【ふたなり百合】月イチ生える牛型巨女が魅了バフ持ち受付ヒーラーと協力してレベルアップ素材(童貞喪失精子)ゲットする【ゲーム系異世界】

春Q

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35.最高で最優で、最弱☆

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 まっさきに動いたのはリリィだった。

 ローブの懐から出したボールを宙へ投げる。

 カトーの視線が上を向く。大剣が閃くのは一瞬だった。

 剣先がボールに触れたとたん、ボールが煙を吹く。

「煙玉?」

 吹きあがる煙は室内を満たした。カトーは即座に視界を熱源知覚に切り替えたが、妨害を受ける。

「……はぁ。ジーニョの入れ知恵かぁ?」

「カトー! 早く捕まえないと」

 大騒ぎするリーに彼は答えなかった。剣を構えなおし、虚空に向かって振り下ろす。

 室内にこもった煙は、剣圧に弾かれて霧消する。リーがヒステリックな叫び声をあげる。

「ゴズメルⅡを取られた!」

 すでにゴズメルとリリィの姿はそこにない。カトーは嘆息した。

「……ま、落ち着けって」

 床にはゴズメルⅡの血の痕がべっとりと残っている。引きずった跡も、だ。

◇◆◇

「ヤバいヤバいヤバい」

 そのへんから借りてきた台車にゴズメルⅡを載せて、ゴズメルは爆走していた。なにがやばいって、胸と股の裂け目から服がどんどん脱げてきているところだ。

「うぇえええ、血に濡れた服がキモチワルイ!」

 服の切れ端を脱ぎ落としながら走るゴズメルに、リリィは肩車されていた。巻物を使ってジーニョと連絡を取ろうとしているが、うっかりすると振り落とされてしまいそうだ。やっとのことで巻物を開き、リリィは叫んだ。

「おじさま! 角を手に入れましたわ!」

『でかした、おまえたち!』

「ここから……っ、アジリニの元へ送っていただくことはできませんのっ?」

『無理だ、神殿から神殿への移動にしか対応してない! なんとか自力で戻ってくれ!』

「でもカトーが・・・!」

「リリー、口閉じてな!!」

 ゴズメルがカトーの強襲を察知したのは、足元の影が膨らむのを見たからだった。

 飛び掛かられた刹那、ギュンと後ろ足に力を込めてスピードを上げ、持ち手で前回りして台車に乗り上げる。直撃は避けられたけれど、それは二人の寿命が数秒延びた程度の意味しか持たなかった。

 縦に伸びる斬撃。

 床は剣筋に従って陥没し、周囲に鋭いバリを生む。

 大きく波打つ接地面に耐え切れず、台車は横倒しになって壁に激突した。

 カトーは吹き飛んだ巻物を踏みつけ、そこに映るジーニョを見下ろした。

「ずいぶん楽しそうだな、おじいちゃん」

『カトー、貴様・・・!』

「ミノタウロス族の生き残りと一緒か。そいつら連れて早く戻って来いよ」

 カトーは巻物をグリグリと踏みにじった。ジーニョの周りに集まったミノタウロス族は、画面の中に仇の姿を認めて、カトーを罵った。・・・種族語をとられているため、限られた語彙ではあったが。

『なんて悪い心の持ち主!』

『あなたの親の顔を見てみたいものです!』

『自分に責められるところがないか、胸に手を当てて考えなさい!』

「フーン」

 カトーは腰を屈めて、まじまじとミノタウロスたちを観察した。

 迷路の中でおろおろしていた同族と比較して、自主性が育っているように見える。

「違和感もあるが、だいぶ言葉を使えるようだな。じいさんが調教したのか?」

『……それほどおまえを憎んでいるということだ。カトー』

 ジーニョは落ちくぼんだ眼で、ギロリとカトーを睨みつけた。

『長を殺され、住処を追われ、言葉までも奪われた! おまえがノァズァークのプレイヤーにしてきたことは、決して許されることではない!』

「はは、たかがゲームに何を」

『彼らにとってはゲームなどではない! たとえ一時のアバターだとしても、死ねば二度と生き返ることなどないんだ! なぜそれがわからない』

「……バカだな、ジーニョ。ゲームに決まってんだろ」

 カトーは巻物を蹴り上げた。会話の隙に、ゴズメルとリリィはその場を逃れようとしている。

 その背中に的を定め、大剣を振り下ろした。

「俺たちは現実の八十億人を見殺しにして、この船に乗ってんだ。夢の中でどんな死に方をしたところで、文句を言える立場じゃねーんだよ」

 凄まじい爆発だった。

 ゴズメルはとっさにリリィとゴズメルⅡを庇う。

 裸のゴズメル二人に挟まれて、リリィがきゅうと喉を鳴らす。ゴズメルは小さな耳にそっと囁いた。

「……リリィ、あの台車はまだ使える」

「ゴズメル?」

「あたしが時間を稼ぐから、あんたはアジリニのところへ行って」

「だめよ、そんなことできない……!」

「リリィ、いい子だから」

 なだめるようにキスするゴズメルの背中は、真っ赤に焼け爛れていた。焦げた廊下に、カトーの靴音がゆっくりと響いている。獲物をいたぶる距離の詰め方だ。あまりの勝ち目のなさに、ゴズメルは笑ってしまう。

