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急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編
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病室の外で、シラヌイが白い眉をぴくつかせた。何かが奇妙だった。
手に持っていたものの重みがふっと軽くなったような感覚。いや、それどころか・・・。
「魔力のゆらぎが、止まった……?」
「……あら」
壁によりかかって休んでいたマリアが片目を開ける。
「じゃ、ふたりとも始末できたのね? よかったこと」
「そんな言い方は……」
「あら、気に障った? ごめんなさいね、私も待たされ通しで気が立っているのよ」
伸びをしたマリアは、身の丈ほどの大盾を軽々と持ち上げた。
「結界を解除して。死骸を回収します」
「待て! 下の階にはまだ医師や看護師がいるんだ。もしものことがあったら……」
「もしものことはもう起こっているのよ、シラヌイ。妖精族を匿い、掟破りのミノタウロス族を野放しにして……これ以上さらに罪を重ねるつもりなのですか?」
シラヌイはため息をついた。これ以上マリアを抑えておくことはできない。
「……いいだろう。衝撃に備えろ」
マリアが盾を構えたことを確認して、ドアに浮かび上がる文字を手で払う。
何事も起こらなかった。
マリアは肩透かしを食ったと言わんばかりに盾を下げ、丸いドアノブに手を伸ばす。問題なく回った。
ゆっくりと中に入るマリアの後に、シラヌイは続く。
アルティカ支部の会長を務めて長いが、こんな事態は初めてだ。先ほど結界に感じた奇妙な感覚はなんだったのだろう?
そんな針の穴のような違和感は、リリィを見て消し飛んだ。
ベッドに横たわる妖精族の少女が、淡い燐光を放っている。
「リリィ……!」
シラヌイは駆けよった。彼女の魂をなんとか結界につなぎとめようとするのだが、リリィの輪郭はどんどん淡くなる。
新天地へ行ってしまう。ベゴニアの忘れ形見が。
目の前でその死にざまを見るまで、シラヌイは気がつかなかった。
リリィを見るとき、いつも祖母や父の面影を重ねていたからだ。
いつも大人びて見えた。だが、目を閉じて死にかけている姿は、あまりにもいたいけだった。
涙を禁じ得ないシラヌイを、マリアは退屈そうに一瞥した。
アルティカ支部になんら思い入れのない彼女は、この病室の違和感を一目で見抜いていた。
ゴズメルがいない。いや、それよりも。
「……シラヌイ、そこをどいて」
「ああリリィ、なんという……なんということだ……」
「どきなさい!」
マリアはシラヌイを押しのけて、ベッドにたぐまった上掛けを床へ払いのけた。
ベッドから丸い水晶玉が転がり落ち、フッとリリィの姿が消えた。
床に落ちた上掛けの中から「ウグッ」と低くかすれたうめきが漏れた。
「なっ……」
シラヌイは後ずさった。
リリィの死を偽装する3D映像が、水晶玉から投影されていただけだ。
マリアは容赦なく上掛けを蹴り上げた。
「ぐぉっ!」
それを投影していたのは。
「ジーニョ老人……まったく良い腕ね。こんなへき地に捨て置くのが勿体ないほどの才能だわ」
