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破・隷属の首輪+5でダンジョンクリア編
6.契約
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ゴズメルはリリィに、今日あったことをかいつまんで報告した。
冒険者協会に休みの連絡を入れたこと、無事にレベルが上がったこと、魔封じのアミュレットの代用品が手に入ったこと。しかし、その代用品というのは……。
ゴズメルがアイテムボックスから取り出した隷属の首輪+5を見て、リリィは「まぁ……!」と高い声を上げた。
ごつごつとした首輪を受け取ると、ゴズメルの表情をうかがうようにして言った。
「私、今日だけであなたに大変な手間をかけさせてしまったのね。それに、可愛いナナにまで迷惑をかけて……」
「いいや、手間だなんてことはないよ。アレを壊しちまったのはあたしなんだからさ。……ナナはあんたのことをとても心配してた。早く元気な顔を見せてやらなきゃね」
「ええ、そうね……」
リリィは首輪を膝に乗せて、不安そうに手で撫でている。ゴズメルは言った。
「それを装備するのは抵抗があるかもしれないけど、ひとまず一時しのぎにはなると思う。ミックが鐵刑の塔に魔道具屋がいるって教えてくれたから、あたしは明日そこへ行ってみるよ。リリィは……」
「私も一緒に行くわ。足手まといにならないようにするから、連れて行ってちょうだい」
リリィならそう言うだろうと思っていた。
独りでいられないという妖精の性質の話を今しがた聞いたばかりだし、彼女は真面目で責任感が人一倍強い。
だが、ゴズメルは気が進まなかった。
「……今のあんたは本調子じゃないし、鐵刑の塔は高難度ダンジョンだ。首輪で翅をしまえたら家まで送ってあげるからしばらく休んでな。心配しなくても、新しい魔封じのアミュレットはちゃんと届けるよ」
「お願いよ。置いていかないで」
リリィはゴズメルの胸にしがみついた。
「あなたの身に何かあったらと思うと、私は気が狂ってしまうわ。本当よ。本当なの、ゴズメル」
「ンー……。よし、とりあえずその首輪を装備してから考えよう」
「嫌よ。あなた、私に待っているように命令する気でしょう」
図星だった。視線を泳がせるゴズメルに、リリィは「お願い。私を連れて行くと約束して」と縋りついた。
「ゴズメル、あなたは仲間のためなら無茶をしてしまうひとだわ。私は回復魔法を使えるし、一緒に行けばいざというとき助けを呼べる。ダンジョンはペアで挑戦したほうが生還率が高いって、ゴズメルも知っているでしょう?」
「うーん……」
こうも必死に頼み込まれると、ゴズメルは弱かった。
「……じゃ、ピンチの時は戦わず、絶対に真っ先に逃げるんだよ」
ゴズメルが怖い顔を近づけると、リリィは強気にも額で押し返してきた。
「ええ、もちろんよ。受付嬢の危機管理能力を見せてあげるわ」
仕事のできるヒーラー受付嬢の言葉に、ゴズメルは不覚にもドキッとしてしまった。リリィと二人でパーティーを組むなんて、冒険者仲間に知られたら嫉妬の的になること請け合いである。
「約束よ。ゴズメル」
「うん……」
そう言いあって、唇を触れさせたのは、どちらからだっただろう。
離れたのはリリィからだ。ゴズメルは今のはなんだろうかと、ぱちくり瞬いた。
だが、すっと顔を離したリリィがメニュー画面を開くのがわかった。ゴズメルは慌ててリリィに続く。
鍵穴を読み取り、契約ページにアクセスする。
(……げっ)
目の前に迫ってきた契約データの重さにゴズメルはのけぞった。
ミックが『面倒な契約』と言っていたことを思い出す。
データは甲乙の設定から始まり、難解な専門用語がみっちり詰まった各条項が続く。めくってもめくっても署名ページにたどりつかず、ゴズメルはぞっとしてしまった。
(えーと……乙が甲の契約に違反した場合、5種類の……ンガー! 読んでられるかこんなもん!)
