない。
視線を棚にやり、使われずに逆さに置かれている水色のマグカップを見る。寂しい気持ちもあったが⋯⋯カヤミとの今朝のやり取りを思い出して、1人で笑ってしまった。
お姫様を抱っこをしたら怒られた
メチャクチャ赤くなって
基準が よく わかんないなぁ
腕まくらより抱っこの方が恥ずかしいんだ⋯⋯?
抱っこしたカヤミをベッドに下ろしたあと、真っ赤な顔で散々文句を言われた。
『歩けないくらいじゃないんだから⋯⋯! 前みたいに おんぶだっていいのに、何でよりによって あんな抱き方すんだよ!』
『あれなら、俺が抱き上げればいいだけだから、カヤミがそんな動かずに済むし。カヤミ軽いからさ⋯⋯
ただ、暴れられると危ない』
『~~っ だからって⋯⋯!』
『熱あるなら安静にしてなきゃダメだって。そんな興奮しない方が⋯⋯ だってもう、しちゃったんだし』
熱のせいで余計に冷静さがなくなり、カッカしやすいのか我を忘れているようにさえ見える。そんなカヤミをなだめるロティルだが、原因を作った本人では効果はなく助長させるばかりだった。
『何だ その済んだことは仕方ないみたいな言い方。嫌だって言ったのに、無理やりしたくせに⋯⋯』
『⋯⋯ちょっと⋯⋯待っ⋯⋯ 』
『なに笑ってんだよ』
ロティルが下を向いて、口を手で押さえ、もう片方の手のひらをカヤミに向けて、待ってくれ という動きを見せた。そして肩を震わせて笑いを堪える。
一晩たったら昨日みたいな感じはなくなっちゃったな
でも これは これで相当 可愛い⋯⋯
⋯⋯っていうか
この会話だけ聞いてると俺がカヤミを無理やり襲ったみたいじゃない?
さっき1回叫んだのと合わせたらポーラは勘違いしそう
『いや⋯⋯ あははっ⋯⋯ ごめんね? カヤミ』
『⋯⋯どうせ、また変なこと考えてるんだろ。前にも こんなのあった』
『ヒドイな、俺の言われよう』
『はぁ⋯⋯ そんな風に笑えるなら昨日よりは調子良さそうになってるな⋯⋯もう、いいや』
怒り疲れてしまったのか、感情が乱れた状態から脱し、心の動揺は収まった様子のカヤミ。
『まぁ⋯⋯熱が下がるまで、あんまり接触は出来なくなった。うつるかもしれないし⋯⋯既に、うつってる可能性もあるけど』
『うん⋯⋯わかってる』
『⋯⋯これから しっかり治療ってところだったのに、悪い』
平静を取り戻したカヤミは覇気のない曇った表情でロティルに右眼の治癒のことを謝罪した。
『大丈夫だよ。ちょっとづつでも効果あるんだから⋯⋯俺はカヤミが心配。とりあえず早く横になって』
まだ座った姿勢だったカヤミを横たわらせ、上から布団を掛けると軽くポンポンと叩く。
『あのさ⋯⋯ また症状が戻って繰り返すと嫌だから、俺が寝てる時でも部屋に来ていいよ。手を握るだけでも多少は違うはずだから』
『でも⋯⋯ 起きちゃうでしょ⋯⋯』
『眠かったら、そのまま寝てると思うし。明日には熱も下がるかもしれないから、多分今日だけの話だよ』
『そう言われたら⋯⋯俺は行くけどさ』
カヤミは自分が動けないのでロティルに部屋へ入る許可を出した。来てもらって手を握るなりしてもらえば効果も見込めるので良いと考えていたが。
『言っとくけど⋯⋯常識の範囲内で、だからな?』
『また そうやって人のことを~』
『⋯⋯昨日 服に手 入れられたんだけど?』
『あれは⋯⋯ 昨日は範囲内だったんだよ⋯⋯』
「その目、本当に痛くないの? 赤い髪に赤い目で色は、まぁ合ってるけどねぇ。
そうそうコレ、酸味はあるけど美味しかったわよ」
自身は朝食をとっくに終えたポーラがテーブルに黄緑のブドウが入った小鉢を置いた。
「ありがとう。
出血してこうなってるんじゃないし、全く痛くないとは言えないけど⋯⋯カヤミが診てくれてるから問題ないよ」
ロティルは、そう言って赤い右眼で微笑んでみせてから、右隣りに視線をやるが空いた席があるだけ。上がっていた口角が徐々に戻っていく。
「⋯⋯カヤミ、大丈夫かな」
「お医者さんの仕事してる本人が軽い風邪だ って言ってるんなら、きっと そうなんでしょ。大丈夫よ。今は寝かせておいてあげなさい」
「うん⋯⋯」
昨日、ロティルの自宅で2人で数時間過ごしたあと、帰路につく。ルシーとカペラの店に行くのは、また別の機会にしよう ということになった。