上掛けの中から姿をあらわしたジーニョは頭を踏みつけられていた。
マリアはハイヒールでぐりぐりとジーニョの後頭部を踏みにじった。
「シャインの身分に敬意を表して聞いてあげるわ。どうしてこんな馬鹿なことを?」
「…………」
「ふふ。聞こえない」
「愛の……ためだ……っ」
その返事に、マリアの顔から微笑みが消えうせた。
「気持ち悪い」
その声の冷たさにジーニョは震えあがった。
「よくわかったわ。あなたは新天地にふさわしくない。今ここで、消し炭にしてあげる」
窓を背にしたマリアの瞳孔は、蛇と同じ、縦長だった。
◇◇◇
ゴズメルはリリィを抱いたまま施療院を抜け出し、屋根から屋根へ走っていた。
腕の中のリリィが小さくつぶやく。
「ジーニョおじさまは大丈夫かしら……」
「さてね」
マリアが暴挙に出たとして、近くにはシラヌイがいる。まさか見て見ぬふりはしないだろうが・・・。
「でも、じいさんは覚悟を決めてリリィを助けに来たんだ。その気持ちを無駄にしちゃいけないよ」
ゴズメルは病室で目を覚ました時のことを思い出した。
腕の中にはリリィがいた。頬はばら色で、すぅすぅと健やかな寝息を立てている。
(よかった。戻ってこられたんだ)
夢の中でしたのと同じように、ゴズメルはリリィの唇に唇を重ねた。
ん、と喉の奥でうめいて、リリィが目蓋をうっすらと開ける。翡翠色の輝きに、ゴズメルの胸は高鳴った。
まるで宝箱の中の宝石みたいに、綺麗だ。
リリィは魔力を放出しきって、まだ意識がはっきりしていないらしい。
とろんとした目で、反射のように唇を吸いかえしてきた。
「ん、ふ……」
「リリィ……」
ふっくらとした胸が上下している。リリィが息をしている。ゴズメルはそれだけのことが奇跡のように思えた。
覆いかぶさって、手に手を重ね、血の通う喉を吸う。
「はぁ……っ、あ、そこ、だめぇ……」
制服の襟で隠れない箇所だ。ゴズメルはかまわず吸血鬼のように噛んで吸った。
夢の中だけでなく、現実でもリリィを自分のものにしたい。
「はぁん……」
リリィの胸が大きくふくらむ。
頭を起こしたリリィは、そっと角に唇をくれた。ゴズメルの頭蓋から背骨、骨盤までもが、じんじんと痺れる。
「ね、だめよ……ここ、どこなの……? わたし、いったい……」
「だめじゃない……もうちょっと、もうちょっとだけ、いいだろ……?」
「あぁっ」
ぺろっと喉をひと舐めする。
リリィに状況を説明しなければならないのだが、頭がのぼせてしまっている。
「リリィ、好き……好きだよ……今すぐあんたが欲しい……」
「あ、ゴズメル、そ、そんな……っ」
「もうどこにも行かないように食っちまいたいよ……」
寝起きの物騒な思考と唾液がもう止まらない。
喘ぐことしかできないリリィの口に自分の唾液を舌で押し込み、膝でがっちりとリリィの腰を押さえつける。
その時、もしも窓から落ちる奇妙な影に気がつかなかったら、ゴズメルはそのままリリィを抱き潰していたことだろう。
パチパチと瞬いたゴズメルは顔を上げて「うわぁっ」と声を漏らした。
ジーニョだ。
まるで蜘蛛みたいに、ジーニョが窓にべったり張り付いている。そのうえ、目が合うと開けろと言わんばかりにバシバシ窓ガラスをたたき始めた。病室の外にはマリアやシラヌイがいるというのに!
