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急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編
65.フラグ
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「……リリィ、こいつは上から二番目の兄貴だよ」
ゴズメルは、なるべく綺麗な標準語を使ってリリィに次兄を紹介した。
「名前はサゴンだ。いま負かしたから、あたしの言うことには従う。怖がらなくて大丈夫だ」
「あぁ……ええと……リリィと申します。よろしくね、サゴンお兄さま」
「んっ」
片手を差し出したリリィに、サゴンは後ずさった。
ゴズメルは舌打ちした。
「なんだい。ミノタウロス族は握手も知らないみたいに思われるじゃないか」
「……ゴズメル、その……どこを持てばよか?」
「はぁ?」
サゴンは、小柄でほっそりとしたリリィを精巧なビスクドールのように思うらしい。壊してしまうのではないかと、ビクビクしているのだった。
ゴズメルは里を出たばかりの頃を思い出した。
堅牢な岩穴暮らしに慣れていたから、力加減がわからなくて苦労したのだ。
「……指を出して、握ってもらえば」
「おお……おおお……」
人差し指をリリィの手に包まれて、サゴンは背筋を震わせた。
「なんちゅう柔らかさ。淡雪のごたる」
勢いづいたサゴンは、ゴズメルが止める間もなくリリィの両肩を掴んだ。背中は、脇はどうなっているのかと、フィギュアの構造を確かめるかのようにジロジロと眺めまわしている。
「おいっ、いい加減にしろ!」
しまいにはスカートの中を覗こうとする兄を、ゴズメルは蹴飛ばしてやめさせた。リリィは驚いて声も出ない様子だ。
サゴンは尻もちをついて言い返した。
「何しよん」
「何しよんはこっちのセリフちゃ! ……いいか、この子はあたしの彼女なんだ! 変なことしたら承知しないぞ」
「か、かのじょォ……?」
サゴンは、でんと立つゴズメルを見上げ、次いで頬を赤らめているリリィに視線を移した。
サゴンは青ざめて言った。
「へ、ヘンタイ……!」
「んだと、ふざけんなっ、どっちが変態だよ!」
「ヘンタイはヘンタイちゃ!こげにこまい……角も生えとらん相手を、て、手篭めに……」
「んがっ」
男女ともに体格の良いミノタウロス族からすると、妖精族のリリィは幼く見えすぎるようだ。
ゴズメルはよっぽど殴り飛ばしてやりたかったが、リリィを怖がらせまいと耐えた。
「うるさいな、あたしに負けたやつがゴチャゴチャ言うんじゃないよ。……とにかく、事情があってしばらくこっちにいるけど、すぐ出てくから。親父には黙っといて」
「おん……」
サゴンは何か言いたげだったが、掟に背くつもりはないようだった。
「寝床とメシは? どーするちゃ」
「……友達の世話になるよ」
「オズヌんちか」
そこまで教える義理はない。プイと横を向くゴズメルに、サゴンは肩をすくめた。
「落ち着いたらウチまで一回来ちゃり。母ちゃの墓参りもあるき」
ゴズメルは「雑魚が指図すんな」と吐き捨てた。
視線を反らさずににらみ続けるのは、『行け』という意味だ。
サゴンは苛立ったように糸目をぐにゃつかせたが、敗者らしく強者に従った。
背中が見えなくなったとたんに脚から力が抜ける。
リリィがさっと腕を伸ばしてくれなければ、気が抜けたまま倒れていたことだろう。
ゴズメルは踏みとどまって、リリィに抱き着いた。
「ごめんよ。怖かっただろ」
「……少し、驚いただけよ」
リリィに背中をさすられて、ゴズメルは自分のほうこそ怖かったのだと気がついた。サゴンに勝てたのは運がよかっただけだ。この体調では、リリィを守ることもおぼつかない。
「ミノタウロス族にも、話のわかるやつはいるんだ。そいつなら信頼できるし、大丈夫だから」
「……私は、あなたのお兄さんも信頼できる方だと思ったけれど」
「何言ってんだ。サゴンはバカだし、想像力ってものがないんだ。あいつ、あんたに触ろうってのに、一言も許可をとらなかっただろう。あんたのことちっちゃな人形だと思ってんだよ……」
子どもの頃のゴズメルも人形のように扱われていたふしがある。
それも、リリィのように繊細な取り扱いを必要としない、布と綿でできたぬいぐるみだ。放り投げたり締め上げたりしてもかまわないと思われていた。
「これでよくわかっただろ。ミノタウロス族は、力が強くて傲慢なんだ。……ハハ。あたしにも、きっとそういうところがあるんだろうね。古巣がこんなんで、あんたに申し訳ないよ」
「ゴズメル、そんなふうに思わないで」
震えるゴズメルの手を、リリィは力を込めて握った。
「あなたの家族がどんなひとたちでも、私が好きなのはあなたなのだもの」
どうしてこんなに小さくて非力な手に安心してしまうのだろう?