ロティルの右眼を気遣って、たまに声を掛け、カヤミから手を繋いで数分 歩く。それを繰り返しながら海辺の町まで帰ってきた。
右眼の色は今までも変化したことはあり、ポーラ達には稀に こんな風になる⋯⋯程度の話しかしていない。今回は、あまりにも赤いので 平気なのか、と流石に案じられた。
約束した通り、夜はカヤミがロティルの部屋にやってきて⋯⋯と、いっても帰宅してから、必要な時以外は同じ部屋で、ほぼ片時も離れず状態。
兄のことや過去の出来事、右眼の状態も悪化し、精神的にも肉体的にも相当参っていたロティルに対し、いつも以上に思いやり、手厚く接するカヤミ。
ソファで寄り添って座っているのを抱きしめれば、そのまま何も言わず抱きしめ返してくれる。
ずっと触れていられる
今日はそんな免罪符を持っているような感じだ
俺の苦痛ごときで済むなら安いものだとさえ思う
もちろん⋯⋯早く治してカヤミに心配させないようにはしたい
しかし、究極どこまで許してもらえるのか⋯⋯そんな思慮に欠けた想像は脳内で継続中。
ロティルが欲にまみれたことを考えているなど全く知らないカヤミは2年前の出来事、キャレの死因について自分なりの意見を述べた。
「傷が原因なんて話だけど、一概にロティルの悪いとは言えないと思う⋯⋯当然 右眼の力のせい、なんていうのは嘘なんだし。亡くなる前日の体調は わからない?」
「前の日、夕方に見舞いに行ったヤツがいて、普通に元気そうだったって⋯⋯俺も変に遠慮しないで毎日顔出せば良かった⋯⋯」
後悔するロティルの言葉を受け止めるようにカヤミの腕がギュッと柔らかな力を込め、抱きしめ直して背中をゆっくりと擦る。
「傷口から菌とかに感染なら、熱が出たり何かしら前触れがあってもいいはずなんだけど⋯⋯」
「突然悪くなったりしたら医療班から教えてもらえたとは思う⋯⋯面会が今できないとか。それに周りも騒ぐし」
「亡くなるまでが急すぎて、違和感を感じるんだよな⋯⋯発作みたいで。こっちは死因を調べる方法が限られてるみだし、斬られた事が原因ではない可能性は充分あるよ」
「そう⋯⋯なの⋯⋯?」
「絶対とは言えない⋯⋯でも、そういうのは俺の方が詳しいんだからさ。だから⋯⋯ロティルだけが思い詰めないで いい」
カヤミの言葉、声が、ロティルの心と身体に深く浸透していく。
「少しだけど⋯⋯気が楽になる。
カヤミは⋯⋯やっぱり癒してくれる魔法使いみたいだ」
「⋯⋯使えないよ⋯⋯そんなの」
目を閉じて小さく笑ったカヤミが、赤い髪を優しく撫でながら自分の額を寄せた。
カヤミが いなかったら
俺は どうなっていたんだろう
出会ったあとだから いくらでも待つなんて言えるけど
本当に会えなかったら 光が何も見えないままで
⋯⋯いずれ呪いに飲まれて 誰かを殺して
自分も死んでいたかもしれない
ロティルが身体を離してカヤミの顔を見ながら伝える。
「カヤミ⋯⋯ ありがとう」
「何だよ、改まって⋯⋯こんなのお礼なんかなくていいのに。自分だって前にそんなようなこと⋯⋯」
「そう思ってた時もあったけど、ありがとう は言われると、いつでも嬉しい言葉だから⋯⋯俺も、ちゃんと伝えたい」
「⋯⋯ん⋯⋯ そう だな」
その晩、一緒にベッドで眠る際、ロティルから腕まくらをしたいと希望し、カヤミも快諾ではないが断らずに受け入れた。
ドギマギする様子は2人共にあったが、前回のような混乱ぶりはなく、その体勢で朝まで穏やかに眠った。
夜が明け、ロティルが ふと目を覚ますと、先に起きていたカヤミ様子が何だかおかしい。その第一声にロティルは驚くことになる。
「⋯⋯俺 多分、熱ある⋯⋯」
それが今朝の出来事。慌てたロティルがカヤミを抱き上げ部屋まで連れて行った。カヤミは現在、自室で眠っている。
ピンクのマグカップで朝食後のお茶を飲んでいるロティル。ポーラは洗濯をしているので食卓にはロティルだけしかいない。
視線を棚にやり、使われずに逆さに置かれている水色のマグカップを見る。寂しい気持ちもあったが⋯⋯カヤミとの今朝のやり取りを思い出して、1人で笑ってしまった。
お姫様を抱っこをしたら怒られた
メチャクチャ赤くなって
基準が よく わかんないなぁ
腕まくらより抱っこの方が恥ずかしいんだ⋯⋯?