ジーニョの存在に気づいたリリィはかぁっと頬を赤らめている。
「な、なに? いったいなんなの?」
「話は後だ。ドアの外に、あんたを狙ってるやつがいるんだよ」
「えぇっ」
ゴズメルが窓を開けると、ジーニョはヨタヨタと中に入ってきた。ゴズメルは呆れたように言った。
「驚いたな、あんたにデバガメの趣味があったなんて」
「抜かせ! 監視カメラに妙なものが映っていれば、様子を見に来ざるを得んだろう」
「えっ?」
「まったく、バカ面で船の中を歩き回りやがって」
ゴズメルはハッとした。天中之壺の中に入ったゴズメルを、ジーニョはモニターで観測していたのだ。
そしてリリィの本体の異常にも気がつき鐵刑の塔から駆けつけた、ということらしい。
「フン。駆けつけたとこで中には入れんし、なぜかお嬢さんのバイタルは安定しとるし、まったく……」
「おじさま……何が起こっているのですか」
困惑した声をあげるリリィに、ジーニョは……おそらく偏屈な彼が久しぶりに見せる笑顔なのだろう。犬がくしゃみしたような顔をしてみせた。
「なに、心配せんでよろしい。行き違いがあってね、お嬢さんは良くないことに巻き込まれてしまったのだ」
「そんな……」
「大丈夫だ。俺が来たからにはなんとかしよう。だが、ほとぼりが冷めるまでは身を隠したほうがいい。さ、そこのバカミノタウロスを使って、窓からお逃げなさい」
やれやれ、乗り物扱いだ。だがゴズメルは文句を言っている場合ではないことはわかっていた。
「行くよ、リリィ」
「でも……」
「ジーニョじいさんには何か考えがあんのさ。今はそれに乗るしかないね」
「その通りだ。後のことは任せておきなさい」
虚勢を張っているようには見えない。ということは勝算があるのだろう。
まずリリィを屋根に上らせ、次にゴズメルが窓枠に上がる。その背中に、ジーニョは「オイ」と、四角い包みを押し付けてきた。綺麗に包装された紙箱だ。
「偽卵の試作品だ」とジーニョは言った。
「え!」
「時間が足りなくて、一個しか作れなかった……あまり出来は期待するな」
「そんな、一個あれば十分だよ! おやっさん、ありがとう……!」
「礼はいい。それよりお嬢さんの体調に気をつけるんだ。あの子は……」
廊下からシラヌイとマリアの話し声が聞こえてきた。
ジーニョは舌打ちして、「早く行くんだ!」と、ゴズメルの巨尻に体当たりした。
ゴズメルは危うく地面にキスするところだった。
だが、ピシャッと窓が閉められてしまうと、もう文句も言えない。
「ゴズメル……」
屋根の上で、リリィの緑色の長い髪が、風になびいていた。わけもわからないまま急き立てられては不安で仕方ないだろう。ゴズメルは元気づけるように、リリィに向かって腕を広げた。
「さ、あたしに掴まんな、リリィ。……飛ばすよ」
手に持っていたものの重みがふっと軽くなったような感覚。いや、それどころか・・・。
「魔力のゆらぎが、止まった……?」
「……あら」
壁によりかかって休んでいたマリアが片目を開ける。
「じゃ、ふたりとも始末できたのね? よかったこと」
「そんな言い方は……」
「あら、気に障った? ごめんなさいね、私も待たされ通しで気が立っているのよ」
伸びをしたマリアは、身の丈ほどの大盾を軽々と持ち上げた。
「結界を解除して。死骸を回収します」
「待て! 下の階にはまだ医師や看護師がいるんだ。もしものことがあったら……」
「もしものことはもう起こっているのよ、シラヌイ。妖精族を匿い、掟破りのミノタウロス族を野放しにして……これ以上さらに罪を重ねるつもりなのですか?」
シラヌイはため息をついた。これ以上マリアを抑えておくことはできない。
「……いいだろう。衝撃に備えろ」
マリアが盾を構えたことを確認して、ドアに浮かび上がる文字を手で払う。
何事も起こらなかった。
マリアは肩透かしを食ったと言わんばかりに盾を下げ、丸いドアノブに手を伸ばす。問題なく回った。
ゆっくりと中に入るマリアの後に、シラヌイは続く。
アルティカ支部の会長を務めて長いが、こんな事態は初めてだ。先ほど結界に感じた奇妙な感覚はなんだったのだろう?