ゴズメルは自分でも不思議だった。
「うん……」
ズッ、と洟を啜って、ゴズメルはうなずいた。
「行こうか。……今から会いに行く友達は、オズヌってんだけどさ、デカブツのサゴンを見た後だから、あんたはきっと驚くだろうね。本当にミノタウロス族なのかって思うくらいチビで、可愛いんだ。そいつ」
ゴズメルは、なるべく綺麗な標準語を使ってリリィに次兄を紹介した。
「名前はサゴンだ。いま負かしたから、あたしの言うことには従う。怖がらなくて大丈夫だ」
「あぁ……ええと……リリィと申します。よろしくね、サゴンお兄さま」
「んっ」
片手を差し出したリリィに、サゴンは後ずさった。
ゴズメルは舌打ちした。
「なんだい。ミノタウロス族は握手も知らないみたいに思われるじゃないか」
「……ゴズメル、その……どこを持てばよか?」
「はぁ?」
サゴンは、小柄でほっそりとしたリリィを精巧なビスクドールのように思うらしい。壊してしまうのではないかと、ビクビクしているのだった。
ゴズメルは里を出たばかりの頃を思い出した。
堅牢な岩穴暮らしに慣れていたから、力加減がわからなくて苦労したのだ。
「……指を出して、握ってもらえば」
「おお……おおお……」
人差し指をリリィの手に包まれて、サゴンは背筋を震わせた。
「なんちゅう柔らかさ。淡雪のごたる」
勢いづいたサゴンは、ゴズメルが止める間もなくリリィの両肩を掴んだ。背中は、脇はどうなっているのかと、フィギュアの構造を確かめるかのようにジロジロと眺めまわしている。
「おいっ、いい加減にしろ!」
しまいにはスカートの中を覗こうとする兄を、ゴズメルは蹴飛ばしてやめさせた。リリィは驚いて声も出ない様子だ。
サゴンは尻もちをついて言い返した。
「何しよん」
「何しよんはこっちのセリフちゃ! ……いいか、この子はあたしの彼女なんだ! 変なことしたら承知しないぞ」
「か、かのじょォ……?」
サゴンは、でんと立つゴズメルを見上げ、次いで頬を赤らめているリリィに視線を移した。
サゴンは青ざめて言った。
「へ、ヘンタイ……!」
「んだと、ふざけんなっ、どっちが変態だよ!」
「ヘンタイはヘンタイちゃ!こげにこまい……角も生えとらん相手を、て、手篭めに……」
「んがっ」
男女ともに体格の良いミノタウロス族からすると、妖精族のリリィは幼く見えすぎるようだ。
ゴズメルはよっぽど殴り飛ばしてやりたかったが、リリィを怖がらせまいと耐えた。
「うるさいな、あたしに負けたやつがゴチャゴチャ言うんじゃないよ。……とにかく、事情があってしばらくこっちにいるけど、すぐ出てくから。親父には黙っといて」
「おん……」
サゴンは何か言いたげだったが、掟に背くつもりはないようだった。
「寝床とメシは? どーするちゃ」
「……友達の世話になるよ」
「オズヌんちか」
そこまで教える義理はない。プイと横を向くゴズメルに、サゴンは肩をすくめた。
「落ち着いたらウチまで一回来ちゃり。母ちゃの墓参りもあるき」
ゴズメルは「雑魚が指図すんな」と吐き捨てた。
視線を反らさずににらみ続けるのは、『行け』という意味だ。
サゴンは苛立ったように糸目をぐにゃつかせたが、敗者らしく強者に従った。
背中が見えなくなったとたんに脚から力が抜ける。
リリィがさっと腕を伸ばしてくれなければ、気が抜けたまま倒れていたことだろう。
ゴズメルは踏みとどまって、リリィに抱き着いた。
「ごめんよ。怖かっただろ」
「……少し、驚いただけよ」
リリィに背中をさすられて、ゴズメルは自分のほうこそ怖かったのだと気がついた。サゴンに勝てたのは運がよかっただけだ。この体調では、リリィを守ることもおぼつかない。
「ミノタウロス族にも、話のわかるやつはいるんだ。そいつなら信頼できるし、大丈夫だから」
「……私は、あなたのお兄さんも信頼できる方だと思ったけれど」
「何言ってんだ。サゴンはバカだし、想像力ってものがないんだ。あいつ、あんたに触ろうってのに、一言も許可をとらなかっただろう。あんたのことちっちゃな人形だと思ってんだよ……」
子どもの頃のゴズメルも人形のように扱われていたふしがある。
それも、リリィのように繊細な取り扱いを必要としない、布と綿でできたぬいぐるみだ。放り投げたり締め上げたりしてもかまわないと思われていた。
「これでよくわかっただろ。ミノタウロス族は、力が強くて傲慢なんだ。……ハハ。あたしにも、きっとそういうところがあるんだろうね。古巣がこんなんで、あんたに申し訳ないよ」
「ゴズメル、そんなふうに思わないで」
震えるゴズメルの手を、リリィは力を込めて握った。
「あなたの家族がどんなひとたちでも、私が好きなのはあなたなのだもの」
どうしてこんなに小さくて非力な手に安心してしまうのだろう?
ゴズメルは自分でも不思議だった。
「うん……」
ズッ、と洟を啜って、ゴズメルはうなずいた。
「行こうか。……今から会いに行く友達は、オズヌってんだけどさ、デカブツのサゴンを見た後だから、あんたはきっと驚くだろうね。本当にミノタウロス族なのかって思うくらいチビで、可愛いんだ。そいつ」
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