抱っこしたカヤミをベッドに下ろしたあと、真っ赤な顔で散々文句を言われた。
『歩けないくらいじゃないんだから⋯⋯! 前みたいに おんぶだっていいのに、何でよりによって あんな抱き方すんだよ!』
『あれなら、俺が抱き上げればいいだけだから、カヤミがそんな動かずに済むし。カヤミ軽いからさ⋯⋯
ただ、暴れられると危ない』
『~~っ だからって⋯⋯!』
『熱あるなら安静にしてなきゃダメだって。そんな興奮しない方が⋯⋯ だってもう、しちゃったんだし』
熱のせいで余計に冷静さがなくなり、カッカしやすいのか我を忘れているようにさえ見える。そんなカヤミをなだめるロティルだが、原因を作った本人では効果はなく助長させるばかりだった。
『何だ その済んだことは仕方ないみたいな言い方。嫌だって言ったのに、無理やりしたくせに⋯⋯』
『⋯⋯ちょっと⋯⋯待っ⋯⋯ 』
『なに笑ってんだよ』
ロティルが下を向いて、口を手で押さえ、もう片方の手のひらをカヤミに向けて、待ってくれ という動きを見せた。そして肩を震わせて笑いを堪える。
一晩たったら昨日みたいな感じはなくなっちゃったな
でも これは これで相当 可愛い⋯⋯
⋯⋯っていうか
この会話だけ聞いてると俺がカヤミを無理やり襲ったみたいじゃない?
さっき1回叫んだのと合わせたらポーラは勘違いしそう
『いや⋯⋯ あははっ⋯⋯ ごめんね? カヤミ』
『⋯⋯どうせ、また変なこと考えてるんだろ。前にも こんなのあった』
『ヒドイな、俺の言われよう』
『はぁ⋯⋯ そんな風に笑えるなら昨日よりは調子良さそうになってるな⋯⋯もう、いいや』
怒り疲れてしまったのか、感情が乱れた状態から脱し、心の動揺は収まった様子のカヤミ。
『まぁ⋯⋯熱が下がるまで、あんまり接触は出来なくなった。うつるかもしれないし⋯⋯既に、うつってる可能性もあるけど』
『うん⋯⋯わかってる』
『⋯⋯これから しっかり治療ってところだったのに、悪い』
平静を取り戻したカヤミは覇気のない曇った表情でロティルに右眼の治癒のことを謝罪した。
『大丈夫だよ。ちょっとづつでも効果あるんだから⋯⋯俺はカヤミが心配。とりあえず早く横になって』
まだ座った姿勢だったカヤミを横たわらせ、上から布団を掛けると軽くポンポンと叩く。
『あのさ⋯⋯ また症状が戻って繰り返すと嫌だから、俺が寝てる時でも部屋に来ていいよ。手を握るだけでも多少は違うはずだから』
『でも⋯⋯ 起きちゃうでしょ⋯⋯』
『眠かったら、そのまま寝てると思うし。明日には熱も下がるかもしれないから、多分今日だけの話だよ』
『そう言われたら⋯⋯俺は行くけどさ』
カヤミは自分が動けないのでロティルに部屋へ入る許可を出した。来てもらって手を握るなりしてもらえば効果も見込めるので良いと考えていたが。
『言っとくけど⋯⋯常識の範囲内で、だからな?』
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