そんな針の穴のような違和感は、リリィを見て消し飛んだ。
ベッドに横たわる妖精族の少女が、淡い燐光を放っている。
「リリィ……!」
シラヌイは駆けよった。彼女の魂をなんとか結界につなぎとめようとするのだが、リリィの輪郭はどんどん淡くなる。
新天地へ行ってしまう。ベゴニアの忘れ形見が。
目の前でその死にざまを見るまで、シラヌイは気がつかなかった。
リリィを見るとき、いつも祖母や父の面影を重ねていたからだ。
いつも大人びて見えた。だが、目を閉じて死にかけている姿は、あまりにもいたいけだった。
涙を禁じ得ないシラヌイを、マリアは退屈そうに一瞥した。
アルティカ支部になんら思い入れのない彼女は、この病室の違和感を一目で見抜いていた。
ゴズメルがいない。いや、それよりも。
「……シラヌイ、そこをどいて」
「ああリリィ、なんという……なんということだ……」
「どきなさい!」
マリアはシラヌイを押しのけて、ベッドにたぐまった上掛けを床へ払いのけた。
ベッドから丸い水晶玉が転がり落ち、フッとリリィの姿が消えた。
床に落ちた上掛けの中から「ウグッ」と低くかすれたうめきが漏れた。
「なっ……」
シラヌイは後ずさった。
リリィの死を偽装する3D映像が、水晶玉から投影されていただけだ。
マリアは容赦なく上掛けを蹴り上げた。
「ぐぉっ!」
それを投影していたのは。
「ジーニョ老人……まったく良い腕ね。こんなへき地に捨て置くのが勿体ないほどの才能だわ」
上掛けの中から姿をあらわしたジーニョは頭を踏みつけられていた。
マリアはハイヒールでぐりぐりとジーニョの後頭部を踏みにじった。
「シャインの身分に敬意を表して聞いてあげるわ。どうしてこんな馬鹿なことを?」
「…………」
「ふふ。聞こえない」
「愛の……ためだ……っ」
その返事に、マリアの顔から微笑みが消えうせた。
「気持ち悪い」
その声の冷たさにジーニョは震えあがった。
「よくわかったわ。あなたは新天地にふさわしくない。今ここで、消し炭にしてあげる」
窓を背にしたマリアの瞳孔は、蛇と同じ、縦長だった。
◇◇◇
ゴズメルはリリィを抱いたまま施療院を抜け出し、屋根から屋根へ走っていた。
腕の中のリリィが小さくつぶやく。
「ジーニョおじさまは大丈夫かしら……」
「さてね」
マリアが暴挙に出たとして、近くにはシラヌイがいる。まさか見て見ぬふりはしないだろうが・・・。
「でも、じいさんは覚悟を決めてリリィを助けに来たんだ。その気持ちを無駄にしちゃいけないよ」
ゴズメルは病室で目を覚ました時のことを思い出した。
腕の中にはリリィがいた。頬はばら色で、すぅすぅと健やかな寝息を立てている。
(よかった。戻ってこられたんだ)
夢の中でしたのと同じように、ゴズメルはリリィの唇に唇を重ねた。
ん、と喉の奥でうめいて、リリィが目蓋をうっすらと開ける。翡翠色の輝きに、ゴズメルの胸は高鳴った。
まるで宝箱の中の宝石みたいに、綺麗だ。
リリィは魔力を放出しきって、まだ意識がはっきりしていないらしい。
とろんとした目で、反射のように唇を吸いかえしてきた。
「ん、ふ……」
「リリィ……」
ふっくらとした胸が上下している。リリィが息をしている。ゴズメルはそれだけのことが奇跡のように思えた。
覆いかぶさって、手に手を重ね、血の通う喉を吸う。
「はぁ……っ、あ、そこ、だめぇ……」
制服の襟で隠れない箇所だ。ゴズメルはかまわず吸血鬼のように噛んで吸った。
夢の中だけでなく、現実でもリリィを自分のものにしたい。
「はぁん……」
リリィの胸が大きくふくらむ。
頭を起こしたリリィは、そっと角に唇をくれた。ゴズメルの頭蓋から背骨、骨盤までもが、じんじんと痺れる。
「ね、だめよ……ここ、どこなの……? わたし、いったい……」
「だめじゃない……もうちょっと、もうちょっとだけ、いいだろ……?」
「あぁっ」
ぺろっと喉をひと舐めする。
リリィに状況を説明しなければならないのだが、頭がのぼせてしまっている。
「リリィ、好き……好きだよ……今すぐあんたが欲しい……」
「あ、ゴズメル、そ、そんな……っ」
「もうどこにも行かないように食っちまいたいよ……」
寝起きの物騒な思考と唾液がもう止まらない。
喘ぐことしかできないリリィの口に自分の唾液を舌で押し込み、膝でがっちりとリリィの腰を押さえつける。
その時、もしも窓から落ちる奇妙な影に気がつかなかったら、ゴズメルはそのままリリィを抱き潰していたことだろう。
パチパチと瞬いたゴズメルは顔を上げて「うわぁっ」と声を漏らした。
ジーニョだ。
まるで蜘蛛みたいに、ジーニョが窓にべったり張り付いている。そのうえ、目が合うと開けろと言わんばかりにバシバシ窓ガラスをたたき始めた。病室の外にはマリアやシラヌイがいるというのに!
