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破・隷属の首輪+5でダンジョンクリア編
5.妖精の魔法
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可愛いリリィをこのまま周囲の目から隠すように閉じ込めて、ずっと飼ってしまいたい。
(別にそうしたっていいじゃないか。リリィだってあたしのことが嫌いなわけじゃないんだから)
鱗粉の影響を受けたゴズメルは、むらむらとリリィの頬に手を伸ばす。
リリィは叩かれるとでも思ったのか、びくっと肩を震わせた。
だがゴズメルが優しく触れると、急速に警戒心が解ける。
まるで可愛がられることに慣れた猫のように、自分から頭をゴズメルの手の下に滑り込ませて来るのだった。
「……撫でてほしいわ、ゴズメル」
まっすぐに要求されて、ゴズメルは苦笑してしまった。
「あんたって妖精族じゃなかったっけ? 本当の本当は猫族だった?」
横に座り、撫でながらからかうと、リリィはすこし思案顔になって「にゃあ」と猫の鳴きまねをした。
一糸まとわぬ美少女の繰り出す猫語という破壊力に、ゴズメルは危うく血を吐きかけた。
「にゃあ。にゃあ。……にゃーん」
リリィは本物の猫のように伸びあがり、丸めた手でちょんとゴズメルの唇を押す。
ねだるように小首をかしげて、大きな瞳で見上げる。
「にゃおーん」
それはあまりにも完璧な、キスをねだる仕草だった。
「リリィッ! なんという可愛い猫ちゃんッ!!」
発狂したゴズメルは、リリィの顔という顔に唇を落とす。
リリィはくすぐったそうに身をよじったが、ゴズメルの唇を唇で捕らえて、ちゅっと吸い返した。
「あなたが望むなら私はいくらでも猫になるわ。お部屋に独りぼっちで、とても寂しかったんだもの……」
リリィのエメラルドの瞳が揺れていた。
彼女はゴズメルの分厚い下唇をちょうど猫がミルクを舌で掬うように舐めた。
「あなたは笑うかもしれないけど、妖精族って本当にそういうものなの。私たちはとても弱いから独りではいられない。このみっともない翅だって、そう」
ギュッと抱きしめられたゴズメルは、淡く光る四枚翅を間近に見ていた。美しい模様は、水の中の光のように揺らめいている。
「お祖母様が言っていたわ。妖精族は、どんな時でも誰かが傍にいてくれるようにバフスキルが発達したんですって。一族は種として自立できないことを恥じて、レベルアップ素材集めに乗り出し、結局は滅んでしまった」
悲しい歴史を語るリリィの口調は、淡々としたものだった。
「許してね、ゴズメル。私はきっと、この翅を使ってあなたを利用しているのよ。強くて素敵なあなたを、こんなふうに鱗粉の虜にするなんて間違ったことだわ。……こんな翅、いっそちぎってしまえたらいいのに」
「リリィ……」
リリィの自虐的な様子に、ゴズメルはたまらない気持ちになった。
強く抱き返すと、よほど独りが辛かったのだろう。喉を鳴らしてしがみついてくる。
「……ちぎるなんて言うなよ。その翅含めて、あんたはとても綺麗なんだから」
「かわいそうなゴズメル。すっかり惑わされて」
「なんだよ、違うってば。ほら、もっとよく見せてみな」
ゴズメルは、リリィをベッドにどさっと押し倒した。
窓の覆いを取ると、今日という日を惜しむような、一番眩しい西日が射し込む。
リリィは両手で顔を覆って「だめ。今は見ないで」と、体を背ける。
ゴズメルは強引にその手を引きはがし、ベッドに縫い留めてしまう。
取り押さえられたリリィは、恥ずかしそうに横を向いたまま涙ぐんでいた。その背中には、西日を反射した片翅がきらきらと光っている。
ゴズメルは「綺麗だよ」と言った。
「リリィ、あんたみたいに綺麗な子、あたし他に見たことない」
本当にそう思った。何人たりとも、この美しい妖精を、暗い籠の中に閉じ込めるべきではないのだ。絶対に。
そう肚を決めると、腰のあたりにわだかまっていた欲情が、すーっと潮が引くように消えていく。