「……あんたが急いでやり遂げてくれれば、またすぐに会えるよ。全部元通りだ。ね、リリィ」

「嫌ったら嫌、あなたはまた自分を犠牲にしようとしてるんだわ……!」

「犠牲になるかはまだわからない。あんたの頑張り次第で……」

「嫌よ!」

 リリィの、涙でびしょびしょの顔に、ゴズメルは問答無用でキスした。

 ゴズメルⅡを蹴って台車に乗せ、その上にリリィを立たせようとする。

「最後まで守ってあげられなくて、ごめんよ。リリィ……」

 濡れて光るエメラルドの瞳に、瞼が下りる。リリィが力を抜いたのはその一瞬だけだった。

 二人の間にバチンと乾いた音が響いた。

「嫌だって言っているでしょう! 私を放しなさい、ゴズメル!」

「ふぇっ?」

 思ってもみない展開にゴズメルは目をシロクロさせた。ビンタくらいではびくともしない。リリィは怒った猫みたいに頭突きを繰り出した。

「いいからそこで休んでなさい! あなたがそういう態度なら、私にだって考えがあるのよ!」

「リ、リリィ!」

 ゴズメルの呼びかけは無視された。

 リリィは目じりをキリッと釣り上げると、細い両肩をふくらませ、猛然とカトーの前に立ちはだかった。

「私が相手になるわ! この乱暴者!」

「……ご挨拶だな、クソ妖精。別れの挨拶は済んだってわけか」

「誰が別れの挨拶なんてするものですか」

 リリィは腕で涙をぬぐうと、服の中に手を突っ込んだ。

「リリィ! だめだっ」

 カトーはすでに大剣を構えている。

 リリィがジーニョからどんな秘密兵器を託されていたとしても、間に合わない。だが、ゴズメルは見た。リリィの手には魔道具のアミュレットが握られていて、彼女の背中には巨大な翅が出現していた。

 カトーは大剣を振り上げた格好のまま固まっている。

 ピンクの鱗粉が、花吹雪のように舞い上がる。リリィは仁王立ちして言った。

「ジーニョおじさまが言っていたわ。あなたは恋愛ごとに興味がないのですってね」

「……へっ」

 驚くことに、カトーは小さなリリィを前に震えていた。

「ジーニョが惚れっぽいだけだ……。俺は、特定の相手を作るのが、面倒なだけだっつーの……」

「可愛らしいこと」

「……ッ」

 リリィは人馴れした猫のように、カトーのわきをスルリと通り過ぎた。

 水と光の翅がカトーの全身を擦り抜ける。

「んっ、んがぁっ!?」

 カトーの顔が真っ赤になった。

 大剣を床に穿ち、必死に体勢を保とうとしているが、彼の膝は笑っている。

「……私はね、このいやらしい翅を切り落としてしまいたいと思ったこともあるのよ」

 リリィの流し目はどんな攻撃よりもカトーの股間に効いた。

 全身を震わせるカトーは、口から涎さえ垂らしていた。目を血走らせて、ひたすらにリリィだけを見つめている。雄としての本能に彼はあらがえないのだった。

「ねえ、私のことが好き? 私が欲しいでしょう? 恥ずかしがることはないわ。自然なことよ……」

 リリィは後ろ手を組んで、上目遣いしてみせた。

「子供の頃からこの翅で、多くのひとを狂わせてきた。恥ずかしくて恥ずかしくて、消えてしまいたかったわ。今、好きでもないあなたにこんなふうに翅の力を使っているのも、悪い夢みたいな気がする……」

「は……っ、じゃあ、この翅、とっとと引っ込めてくんねえかな……ッ!」

「跪きなさい」

「ぐっ!」

 鱗粉を吸い込んだカトーは、それでもリリィの命令に逆らおうとした。

 剣にすがりながら汗に濡れた頭を振る。

「無駄よ」

 リリィは冷然と言い放った。

「あなたはもう私から目を離せない。本当は今すぐ私を押し倒して、昂った男根をねじこみたいと思っているのでしょう? 悦がり泣かせたいでしょう? 『あんっ、あんっ、お願いしますっ、カトーさまのおちんぽで、リリィのおまんこを犯してくださいっ』って……でも、嫌われちゃうんじゃないかと思うと、怖くてできないのよね? かわいそう」

