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第1章 アニマル☆サーカス
第1話 ミントの街
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「魔法に一番大切なものって、何だと思う?」
「ごめんなさい、分かりません……」
「それはね、お願いの力! こうだったらいいな、こうしたいなっていう想いが、魔法を作っているんだ!」
ピンクの髪の、十才ぐらいの女の子がステッキを振るう。
すると、ポン! と音を立ててわたし達の目の前――芝生の上に、フィーよりも少し年下の知らない女の子が現れる。
「あ、あれ? どこここ~?」
ぱちぱちと瞬きをして辺りを見つめるのは、黒髪でロングヘアーの女の子。それを見てピンクの魔法使いの女の子は満足そうににっこりと微笑んで――。
「それじゃあ、うさぎさんもやってみて! あの子がおいしいおかしになるところをイメージしてみるの」
そしてわたしにステッキを手渡した。全身の毛――わたしを包む真っ白な毛が、拒絶して逆立つ。
嫌だ。魔法なんて使いたくない、嫌だ、嫌だ!
「はい……」
だけど、逆らえない。わたしは恐る恐る手渡されたステッキ――ピンクと白の縞模様の短いステッキを、手に取って……。
「えいっ……」
座り込んで狼狽える女の子に向かって、振りかざした。
「――!」
だけど女の子に変化は起こらない。きょとんとして、わたしを見つめていて……。
「ど、どうぶつおばけ! きゃ~っ!」
それからくるっと振り返って、叫びながら芝生の上を全力で走っていく。
「大丈夫、大丈夫。見てて!」
魔法使いはわたしが、魔法が成功しなくてがっくりしていると思ったみたいで。ぱちっとこっちにウインクをしてから、ステッキを使わないで。
「それっ!」
と、声を出して女の子に向かって指を振った。
「きゃっ!」
すると再び、ぽんっ! と音が鳴って、その女の子が煙に包まれて。
思わずわたしは目を逸らす。分かってる、何が起こってるか、嫌だ、見たくない!
「えへへ、おいしそ~!」
煙が去った後、女の子はもうそこにはいなくて。
明るく笑いながら、魔法使いの子が拾い上げたのは、紙でできた四角い箱。
そして中に入っているのは……チョコレート。大きな丸に星形に煙突に、色んな形のチョコレート。
女の子を、魔法で変えて作ったチョコレート……。
そんな、人間がお菓子になっちゃうなんて、そんなこと有る訳ない!
だけど本当だ、今更もう嘘だって言えない、これは本当なんだ、現実なんだ、夢じゃない……。
「? どうしたの? うさぎさん?」
「い、いえ、何でもないですっ!」
俯いていたらじっと魔法使いに顔を覗かれて。深い青色の瞳は、どこまでも純粋そうに輝いていて。
「最初はみんな上手くいかないんだから、全然気にしなくていいんだよ!」
「そ、そうですね……」
どう答えたら良いか、分からない。
本当はすぐにでも逃げたい、泣きたい、でも、そんなことをしたらきっと、わたしも、お菓子にされちゃうんだ……。
「それじゃ、今日の練習はここまでにしよっか! うさぎさん、おやつの時間はちょっと過ぎちゃったけど、チョコレートでも食べて元気出して!」
そう言って魔法使いはチョコレートの箱を大きく開いて、わたしに見せてくる。
「ご、ごめんなさい! その、今、お腹が、空いていなくて……ごめんなさい」
首を横に振って、言い訳をする。駄目だ、後戻りができなくなる、それだけは駄目だ……!