ジーニョの存在に気づいたリリィはかぁっと頬を赤らめている。
「な、なに? いったいなんなの?」
「話は後だ。ドアの外に、あんたを狙ってるやつがいるんだよ」
「えぇっ」
ゴズメルが窓を開けると、ジーニョはヨタヨタと中に入ってきた。ゴズメルは呆れたように言った。
「驚いたな、あんたにデバガメの趣味があったなんて」
「抜かせ! 監視カメラに妙なものが映っていれば、様子を見に来ざるを得んだろう」
「えっ?」
「まったく、バカ面で船の中を歩き回りやがって」
ゴズメルはハッとした。天中之壺の中に入ったゴズメルを、ジーニョはモニターで観測していたのだ。
そしてリリィの本体の異常にも気がつき鐵刑の塔から駆けつけた、ということらしい。
「フン。駆けつけたとこで中には入れんし、なぜかお嬢さんのバイタルは安定しとるし、まったく……」
「おじさま……何が起こっているのですか」
困惑した声をあげるリリィに、ジーニョは……おそらく偏屈な彼が久しぶりに見せる笑顔なのだろう。犬がくしゃみしたような顔をしてみせた。
「なに、心配せんでよろしい。行き違いがあってね、お嬢さんは良くないことに巻き込まれてしまったのだ」
「そんな……」
「大丈夫だ。俺が来たからにはなんとかしよう。だが、ほとぼりが冷めるまでは身を隠したほうがいい。さ、そこのバカミノタウロスを使って、窓からお逃げなさい」
やれやれ、乗り物扱いだ。だがゴズメルは文句を言っている場合ではないことはわかっていた。
「行くよ、リリィ」
「でも……」
「ジーニョじいさんには何か考えがあんのさ。今はそれに乗るしかないね」
「その通りだ。後のことは任せておきなさい」
虚勢を張っているようには見えない。ということは勝算があるのだろう。
まずリリィを屋根に上らせ、次にゴズメルが窓枠に上がる。その背中に、ジーニョは「オイ」と、四角い包みを押し付けてきた。綺麗に包装された紙箱だ。
「偽卵の試作品だ」とジーニョは言った。
「え!」
「時間が足りなくて、一個しか作れなかった……あまり出来は期待するな」
「そんな、一個あれば十分だよ! おやっさん、ありがとう……!」
「礼はいい。それよりお嬢さんの体調に気をつけるんだ。あの子は……」
廊下からシラヌイとマリアの話し声が聞こえてきた。
ジーニョは舌打ちして、「早く行くんだ!」と、ゴズメルの巨尻に体当たりした。
ゴズメルは危うく地面にキスするところだった。
だが、ピシャッと窓が閉められてしまうと、もう文句も言えない。
「ゴズメル……」
屋根の上で、リリィの緑色の長い髪が、風になびいていた。わけもわからないまま急き立てられては不安で仕方ないだろう。ゴズメルは元気づけるように、リリィに向かって腕を広げた。
「さ、あたしに掴まんな、リリィ。……飛ばすよ」
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