 リリィの人差し指が、カトーの胸板でクリクリとのの字を描く。

「この……変態女がッ……!」

「跪け」

「あああっ」

 鱗粉に侵されたカトーは、がくがくと震えながらリリィに跪いた。本来マゾ気質であるリリィの見事な反転ぶりに、ゴズメルは青ざめていた。リリィは女王のようにカトーの頭を踏みつけにしている。

「気持ちいい? 気持ちいいのでしょう。カトー、あなたはこんなにひ弱な私に頭を踏みつけにされて、股間を勃起させているんだもの。本当は最強の座に飽き飽きしているんじゃない?」

「あ、が、あぁっ」

「いいのよ。あなたがいじめられて悦ぶヘンタイでも、私は許してあげます。きっとあなたは寂しがり屋なのでしょうね。勇者ぶってイキりたおしていれば、少なくとも独りぼっちにはならずに済むもの。ああなんてかわいそうな、マゾ豚」

「オッ……」

 汚い声で喘ぐカトーの腰が、ひときわ大きく跳ねる。

 男性の射精するさまを目の当たりにして、リリィは思わず足をひっこめた。

「……さあ。もう自分の立場は理解できたでしょう。私たちの邪魔をしないで。さもないと」

「おいおい。冷たいこと言うなよ、リリィちゃん」

「!?」

 カトーはリリィの脚をつかんでいた。

「あ、あなたっ、催淫が――」

「マリアに同じ手を使ったのは失敗だったな。俺が警戒しないわけないだろ」

 カトーの腿にはナイフが深々と刺さっていた。ゴズメルは息を呑む。

 跪けと命令された時に違いない。

 カトーは鱗粉の効果が出る前に、自分で自分を傷つけて正気を保っていたのだ。

「ふー……スッキリしたぁ……」

 立ち上がった彼の股はぐっしょり濡れていた。

「まだ胸がドキドキしてるぜ。すげえな、催淫バフってのは……」

 小柄なリリィはウサギのように足を掴まれ、宙づりにされていた。

「っ、リリィ!」

 ゴズメルはとっさにカトーの背中に打ちかかったが、弱い攻撃は片手で制されてしまう。

「ははっ、両手に花ってカンジ? 諦め悪いなー、おまえら。わかったわかった、そんなに仲がいいなら」

 必死に暴れる女二人を手玉にとって、カトーはへらへら笑っていた。

 ぱっとゴズメルから手を離し、剣を取る。

「まとめてあの世に送ってやるからさ!」

 ゴズメルは、せめてリリィを抱きしめてあげたいと思った。こんなに小さなリリィが、綺麗な翅をさらけだして戦おうとしたのだ。悪いのは、力不足のゴズメルだ。リリィが泣くことはない。

 もう、二人にはそんな時間も与えられていないのだとしても。

 伸ばした手が、あと少しで届く。届いた。

 抱き合った次の瞬間、ヴン、と奇妙な音がゴズメルの耳に届いた。

 死が近いからだろうか。目に映るすべてがコマ送りに見える。

(なん、だ、あれ……影……?)

 みるみるうちに距離を詰めてきた黒い影は、カトーを狙った。

 回し蹴りを大剣で防がれると、飛び上がって両足の踵を顔面に叩きつける。

「怪物の、息子か!」

 現れたのはサゴンだった。への字の口は堅く引き結んだまま、カトーに殴り掛かる。

「なんも考えてねーってツラだな。はは……反射で俺を殺そうとするとは、面白え、ミノタウロスってのは、バカなほど強いのかもしんねー、なッ!」

 意味をなさない雄たけびを上げるサゴンに、カトーが剣を両手で構える。

 ゴズメルはリリィを抱きとめた。小脇にゴズメルⅡをかかえて走り出す。

「ゴズメル、サゴン、サゴンだわ! あなたのお兄さんの!」

 リリィの明るい声に、ゴズメルは答えることができなかった。

 迷路から飛び出したサゴンを追って、マリアが来ていたからだ。

 二人の視線は確かに交錯したが、ゴズメルは立ち止まらなかった。

「バイバイ!」

 その一言だけをくれてやり、全速力でマリアの脇を駆け抜ける。言葉にできない感情をなにもかも振り捨てて、ゴズメルはアジリニを目指した。一糸まとわぬ、生まれたままの姿で。
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