グレーゾーンの骨董品とはいえ、動作確認は販売者のミックが済ませているはずだ。
早々に匙を投げたゴズメルは条項をすっとばして、さっさと自分のぶんの署名を済ませてしまった。
横目でリリィの様子を見ると、真面目に読み込んでいるようだ。目を閉じて、細かくうなずいている。
リリィの集中を乱さないよう、ゴズメルはベッドからそっと立ち上がった。
買ってきたものをあるべきところにしまい、お湯を沸かす。リリィの体を清めてやるためだ。いつまでも裸でいさせるから妙な気を起こしそうになる、とゴズメルは思った。体を拭いて、さっさと服を着せてやるべきだった。
ゴズメルが熱い湯の入ったタライを運んでいる時、リリィはやっと終わったらしい。
人形のように閉じていた瞼をぱちっと開き「……あなたは、もう署名したの?」と首をかしげる。
「うん、とっくだよ。どう? もう装備できそう?」
タライを床に置いて尋ねたゴズメルに、リリィはなぜか頬を赤らめた。
「そ、そうね。あなたがいいのなら、私はいつでもかまわないわ。ご主人様」
「ハ? なんだって?」
ゴズメルは本気で聞き返したのだが、リリィはますます赤くなった。
そして、咳払いをひとつして、こう言った。
「…………お、お願いですから、この卑しい女奴隷に、首輪をつけてください。ご主人様」
「!?!?」
「か、飼ってください。リリィの身も心も管理してください、ご主人様………!」
M奴隷じみたセリフが止まらないリリィに、ゴズメルは驚きのあまり腰を抜かすところだった。
だが、ハッとした。
SM用のラブグッズだと、管理者の度量次第で命令を聞くと、ミックからは確かにそう説明されていたのだ。
ゴズメルは署名済みの契約書をかたっぱしから検索して、理解した。
なんということだろう、隷属の首輪+5の着用者は、管理者とともにSM的シチュエーションプレイに興じなければならないのだ!
冒険者協会に休みの連絡を入れたこと、無事にレベルが上がったこと、魔封じのアミュレットの代用品が手に入ったこと。しかし、その代用品というのは……。
ゴズメルがアイテムボックスから取り出した隷属の首輪+5を見て、リリィは「まぁ……!」と高い声を上げた。
ごつごつとした首輪を受け取ると、ゴズメルの表情をうかがうようにして言った。
「私、今日だけであなたに大変な手間をかけさせてしまったのね。それに、可愛いナナにまで迷惑をかけて……」
「いいや、手間だなんてことはないよ。アレを壊しちまったのはあたしなんだからさ。……ナナはあんたのことをとても心配してた。早く元気な顔を見せてやらなきゃね」
「ええ、そうね……」
リリィは首輪を膝に乗せて、不安そうに手で撫でている。ゴズメルは言った。
「それを装備するのは抵抗があるかもしれないけど、ひとまず一時しのぎにはなると思う。ミックが鐵刑の塔に魔道具屋がいるって教えてくれたから、あたしは明日そこへ行ってみるよ。リリィは……」
「私も一緒に行くわ。足手まといにならないようにするから、連れて行ってちょうだい」
リリィならそう言うだろうと思っていた。
独りでいられないという妖精の性質の話を今しがた聞いたばかりだし、彼女は真面目で責任感が人一倍強い。
だが、ゴズメルは気が進まなかった。
「……今のあんたは本調子じゃないし、鐵刑の塔は高難度ダンジョンだ。首輪で翅をしまえたら家まで送ってあげるからしばらく休んでな。心配しなくても、新しい魔封じのアミュレットはちゃんと届けるよ」
「お願いよ。置いていかないで」
リリィはゴズメルの胸にしがみついた。
「あなたの身に何かあったらと思うと、私は気が狂ってしまうわ。本当よ。本当なの、ゴズメル」