「そっかあ。それじゃ、食べたくなったらいつでも教えてね!」
だけど魔法使いはそれで納得してくれたみたいで、ちょこんとベンチに座って、意気揚々と星形のチョコレートを一つつまんで、ぱくっと口に入れて……。
「~! 甘くておいしい!」
とっても嬉しそうな顔をして、ほっぺたを押さえる。
「やっぱり、お菓子はとってもおいしいな~! ふわふわしてて、ちょっとミルクの味がして!」
にっこりと、嬉しそうに笑う魔法使い。どこまでも純粋な、笑顔。
いつまで、続くんだろう、こんなの……。
泣きそうになりながら、魔法使いの隣にそっと腰を下ろした。
わずかにオレンジ色になり始めた日差しに照らされる公園、伸びる影。
丸い形の広場を囲むのは、カラフルなレンガで作られた、おもちゃ箱みたいなかわいらしい外見の家。
地面に敷き詰められたタイルに描かれた葉っぱの模様からは、緑に輝いている小さな粒が立ち上って、ミントの良い香りを漂わせている。
街を歩く人達の服装は様々で、ひらひらとしたフリルの沢山付いた豪華なドレスだったり、反対に手足に頑丈そうな鎧を付けていたり。学校の制服の様な格好の人もいるけれど、おへそを出していたり胸元がはだけていたりする。時々見かける箒に乗って空を飛んでいる人は、動きやすそうな軽装をしていた。
とにかく一つだけ言えることは、わたしが元居た世界では普通見られない様な服装を、この世界の人はしているということだ。
それこそ、ファンタジー世界の様な……。
それと同じで、わたしの隣に座っている魔法使いの女の子は、黒のローブと三角帽子という服を着ている。履いている靴も黒色だ。
ショーの時にはもっと派手なピンク色の、細かい模様も付いた見栄えのする服を女の子は着ている。
けれど、移動中はこんな風に、抑えた格好が普通だ。街中でもショーの時と同じ様な格好をしていると、ファンの人達に囲まれちゃって大変だから、らしい。
その女の子の身長は、大体わたしの胸元辺りの高さ。わたしの身長が160cmだから、女の子は大体135cmぐらい。体格も華奢で、まるで人形みたい。
青の瞳を持ったぱっちりとした大きな目。
エルフの様に、普通よりも長く先の尖った耳。
ピンク色のセミロングで、結わいてはいない、外跳ね気味の、くせっ毛の髪。
その女の子の外見は、十才ぐらいに見える。とにかく、わたしよりも年下なのは間違いない。
口元からはぴょこっと、小さな八重歯がこぼれていて。
幼い顔立ちをした女の子……魔法使いの、フィー。
――ここは、フローラルウィンドタウンの、とある広場。
そしてこの街が有る場所は、『魔法の世界』……。
「ごめんなさい、分かりません……」
「それはね、お願いの力! こうだったらいいな、こうしたいなっていう想いが、魔法を作っているんだ!」
ピンクの髪の、十才ぐらいの女の子がステッキを振るう。
すると、ポン! と音を立ててわたし達の目の前――芝生の上に、フィーよりも少し年下の知らない女の子が現れる。
「あ、あれ? どこここ~?」
ぱちぱちと瞬きをして辺りを見つめるのは、黒髪でロングヘアーの女の子。それを見てピンクの魔法使いの女の子は満足そうににっこりと微笑んで――。
「それじゃあ、うさぎさんもやってみて! あの子がおいしいおかしになるところをイメージしてみるの」
そしてわたしにステッキを手渡した。全身の毛――わたしを包む真っ白な毛が、拒絶して逆立つ。
嫌だ。魔法なんて使いたくない、嫌だ、嫌だ!
「はい……」
だけど、逆らえない。わたしは恐る恐る手渡されたステッキ――ピンクと白の縞模様の短いステッキを、手に取って……。
「えいっ……」
座り込んで狼狽える女の子に向かって、振りかざした。
「――!」
だけど女の子に変化は起こらない。きょとんとして、わたしを見つめていて……。
「ど、どうぶつおばけ! きゃ~っ!」
それからくるっと振り返って、叫びながら芝生の上を全力で走っていく。
「大丈夫、大丈夫。見てて!」
魔法使いはわたしが、魔法が成功しなくてがっくりしていると思ったみたいで。ぱちっとこっちにウインクをしてから、ステッキを使わないで。
「それっ!」
と、声を出して女の子に向かって指を振った。
「きゃっ!」
すると再び、ぽんっ! と音が鳴って、その女の子が煙に包まれて。
思わずわたしは目を逸らす。分かってる、何が起こってるか、嫌だ、見たくない!