どうやらリリィの言ったことは本当なんだな、とゴズメルは思った。
妖精族は多種族から庇護を受けるために鱗粉を利用する。
そう考えると、妖精族のバフはおそらく時間制の二段構えなのだ。
第一段階で催淫のバフを対象者にかけ、第二段階で庇護者として確立させる。
一晩かけてどっぷりと鱗粉をまぶされたゴズメルは、今や彼女を庇護するものとなった。
よって、第一段階のバフは解除された。あるいは弱体化した。
仮説だが、こんなところだろう。もちろん、レベルの上がったゴズメルに鱗粉への耐性がついた、というセンも十分に生きている。
ゴズメルは軽く笑って、リリィの頬にキスしてみせた。
「ずっと独りにして悪かったよ。でも、そのおかげであんたの翅のことは、どうにかなりそうだ」
リリィが眩しそうにゴズメルを見る。ゴズメルは力強くうなずいてた。
「さ、いい子だから元気を出しな。いいかげん何か飲んだり食べたりしないと倒れちゃうだろ」
ゴズメルはそう言って、食料の入った紙袋をがさがさと漁る。
身を起こしたリリィは、ぽすっと顎をゴズメルの肩に預けた。
「……妖精は、三日くらいはなにも食べなくても平気なのよ。翅で空気中の水分を栄養に変換できるから」
「えぇ、本当? そんなんじゃ胃腸が弱るんじゃないか」
ゴズメルはりんごを丸のままリリィの口に押し付けた。沈黙を強いられたリリィはシャリッとかじる。
何気なくかじった痕を見たゴズメルは驚いた。虫がかじった痕よりも小さいのだ。
「リリィ、あんたって本当に口が小さいんだねえ」
ゴズメルはそう言って一口で半分ほどかじった。いかにも品のない食べ方だったが、リリィは食欲を誘われたらしい。ごく、と細い喉を鳴らして「それ、もっと欲しいわ」と、雛鳥のように口を開ける。
「え、じゃあちゃんと新しいのを切ってくるよ」
「……そのままじゃ、だめかしら?」
「いや、別に……だめではないけど……」
ゴズメルが食べかけのりんごを渡すと、リリィは両手で持って小さな口で食べ始めた。
小鳥のように果肉をついばむ様子に、ゴズメルは妙な照れを感じた。
(妖精の鱗粉って、本当にすごいな。色恋沙汰なんてさっぱりわからないあたしでも、こんな気分になるんだから)
(別にそうしたっていいじゃないか。リリィだってあたしのことが嫌いなわけじゃないんだから)
鱗粉の影響を受けたゴズメルは、むらむらとリリィの頬に手を伸ばす。
リリィは叩かれるとでも思ったのか、びくっと肩を震わせた。
だがゴズメルが優しく触れると、急速に警戒心が解ける。
まるで可愛がられることに慣れた猫のように、自分から頭をゴズメルの手の下に滑り込ませて来るのだった。
「……撫でてほしいわ、ゴズメル」
まっすぐに要求されて、ゴズメルは苦笑してしまった。
「あんたって妖精族じゃなかったっけ? 本当の本当は猫族だった?」
横に座り、撫でながらからかうと、リリィはすこし思案顔になって「にゃあ」と猫の鳴きまねをした。
一糸まとわぬ美少女の繰り出す猫語という破壊力に、ゴズメルは危うく血を吐きかけた。
「にゃあ。にゃあ。……にゃーん」
リリィは本物の猫のように伸びあがり、丸めた手でちょんとゴズメルの唇を押す。
ねだるように小首をかしげて、大きな瞳で見上げる。
「にゃおーん」
それはあまりにも完璧な、キスをねだる仕草だった。
「リリィッ! なんという可愛い猫ちゃんッ!!」
発狂したゴズメルは、リリィの顔という顔に唇を落とす。
リリィはくすぐったそうに身をよじったが、ゴズメルの唇を唇で捕らえて、ちゅっと吸い返した。
「あなたが望むなら私はいくらでも猫になるわ。お部屋に独りぼっちで、とても寂しかったんだもの……」
リリィのエメラルドの瞳が揺れていた。
彼女はゴズメルの分厚い下唇をちょうど猫がミルクを舌で掬うように舐めた。
「あなたは笑うかもしれないけど、妖精族って本当にそういうものなの。私たちはとても弱いから独りではいられない。このみっともない翅だって、そう」