「ンー……。よし、とりあえずその首輪を装備してから考えよう」
「嫌よ。あなた、私に待っているように命令する気でしょう」
図星だった。視線を泳がせるゴズメルに、リリィは「お願い。私を連れて行くと約束して」と縋りついた。
「ゴズメル、あなたは仲間のためなら無茶をしてしまうひとだわ。私は回復魔法を使えるし、一緒に行けばいざというとき助けを呼べる。ダンジョンはペアで挑戦したほうが生還率が高いって、ゴズメルも知っているでしょう?」
「うーん……」
こうも必死に頼み込まれると、ゴズメルは弱かった。
「……じゃ、ピンチの時は戦わず、絶対に真っ先に逃げるんだよ」
ゴズメルが怖い顔を近づけると、リリィは強気にも額で押し返してきた。
「ええ、もちろんよ。受付嬢の危機管理能力を見せてあげるわ」
仕事のできるヒーラー受付嬢の言葉に、ゴズメルは不覚にもドキッとしてしまった。リリィと二人でパーティーを組むなんて、冒険者仲間に知られたら嫉妬の的になること請け合いである。
「約束よ。ゴズメル」
「うん……」
そう言いあって、唇を触れさせたのは、どちらからだっただろう。
離れたのはリリィからだ。ゴズメルは今のはなんだろうかと、ぱちくり瞬いた。
だが、すっと顔を離したリリィがメニュー画面を開くのがわかった。ゴズメルは慌ててリリィに続く。
鍵穴を読み取り、契約ページにアクセスする。
(……げっ)
目の前に迫ってきた契約データの重さにゴズメルはのけぞった。
ミックが『面倒な契約』と言っていたことを思い出す。
データは甲乙の設定から始まり、難解な専門用語がみっちり詰まった各条項が続く。めくってもめくっても署名ページにたどりつかず、ゴズメルはぞっとしてしまった。
(えーと……乙が甲の契約に違反した場合、5種類の……ンガー! 読んでられるかこんなもん!)
グレーゾーンの骨董品とはいえ、動作確認は販売者のミックが済ませているはずだ。
早々に匙を投げたゴズメルは条項をすっとばして、さっさと自分のぶんの署名を済ませてしまった。
横目でリリィの様子を見ると、真面目に読み込んでいるようだ。目を閉じて、細かくうなずいている。
リリィの集中を乱さないよう、ゴズメルはベッドからそっと立ち上がった。
買ってきたものをあるべきところにしまい、お湯を沸かす。リリィの体を清めてやるためだ。いつまでも裸でいさせるから妙な気を起こしそうになる、とゴズメルは思った。体を拭いて、さっさと服を着せてやるべきだった。
ゴズメルが熱い湯の入ったタライを運んでいる時、リリィはやっと終わったらしい。
人形のように閉じていた瞼をぱちっと開き「……あなたは、もう署名したの?」と首をかしげる。
「うん、とっくだよ。どう? もう装備できそう?」
タライを床に置いて尋ねたゴズメルに、リリィはなぜか頬を赤らめた。
「そ、そうね。あなたがいいのなら、私はいつでもかまわないわ。ご主人様」
「ハ? なんだって?」
ゴズメルは本気で聞き返したのだが、リリィはますます赤くなった。
そして、咳払いをひとつして、こう言った。
「…………お、お願いですから、この卑しい女奴隷に、首輪をつけてください。ご主人様」
「!?!?」
「か、飼ってください。リリィの身も心も管理してください、ご主人様………!」
M奴隷じみたセリフが止まらないリリィに、ゴズメルは驚きのあまり腰を抜かすところだった。
だが、ハッとした。
SM用のラブグッズだと、管理者の度量次第で命令を聞くと、ミックからは確かにそう説明されていたのだ。
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