「えへへ、おいしそ~!」
煙が去った後、女の子はもうそこにはいなくて。
明るく笑いながら、魔法使いの子が拾い上げたのは、紙でできた四角い箱。
そして中に入っているのは……チョコレート。大きな丸に星形に煙突に、色んな形のチョコレート。
女の子を、魔法で変えて作ったチョコレート……。
そんな、人間がお菓子になっちゃうなんて、そんなこと有る訳ない!
だけど本当だ、今更もう嘘だって言えない、これは本当なんだ、現実なんだ、夢じゃない……。
「? どうしたの? うさぎさん?」
「い、いえ、何でもないですっ!」
俯いていたらじっと魔法使いに顔を覗かれて。深い青色の瞳は、どこまでも純粋そうに輝いていて。
「最初はみんな上手くいかないんだから、全然気にしなくていいんだよ!」
「そ、そうですね……」
どう答えたら良いか、分からない。
本当はすぐにでも逃げたい、泣きたい、でも、そんなことをしたらきっと、わたしも、お菓子にされちゃうんだ……。
「それじゃ、今日の練習はここまでにしよっか! うさぎさん、おやつの時間はちょっと過ぎちゃったけど、チョコレートでも食べて元気出して!」
そう言って魔法使いはチョコレートの箱を大きく開いて、わたしに見せてくる。
「ご、ごめんなさい! その、今、お腹が、空いていなくて……ごめんなさい」
首を横に振って、言い訳をする。駄目だ、後戻りができなくなる、それだけは駄目だ……!
「そっかあ。それじゃ、食べたくなったらいつでも教えてね!」
だけど魔法使いはそれで納得してくれたみたいで、ちょこんとベンチに座って、意気揚々と星形のチョコレートを一つつまんで、ぱくっと口に入れて……。
「~! 甘くておいしい!」
とっても嬉しそうな顔をして、ほっぺたを押さえる。
「やっぱり、お菓子はとってもおいしいな~! ふわふわしてて、ちょっとミルクの味がして!」
にっこりと、嬉しそうに笑う魔法使い。どこまでも純粋な、笑顔。
いつまで、続くんだろう、こんなの……。
泣きそうになりながら、魔法使いの隣にそっと腰を下ろした。
わずかにオレンジ色になり始めた日差しに照らされる公園、伸びる影。
丸い形の広場を囲むのは、カラフルなレンガで作られた、おもちゃ箱みたいなかわいらしい外見の家。
地面に敷き詰められたタイルに描かれた葉っぱの模様からは、緑に輝いている小さな粒が立ち上って、ミントの良い香りを漂わせている。
街を歩く人達の服装は様々で、ひらひらとしたフリルの沢山付いた豪華なドレスだったり、反対に手足に頑丈そうな鎧を付けていたり。学校の制服の様な格好の人もいるけれど、おへそを出していたり胸元がはだけていたりする。時々見かける箒に乗って空を飛んでいる人は、動きやすそうな軽装をしていた。
とにかく一つだけ言えることは、わたしが元居た世界では普通見られない様な服装を、この世界の人はしているということだ。
それこそ、ファンタジー世界の様な……。
それと同じで、わたしの隣に座っている魔法使いの女の子は、黒のローブと三角帽子という服を着ている。履いている靴も黒色だ。
ショーの時にはもっと派手なピンク色の、細かい模様も付いた見栄えのする服を女の子は着ている。
けれど、移動中はこんな風に、抑えた格好が普通だ。街中でもショーの時と同じ様な格好をしていると、ファンの人達に囲まれちゃって大変だから、らしい。
その女の子の身長は、大体わたしの胸元辺りの高さ。わたしの身長が160cmだから、女の子は大体135cmぐらい。体格も華奢で、まるで人形みたい。
青の瞳を持ったぱっちりとした大きな目。
エルフの様に、普通よりも長く先の尖った耳。
ピンク色のセミロングで、結わいてはいない、外跳ね気味の、くせっ毛の髪。
その女の子の外見は、十才ぐらいに見える。とにかく、わたしよりも年下なのは間違いない。
口元からはぴょこっと、小さな八重歯がこぼれていて。
幼い顔立ちをした女の子……魔法使いの、フィー。
――ここは、フローラルウィンドタウンの、とある広場。
そしてこの街が有る場所は、『魔法の世界』……。
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