ギュッと抱きしめられたゴズメルは、淡く光る四枚翅を間近に見ていた。美しい模様は、水の中の光のように揺らめいている。
「お祖母様が言っていたわ。妖精族は、どんな時でも誰かが傍にいてくれるようにバフスキルが発達したんですって。一族は種として自立できないことを恥じて、レベルアップ素材集めに乗り出し、結局は滅んでしまった」
悲しい歴史を語るリリィの口調は、淡々としたものだった。
「許してね、ゴズメル。私はきっと、この翅を使ってあなたを利用しているのよ。強くて素敵なあなたを、こんなふうに鱗粉の虜にするなんて間違ったことだわ。……こんな翅、いっそちぎってしまえたらいいのに」
「リリィ……」
リリィの自虐的な様子に、ゴズメルはたまらない気持ちになった。
強く抱き返すと、よほど独りが辛かったのだろう。喉を鳴らしてしがみついてくる。
「……ちぎるなんて言うなよ。その翅含めて、あんたはとても綺麗なんだから」
「かわいそうなゴズメル。すっかり惑わされて」
「なんだよ、違うってば。ほら、もっとよく見せてみな」
ゴズメルは、リリィをベッドにどさっと押し倒した。
窓の覆いを取ると、今日という日を惜しむような、一番眩しい西日が射し込む。
リリィは両手で顔を覆って「だめ。今は見ないで」と、体を背ける。
ゴズメルは強引にその手を引きはがし、ベッドに縫い留めてしまう。
取り押さえられたリリィは、恥ずかしそうに横を向いたまま涙ぐんでいた。その背中には、西日を反射した片翅がきらきらと光っている。
ゴズメルは「綺麗だよ」と言った。
「リリィ、あんたみたいに綺麗な子、あたし他に見たことない」
本当にそう思った。何人たりとも、この美しい妖精を、暗い籠の中に閉じ込めるべきではないのだ。絶対に。
そう肚を決めると、腰のあたりにわだかまっていた欲情が、すーっと潮が引くように消えていく。
どうやらリリィの言ったことは本当なんだな、とゴズメルは思った。
妖精族は多種族から庇護を受けるために鱗粉を利用する。
そう考えると、妖精族のバフはおそらく時間制の二段構えなのだ。
第一段階で催淫のバフを対象者にかけ、第二段階で庇護者として確立させる。
一晩かけてどっぷりと鱗粉をまぶされたゴズメルは、今や彼女を庇護するものとなった。
よって、第一段階のバフは解除された。あるいは弱体化した。
仮説だが、こんなところだろう。もちろん、レベルの上がったゴズメルに鱗粉への耐性がついた、というセンも十分に生きている。
ゴズメルは軽く笑って、リリィの頬にキスしてみせた。
「ずっと独りにして悪かったよ。でも、そのおかげであんたの翅のことは、どうにかなりそうだ」
リリィが眩しそうにゴズメルを見る。ゴズメルは力強くうなずいてた。
「さ、いい子だから元気を出しな。いいかげん何か飲んだり食べたりしないと倒れちゃうだろ」
ゴズメルはそう言って、食料の入った紙袋をがさがさと漁る。
身を起こしたリリィは、ぽすっと顎をゴズメルの肩に預けた。
「……妖精は、三日くらいはなにも食べなくても平気なのよ。翅で空気中の水分を栄養に変換できるから」
「えぇ、本当? そんなんじゃ胃腸が弱るんじゃないか」
ゴズメルはりんごを丸のままリリィの口に押し付けた。沈黙を強いられたリリィはシャリッとかじる。
何気なくかじった痕を見たゴズメルは驚いた。虫がかじった痕よりも小さいのだ。
「リリィ、あんたって本当に口が小さいんだねえ」
ゴズメルはそう言って一口で半分ほどかじった。いかにも品のない食べ方だったが、リリィは食欲を誘われたらしい。ごく、と細い喉を鳴らして「それ、もっと欲しいわ」と、雛鳥のように口を開ける。
「え、じゃあちゃんと新しいのを切ってくるよ」
「……そのままじゃ、だめかしら?」
「いや、別に……だめではないけど……」
ゴズメルが食べかけのりんごを渡すと、リリィは両手で持って小さな口で食べ始めた。
小鳥のように果肉をついばむ様子に、ゴズメルは妙な照れを感じた。
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